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お知らせ 2026.01.09

NTTコノキューが語った現場DXのカギは“空間AI”だ グラス型デバイスの真価と物流業務11%効率化の裏側【XR Kaigi 2025レポート】

バーチャル領域(XR / メタバース / VTuber)の担い手に向けた業界カンファレンス「XR Kaigi 2025」が、2025年12月1日から3日にかけて開催されました。

数々のセッションや展示の中から、本記事では株式会社NTTコノキューをピックアップ。法人向けに多彩なデバイスとソリューションを提供し、2024年10月にはグループ会社であるNTTコノキューデバイス製のXRグラス「MiRZA®(ミルザ)」を発売した同社の取り組みを紹介します。

目次

ブース展示:「MiRZA」の最新ソリューション
NTTコノキューがXRグラスで挑む物流DXの世界
空間AIは”目”と”手”を拡張する――XRグラスによる製造DXと医療革新の挑戦

ブース展示「MiRZA」の最新ソリューション

エキスポエリアのNTTコノキューブースでは、2024年10月に発売されてから進化を遂げているXRグラス「MiRZA」を展示。来場者はMiRZAを体験できたほか、ブース内では発売から1年を経過したMiRZAの活用状況や、ソフト面でのアップデート、品質や支援体制の進化についても紹介しており、「MiRZAソリューションパートナー」に参加している企業による最新ソリューションの紹介映像も流されていました。

実機は一見すると重厚なデザインですが、約125gと軽量で荷重が適切に分散される設計のおかげか、装着感は驚くほど軽快。現場作業を想定したしっかりとしたホールド感がありつつも、頭部への締め付けといった不快感は皆無でした。

特に印象的だったのが、ハンドトラッキングのデモです。右手の親指と人差し指を合わせて動かすだけで、空間上に自由自在に線を描くことができます。上下左右だけでなく奥行きまで反映され、さらに左手で「摘む」動作をすれば、描いたオブジェクトを掴んで動かすことも可能。直感的かつ指の動きに正確に線が反映される高精度な操作性に、来場者からも驚きの声が上がっていました。

ブース奥ではセッション(後述)で紹介されたピッキング補助アプリも体験可能となっており、企業担当者を中心に熱心な視線が注がれていました。

NTTコノキューがXRグラスで挑む物流DXの世界

12月2日に行われたセッションテーマは、物流現場のDXを加速させるXRソリューション開発について。NTTコノキューの法人ビジネス担当主査・西﨑達哉氏と、株式会社ディーエムエス(以下、DMS)事業開発部・武藤圭祐氏が登壇しました。

2025年現在、物流業界は激変の只中にあります。コロナ禍以降、EC化率の伸長に伴い物流量は急増。その一方で労働人口は減少の一途をたどっています。このような環境においては、少ない人数で効率を追求する必要があり「いかにして長く、快適に働いてもらえる環境を作るか」。これが物流業界における喫緊の課題です。

この難題への解決策として提示されたのが、XR技術による物流現場のアップデートでした。

似たような棚が並び、膨大な在庫が保管される物流倉庫において「作業効率の向上」は永遠のテーマです。加えて、商品の保管場所が流動的な倉庫では、経験の浅い作業員が迷子になりやすいという問題も抱えていました。

これらの課題を解消するべくNTTコノキューがDMS協力のもと、開発したのが、XRグラス「MiRZA」を活用したピッキング補助ソリューションです。セッションでは、本ソリューションの特徴と、実証実験で得られた成果が明かされました。

「直感的なわかりやすさ」が最大の武器

両手を常に使う物流業務において、ハンズフリーで操作できるグラス型デバイスは極めて高い親和性を持ちます。中でも特筆すべきは、その「直感的なわかりやすさ」です。

「MiRZA」を装着すると、“次に向かうべき棚の位置やそこまでの道筋”が現実の倉庫風景に重なって表示され、迷わずに対象の棚へ辿り着けます。さらに棚の前に立てば、「何をピックアップすべきか」が、視界内への商品画像の表示や、保管された棚枠の強調表示といったような形で視覚的に強調され、似た商品が多い棚でも迷うことはありません。

視覚誘導によって効率化を図る手法としては「棚を物理的に光らせる」システムも存在しますが、ひと棚あたり数百万円とも言われる高額な導入コストがネックとなり、数十~数百の棚が並ぶような倉庫においては費用が簡単に数千万円になるため、物流事業者にとっては大きな負担となります。対して、MiRZAを用いた本ソリューションであれば、より低コストで倉庫内にある数十〜数百の棚の全てに対応することが可能となります。

