VRを使うと、自分と異なる立場に立って、他者の視点で物事を体験することができます。マルタ大学では、自閉症の子供たちの立場で学校生活を体験するアプリが開発されました。
自閉症の子供の立場に立って”理解”する
これまでにも自閉症の治療にVRを用いる取り組みは、社会に順応するスキルをつけるプログラムといった形でおこなわれてきました。しかし今回、マルタ大学の研究者たちが目指したのは異なるアプローチです。”教師が自閉症の生徒の日常を追体験し、理解を深める”というものです。
開発されたVRアプリを使うと、自閉症の生徒が学校で過ごす時間を体験できます。教師の声かけに反応できないことがあったり、また生徒の視点に立って見る景色は時にぼやけ、ストレスを感じたりすることもあります。
アプリの開発者の一人であるVanessa Camilleri氏は、「VRは、共感するためのツールになりうるでしょうか? 私たちが目指すのは、教師たちが子供のことを理解して、自分の行動を少し変える手助けをすること。そして子供の生活の質を高めることです」と話します。
現在アプリは一般に公開されていませんが、Gear VRを通じての公開を検討しているということです。
嗅覚や触覚など、まだVRでは再現できない自閉症の体験もあります。しかし同氏は、教師たちがアプリを使ってさまざまな自閉症の子供への対応方法を学ぶのではなく、子供たちへの理解を深めてほしいと話します。今後は親や家族に向けたバージョンの開発も進めたいとのことです。
VRを使って他者の立場を体験し、理解を深めるという取り組みは、これまでにもMogura VRで紹介しています。
(参考) The Next Web