米国・ラスベガスで開催中の世界最大規模のテックイベントCES 2026。毎年様々なテックトレンドが登場するこのイベントで、2026年はウェアラブルなメガネ型デバイスも新たなデバイス群として展示が多く見られた。
その中で、例年通りひときわ目立つ巨大なブースを構えているのがARグラスメーカー・XREALだ。グラス型ディスプレイで長らく眠っていた市場を切り開きつつ、1年に2,3の新モデルを投入するハイペースな動きを継続。さらに、グラス専用の独自チップやGoogleとの協業によるAndroid XR搭載の次世代グラスProject Auraなど他のメーカー以上に未来への投資となる独自路線を貫き続けている。
CES 2026でもASUSとの協業でゲーミンググラスとも言える「ROG XREAL R1」を発表。さらに2025年12月に日本で発表したXREAL 1Sを北米市場に向けて改めて発表した。
XREALの2026年の現在位置について、XREAL CEOのシュー・チー氏に聞いた。
ASUS ROGとの協業と「XREAL One」
――ASUSとのコラボレーションには驚きました。今後、他のハードウェアメーカーともコラボの可能性はあるのでしょうか?
シュー・チー氏:今の段階で言えるのは、公表しているものだけなので「もしかしたら」としか言えません。我々はProject AuraでGoogleとのコラボレーション、そして今回はASUS ROGとのコラボレーションを進めています。そしてもちろん、XREAL 1Sのように我々自身の製品ラインもあります。 言えることとしては、いずれも異なる視点からのアプローチということです。 Project Auraは空間コンピューティングのためのシステムであり、ROG XREAL R1は初めての「ゲーミング領域」への本格的なアプローチです。
――あくまでも可能性はないわけではない、と
チー氏:もしかしたら、ですね(笑)
――ASUSは2025年のCESで独自のARグラスを発表していましたよね。何があったんでしょうか。
チー氏:彼らの第1世代製品に何があったのか詳しくは知りませんが「最高のものと組みたい」と気付いたのではないでしょうか。 そして、我々のX1チップがその扉を開くことになりました。
私はASUSとのコラボを楽しんでいます。XREALのプロダクトチームと彼らのチームが話し始めると、本当に興味深く、クレイジーなアイデアがたくさん出てくるのです。 その一つが、「Steam DeckやXboxからグラスに至るまでの、エンドツーエンドの体験をどう最適化するか」という点です。(ARグラスだけでなく)トータルな体験の設計です。「ゲーミングの観点からもう少し何かできないか」という話の中で、ROGのチームは常により高いフレームレートを求めてきました。
ROGの特長であるアイコニックな外観を含め、よりゲーミングをテーマに据えたプロダクトに仕上げられるかどうかが重要でした。 デザインもとても気に入っています。誰が見てもゲーマー向けのハイパフォーマンスだということが分かるわけです。
また、ROG XREAL R1の開発には、ASUSとXREALだけでなく、Oneシリーズにオーディオを提供しているBoseやその他の主要コンポーネントを提供する既存のベンダーも参加しています。
――この製品は「XREAL One」シリーズの一部なのでしょうか、それとも独立したシリーズなのでしょうか?
チー氏:XREALのX1チップを組み込んだ現在の製品ラインを拡張するモデルです。つまり、XREAL Oneシリーズで提供している機能やアップデートは、ROG XREAL R1にも簡単に適用できるということです。
――ROG XREAL R1は、「XREAL One Pro」がベースになっていますね。
チー氏:ベースは同じでも、ドック(ROG Dock)や高フレームレート、全く新しいデザインなど、ゲーマー向けに最適化されています。
ーー デザインの違いには驚きました。
チー氏:ライティング(発光部)がかっこいいですよね。
――デモで試した時の体験も良かったです。
チー氏:市場に出るまでにはまだ多くの改善の余地があります。 発売される頃には、こうしたデバイスとの完璧な統合をお見せできると思います。
――120Hzの次は144Hzなどではなく、240Hzというのがこのコラボレーションにおける重要なゴールの一つだったということですね。
チー氏:目標はシンプルです。常に最高のものを作ることです。 もし価格を気にしないのであれば、これは間違いなく最高のゲーミングARグラスになります。 それ以外にも、あらゆるものとペアリングできる完璧なゲーミンググラスとして「XREAL 1S」を購入するという選択肢もあります。
――消費者目線だと多くの選択肢があるわけですね。
チー氏:異なる価格帯にまたがる広いラインナップを作りたいと考えています。 ユーザーは自分の予算やニーズに基づいて製品を選ぶことができます。 最終的にはAuraがあり、ROG XREAL R1があり、独自の製品ラインとしてOne、One Pro、1Sと揃うことになります。
ところで、ROG XREAL R1の価格はいくらぐらいになると思いますか? グラスだけでなくドックも含めた価格です。
――1,000ドルくらいですか?
