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投資 2022.11.09

2022年のXR/メタバース企業の資金調達は急減——世界的な景気後退と連動か

11月4日、ベンチャー企業データベースであるCrunchbaseが、XR/メタバース業界における直近の投資動向について分析結果を公表しました。AR、VR等の事業に対する投資額は過去5四半期にわたって減少を続けています。年間ベースの投資額も減少し、関連企業の株価も下落する一方、1億ドル超の投資案件も複数報告されています。


(画像:Crunchbase)

XR/メタバース業界は投資家の注目分野ではない

過去5四半期のAR、VR等の事業に関連する企業の資金調達額は、2021年第4四半期に21億ドル超(約3,050億円、2022年11月9日時点。以下全て同レートを使用)を記録して以来、直近の2022年第4四半期で約7億6,000万ドル(約1,100億円)まで減少しています。2022年第3四半期の資金調達額も、同年第1四半期、第2四半期より低い金額となっています。


(「四半期毎のAR、VR等バーチャル空間関連企業の資金調達額」画像:Crunchbase)

年間ベースでも、2022年のAR、VR関連の調達資金は、2021年を大きく下回る勢いです。しかしながら、2022年は世界全体のスタートアップ等における資金調達が大きく減少しているため、「XR/メタバース業界に限って調達資金の減少トレンドが見られる」というわけではありません。しかし、投資家が注目する分野は全体のトレンドと逆行する傾向があり、この事からXR/メタバース業界は「投資家の現在の注目分野ではない」ことが推察されます。


(「年間のAR、VR等バーチャル空間関連企業の資金調達額」画像:Crunchbase)

大規模投資は今年も数件実施

一方で、投資家がXR/メタバース業界を見限ったということではありません。2022年に少なくとも、1億ドル(約145億円)以上の投資が7件実施されています。プロスポーツ選手とファンに向けたメタバースとWeb3プラットフォームの開発を行う、米国のLootMogulは2億ドル(約290億円)、ARを用いたバーコードスキャン技術を開発するスイス企業のScanditはシリーズDラウンドで1億5,000万ドル(約218億円。調達総額は、2億7,000万ドル超(約393億円超))を獲得。米カルフォルニアに拠点を置く、アバターやアバターアクセサリー、バーチャル環境の構築ツールを開発するGeniesはシリーズCラウンドで1億5,000万ドル(約218億円)、VRを用いたデジタル治療プラットフォームのスイスのMindmazeは1億500万ドル(約150億円)を調達しています。

1億ドル(約145億円)未満の投資も実施されています。医療ヘルスケア分野では、VR技術を外科手術に応用する英国のProximieと米国のOsso VRが、それぞれ8,000万ドル(約116億円)および6,600万ドル(約95億円)の資金を今年調達しました。エンターテインメント分野では、ニュージーランド企業でバーチャルヒューマンの研究開発を手がけるSoul Machinesは7,000万ドル(約100億円)、アプリ間を自在に移動するアバター開発に取り組むエストニアのスタートアップReady Player Meが、シリーズBラウンドで8月に5,600万ドル(約80億円)を獲得をしています。

株価は軒並み下落傾向か

株式市場において投資家は、メタバースや3Dコンテンツに関連する企業を評価していない状況です。Metaの株価は、1年前に社名変更した時点より3分の2以上の下落を記録しています。

3Dコンテンツ制作のプラットフォームであるUnityも、2021年ピーク時から85%も株価を下げています。同社は2022年8月にAppLovinからの200億ドル(約2兆9,000億円)の買収提案を拒否。以降、株価は下落傾向にあり、Unityの現在の評価額は90億ドル(約1兆3,000億円)弱にとどまっています。

また建築物や室内空間のデジタルツイン化を手がけるMatterportも、2021年7月の上場後にピークを迎えた株価は、現在80%以上下落、史上最安値に近づいています。

Crunchbaseによると、AR、VR関連の調達資金が最も多かった年は実は2018年とのこと。Magic Leap等の企業による大規模調達により、46億ドル(約6,690億円)超を記録していました。その後の2019年と2020年は投資総額は減少し、2021年に回復。投資額が急減している2022年を経て、今後はどのような投資トレンドが発生するのか動向に注目です。

(参考)Crunchbase


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