実証実験で判明した課題と可能性

DMSの拠点で行われた実証実験では、熟練度の低い作業員において作業効率が11%向上するという結果が得られました。

ただし、本ソリューションについてはNTTコノキューにとって初の実証実験だったこともあり、アプリの完成度やUIには未成熟な点もあったと指摘。改善の余地が明らかになったことで、西﨑氏は「まだまだ上を目指せる」とさらなる開発への意欲を見せました。

一方、被験者からは「疲労感」に関する指摘も寄せられました。これにはUIや輝度の問題に加え、XRグラスというデバイスそのものへの不慣れも影響していると考えられます。


しかし、寄せられたのはネガティブな反応ばかりではありません。DMSの武藤氏によれば、「本ソリューションがもっと使いやすくなれば、確かに作業は楽になる」という期待の声や、「ゲーム感覚で楽しい」といったポジティブな意見もあったといいます。これを受けて西﨑氏は、ゲーミフィケーションが単純作業のモチベーション向上に寄与する可能性を示唆しました。

課題と手応え、その双方を得た両社。今後はピッキングだけでなく、入庫から検品、梱包に至る前後工程へと適用範囲を広げ、倉庫業務全体のトータルソリューション構築を目指す方針です。

空間AIは”目”と”手”を拡張する――XRグラスによる製造DXと医療革新の挑戦

12月3日のセッションには、NTTコノキュー法人ビジネスプロジェクトプロダクトリーダーの浅井勇大氏が登壇しました。

Android XRやAIグラスの登場により、ハードウェア競争が激化する昨今。NTTコノキューもMiRZAを世に送り出していますが、浅井氏は真のフロンティアを、XRとAIが融合した「空間AI」に見出しています。本セッションでは、50種以上のデバイスを検証してきた製造・医療特化のXR事業リーダーとして、空間AIによる「人の能力拡張」について論じました。


セッション冒頭では、ハードウェア(MiRZA)とソリューション(NTT XR Real Supportなど)を自社で一気通貫して提供できる同社の強みに言及。その上で、XRに期待される「拡張」の本質は、AIの特性を見極めた活用にあると語ります。

現在主流のLLM(大規模言語モデル)は文脈理解には長けていますが、正確な空間認識や幾何学的計算は不得手です。浅井氏は、目的に応じて最適なAIを使い分ける重要性を説いた上で、XR×AIが実現する「目」と「手」、2つの拡張アプローチを提示しました。

【製造DX】「目」の拡張:LLMが熟練者の代わりになる

一つ目は「目」の拡張です。

製造やインフラの現場における技能継承や人手不足といった課題に対し、AIが「熟練者の目」となって作業を支援します。浅井氏が描くのは「グラスをかければ誰でも仕事ができる世界」。さらに言えば、「新人がベテランの判断力を持てる世界」です。

具体的には、AIがベテランの視覚的技能や暗黙知を学習し、XRグラスを通じて「作業ガイド」「正誤判定」「危険予知」などをリアルタイムで指示します。これを実現するのが、現場のコンテキストを理解するマルチモーダルLLMです。

ただし、汎用的なAIでは不十分です。「作業手順書」や「過去の事例」といった固有の情報を学習していなければ、的確な回答は導き出せません。現場の状況を読み解くには、LLMに企業独自のデータベース(マニュアル、日報、トラブル事例など)をRAG(検索拡張生成)として連携させる必要があります。

このアプローチの最大の障壁は、「データがない」ことだと浅井氏は指摘します。マニュアルはあっても、「熟練者のコツ」や「現場の機微」といった暗黙知はデータ化されていないことがほとんど。DX実現の第一歩は、アナログ作業のデータ化にあります。

そこでNTTコノキューが提案するのが、遠隔作業支援ソリューション「NTT XR Real Support」です。

作業員がXRグラスを着用することで、映像や会話をリアルタイムに記録・蓄積。日常業務を通じて暗黙知をデータ化していきます。現在は人による支援が中心ですが、将来的にはAIとのハイブリッド、最終的にはAIによる完全無人支援を目指す構想です。

【医療革新】「手」の拡張:“神の手”を再現する高精度トラッキング

二つ目は「手」の拡張。

外科手術など医療領域でのXR・AI活用においては、製造業とは異なるアプローチが求められます。人命に関わる医療現場ではLLMのような「曖昧さ」は許容されず、ミリ単位の絶対的な正確性が不可欠だからです。特に外科手術の現場では、数ミリの誤差が致命傷になりかねません。そこで採用されるのは、空間認識が苦手なLLMではなく、専用の機械学習モデルです。実用化にはまだ課題がありますが、目指すのは、熟練医が持つ「神の手」の民主化です。

同じ「XR×AI」というテーマであっても、解決すべき課題によって、選ぶべき技術とデバイスの最適解は異なります。「領域によって最適なAIは異なる」。その事実が、明確な対比として示されたセッションとなりました。

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