チー氏: 間違いなくもっと低いです。 我々のラインナップでは今後のモデルも含めるとAuraが一番高くなりますが、その次がROG XREAL R1です。価格はXREAL One Proよりも若干高いくらいになるはずです。
「Project Aura」とアシスタントAI常時ONへの挑戦
――「Project Aura」について、CESではアナウンスはありませんでした。
チー氏:リリースに向けて順調に進んでいます。 今言えるのは、間違いなく今年中にはローンチされるということです。我々は単にハードウェアとプラットフォームを作っているだけでなく、体験全体を提供しようとしています。(Auraの体験には)きっと驚くと思います。
――CESの期間中にGoogleとのパートナーシップ延長を発表しました。 実際にこのパートナーシップはどう機能しているのでしょうか?
チー氏:Androidの初期の頃、GoogleがHTCと緊密に連携していたことを覚えていますか? 彼らはハードウェアとソフトウェアの体験を一緒に磨き上げるために協力していました。 我々も同じような課題に直面しています。 彼らはAIなどソフトウェアなどを磨き上げるのが本当に得意です。一方で我々はハードウェアや主要コンポーネントを作るのが得意です。 だからこそ、一つのチームとして緊密に協力しようとしています。
そして、チップセットを作っているQualcommも加えた「三角形」のようなコラボレーションです。 XRの素晴らしい体験を提供するために協力しています。 現在Auraが実現しようとしているのは、MetaのRay-BanグラスやApple Vision Proとは異なる、完全に新しいカテゴリーだと考えています。 この製品をローンチすれば、他の企業もこの市場に参入し始めると確信しています。 デバイスのフォームファクタやトレードオフのバランスを考えれば、これがメインストリームの製品になると皆さんすぐに気づくでしょう。
Googleはこの方向に注力したいと考えており、我々はその中心にいるリーダーです。 だからこそ、足を止めずにもっと素晴らしいことをやり続けたいのです。 すでに、Auraだけでなく「次」のことも考えています。 ハードウェアを作るのには時間がかかりますから。光学系など多くの主要コンポーネントを含め、次の世代のタイムラインを把握して動く必要があります。 各カテゴリーのベストな相手と仕事をするのは本当に楽しいです。 Googleとの仕事も、ROGとの仕事も、コラボすることでより多くの新しいアイデアや創造性が生まれるのです。
――コラボレーションを楽しんでいますね。
チー氏: ROGとの協業で作ったものは、すでにメディアやアーリーアダプターからの最初の反応を見る限り、皆さんを本当に驚かせたと思います。開発者からの興奮も見られました。 我々はこれまでにない未来的なものを作っていて、コラボレーションこそが未来を創造する方法だと感じています。 自分たちだけでできないことは、ベスト・オブ・ザ・ベストと組めばいいのです。
――Googleとのコラボレーションは今日始まったわけではなく、長い期間協力してきて、今ようやく最終製品への道のりにいるわけですね。スタートではなく、道の途中にいる視点から見て、ARハードウェア、OS、そしてAI部分を統合する上で何が重要だと感じていますか?
チー氏:全てです。 我々は単なる開発キットではなく、十分な「製品」にしたいと考えています。 消費者の視点から見て、すべてが完璧に近いものでなければなりません。 まだやるべきことはたくさんあります。
Googleの用語ですが、社内でも何度も「ドッグフーディング」を行い改善プロセスを回しています。自社製品を実際に使ってテストし、バグを見つけ、改善点を見つけるプロセスです。
――AIはAuraのキーポイントだと思いますが、Auraの開発が進む中、LLM(大規模言語モデル)の進化も並行して進んでいます。 2025年11月に登場したGoogleのGemini 3は世界を驚かせ、場合によりGPTを凌駕するような性能を見せました。 Project Auraにおいて、Geminiはどのように機能するのでしょうか?
チー氏:我々はGoogleとかなり長い間協力しており、Geminiが素晴らしいことを知っています。 多くの公開モデルや体験を見てきましたが、マルチモーダルな一般モデルという観点では、Geminiは他を大きくリードしています。 私が本当に気に入っているのは、我々が最終的に求めているのが「グラスの中にいるアシスタント」だからです。 環境を理解し、あなたの決断を理解し、意思決定を助けてくれる存在です。 Geminiはその体験全体の重要な要素になるでしょう。私は定期的にGoogleと話していますが、彼らはGeminiがどう体験全体を再定義できるかについて、次々と新しいアイデアを持ってきます。本当に面白いことになるでしょう。
――Auraに搭載されるGeminiは現在提供されているバージョンとは異なるのでしょうか? より「マルチモーダル」なAIという理解で合っていますか?
チー氏:その通りです。
――Auraでは、AIのどのような能力がより重要になるのでしょうか?
チー氏:マルチモーダルAIは基礎的なインフラのようなものです。重要なのはその上に構築されるものです。 メインエンジンとしてのマルチモーダルAIから、「パーソナルアシスタント」や「パーソナルエージェント」へと移行するには、まだ進化が必要です。 Auraの最終製品を見る頃には、「これは本当に素晴らしい。ただのGemini以上だ。これは私のパーソナルアシスタントになり得る」と感じてもらえることを期待しています。
――Galaxy XRにはすでにGeminiが搭載されていますが、Android XRにとってはまだ本当に初期バージョンということですね。
チー氏:そうです。
――将来のARグラスにおけるオンデバイスAIのビジョンはどのようなものでしょうか? アシスタントだけなのか、それとももっと進化したものなのでしょうか?
チー氏:アシスタント機能だけでもすでに非常に強力です。 ただ、現時点では「常時オン(Always On)」でAIが存在し続けられるデバイスはまだ見当たりません。 私の見解ですが、2026年には、グラスであれ、スマートピンやウォッチであれ、「常時オンのAIエージェント製品」の初期の兆候が見られることを期待しています。 まだそれは実現していません。現状のフォームファクタは興味深いものが現れていますが、バッテリー寿命の問題で一日中使えるAIグラスにはなっていません。
――もしかしたらXREALが最初にそれを実現するということでしょうか?
チー氏:もしかしたら、我々が何か思いつくかもしれませんね(笑)
チップ不足の影響と「X1チップ」の強み
――次はX1チップについて。 現在、AIの影響で世界中で半導体の需要が高まっており、メモリやストレージの需要も爆発的です。XREALの製品も影響を受けますよね?
チー氏:我々だけでなくコンシューマー向けテック業界全体が影響を受けています。 GoogleやROGのような素晴らしいパートナーがこの問題を一緒に解決してくれると考えていますが、最終的には全員にとっての課題です。状況が改善することを期待しています。そして、最終製品のユーザーに提供する価格への影響が少なくなるよう、懸命に努力しています。
――X1は第一世代のチップセットです。次世代についてはどうでしょうか?
チー氏:時期が来れば次世代のチップも間違いなく登場します。 実際の顧客の声を聞き、グラスに何を求めているのかを教えてもらいながら進化を進めていきます。 間違いなく、より軽いデバイスを実現することに貢献し、より電力効率が良くなるでしょう。
我々は現行のX1チップをとても気に入っています。 例えば1Sと同時にお披露目した「2D-to-3D変換」機能は、X1チップがなければ不可能です。
――「2D-to-3D変換」はX1チップだけで処理しているのですね。
チー氏:その通りです。常にスマートフォンがあるわけではありません。「2D-to-3D変換」は、Steam DeckやノートPC、スマートフォン、あらゆるデバイスにプラグを差し込むだけで、ソフトウェア不要で機能します。 チップがオンデバイスに搭載されていて全ての処理を行うため、非常にシンプルで直接的です。 このような体験を提供できるチップは他にありません。
X1チップでできることはもっとありますので、これからまだ新しい体験や機能を思いつくかもしれません(笑)また、これはチップを搭載していれば拡張可能です。つまり「One」や「One Pro」のようにX1チップを搭載した既存モデルは、ファームウェアのアップグレードだけで2D-to-3D機能が使えるようになります。 2026年1月中にはそのファームウェアを公式に展開する予定です。
――Appleも自社でチップを作って毎年新しいモデルを出していますよね。
チー氏:ユニークな体験を作ろうと思えば、困難な道を歩まなければなりません。 だからこそ、我々は光学部品を作るための自社工場を建て、独自のチップを作ったのです。 市場に十分な性能の良いチップがあればそれを簡単に採用できたのですが、存在しなかった。だから自分たちで作るしかなかったのです。
過去最高だった2025年:XREAL One Proの人気
――最後にXREALのデバイスの売れ行きについて。2025年のホリデーシーズンはどうでしたか?
チー氏:素晴らしかったです。 チップ供給の影響を少し受けたため、一部の市場では在庫切れや入荷待ちが発生しましたが、全体としては間違いなくXREAL史上最高の年でした。 最終的な数字はまだ締めていませんが、我々にとって2025年はベストイヤーでした。
より多くの製品やコラボレーションがある2026年は、さらに大きな年になると考えています。
――2025年は「One」と「One Pro」の2つの主力製品がありました。XREAL Air 2の頃はラインナップの中で「Pro」が非常に人気でした。今回のシリーズではどうですか?
チー氏:同じですね(笑)機能が豊富なので、現時点だとユーザーはより上位のモデルを好む傾向があります。 これには驚かされます。高価になるのですが、皆さんより良い体験を求めて上位モデルを選びます。
時間が経つにつれて、価格を下げた「1S」のようなイテレーションも用意しています。 最終的にはもっと手頃な価格のグラスを展開して、より多くの人が体験を楽しめるようにするにラインナップを拡充することが目標です。
――そういえば、「1S」の名前はシリーズの他のデバイスがアルファベットなのに対して数字の「1」ですよね?
チー氏:パッと見て数字のほうが覚えやすかったからです。 将来的に「2」「3」と続いていくなら、シンプルな数字にこだわった方がいいと考えました。 将来的には数字に統一していくつもりです。
――分かりました、ありがとうございます。
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