2024年12月11日から13日にかけて、竹芝・東京ポートシティにて株式会社Moguraが主催する「XR Kaigi 2024」が開催されました。そのうち12日と13日には、様々な企業・団体・自治体・クリエイターが出展するエキスポエリアも公開されました。
全98ブースとなったエキスポエリアには、どのような展示があったのでしょうか。技術面、サービス面で注目したいブース、新規ビジネスの予感がするブース、アイディアが素晴らしいブースなどをご紹介しましょう。
オープン直後から長蛇の列となったソニー「SRH-S1」
筆者が見たかぎりでは、2024年1月のCES 2024で初公開されたソニーのXRヘッドセット「SRH-S1」が全ブースのなかで最も注目されていました。話題のデバイスを体験するべく10時の開場すぐに多くの人が押しかけ、長蛇の列を作っていました。
解像度は片目4K。視野角はさほど広くない。反面、エリア内の情報密度は高く55ppdという高精細な描写を実現。体験ブースの1つはシーメンスの製品設計ソリューション「NX Immersive Designer」のアプリに触れることができました。
コントローラーも6DoFの仮想空間内で製品デザインを行うべく、独特な形状のコントローラを用います。慣れは必要ですが、意外にも直感的な操作が可能で、3D CG制作現場における生産性を高めるためのXRヘッドセットと感じました。
仕事用仮想ディスプレイとして使いたくなる最新ARグラス「XREAL One」
人気第二位と感じたのが、XREALのブースです。
12月11日にXR Kaigi 2024の場で発表されたXREAL Oneが大々的に展示されていました。筆者はMac Miniと接続したXREAL Oneを体験しましたが、従来モデルよりも仮想ディスプレイ側に一歩近づいたと感じられる視野角の広さがお気に入り。
解像度は従来機と同じく1080pのため、視野角が広まったぶん映像密度が薄れるかなと思いきや、小さな文字も見やすく、外出先で大きなディスプレイを使って仕事がしたいときの特効薬になると実感しました。
またXREAL x MESONのコーナーでは、MESONが開発したXR Kaigi 2024立体マップがありました。XREAL Air 2 Ultraの6DoF・ハンドトラッキング機能を用いて、ジオラマのような俯瞰して見ることができるマップから、気になるブースの方向を知ることができるもので、ガジェットの操作に明るくない人でも簡単に操作できるのでは、と思えてしまったほどUIUXがお見事でした。
電源不要で様々なCGを表示できる「D-Poster」
個人的に最もヒット、いやホームランだと感じたのが、gugenkaブースにあったSensecapeの「D-Poster」です。カラーデジタルサイネージの一種ですが、E inkの技術を用いたことで、CG表示中の消費電力はゼロ。CGを切り替える際にわずかな電力を必要としますが、内蔵バッテリーを用いるならばAC電源は不要です。
視野角は印刷物と変わらないくらい広いため、横から見ても鮮やかで精細なCGを見ることができます。
近寄ってみると、ドットの粒が見えるようになりますが、バックライトがないため、本当にプリントしたCGのように感じられるのが不思議。
CGの切り替えは多少の時間を必要としますが、スマートフォンなどでコントロールするだけではなく、スケジュール設定も可能とのことですから、従来のデジタルサイネージよりも幅広い場所で活躍するデバイスとなるでしょう。
VRChatユーザー待望のチューニングを行った「mocopi」
モバイルモーションキャプチャー機器としてVTuberに人気のソニー「mocopi」。VRChatなどのソーシャルVRのフルトラッキングセンサーとして使う人も多く存在します。しかしVR睡眠をする、椅子に座り続けるといった使い方だと、時間経過と共にVR空間ないのアバターの姿勢が崩れていくという難点がありました。
そこで最新アップデートでは、ソーシャルVR向けのアルゴリズムを導入。同じ姿勢のままであっても姿勢が崩れないようになりました。筆者もVRChatの店舗型イベントにキャストとして参加するときはmocopiを使って身体の動きを見せていたため、今回のアップデートは心から歓迎します。
PC版の登場が待ち遠しいambr「gogh」
2024年7月にリリースされて以来、30万ダウンロードを記録したスマートフォン用作業集中アプリgogh。来年にはPC版が登場する予定ですが、それに先駆けて現在開発中のバージョンのデモが公開されました。
自分のアバターの部屋を自由にカスタマイズできるのがgoghの強みですが、PC版では複数の部屋を保存できるとのこと。その時の気分に合わせて部屋を切り替えていけば、より集中力が高まりそうです。
VRゲームセンターの復活を感じるHTCのLocation-Based Experience
コロナ禍となって営業が続かなくなり、多くのVRゲームセンター(ロケーションベースVR)が営業を停止しましたが、海外では復活しつつあります。海外でも若い世代がラウンドワンのようなレジャー施設に足を運ぶようになったり、ショッピングモールにも人が戻ってきました。そういった場でのアトラクションとしてVRコンテンツが注目されているのでしょう。
そんなロケーションベースVRのソリューションを展示していたのがHTCです。XR Kaigi 2024の会場ではスペースの都合もあって4人同時プレイ版となっていましたが、広いエリアを用意すれば、もっと多く人数で戦ったり、協力プレイすることが可能です。先日、日本でも横浜にオープンした75人同時VR体験の「Immersive Journey」や世界的に人気の「Sandbox VR」でもHTCのデバイスが使われています。
没入感を高めるために触感も活用した「中継を止めるな!」
岐阜大学デジタル創作サークルのブースには、フォーミュラーレースのTV中継カメラマンになれるゲームコンテンツ「中継を止めるな!」がありました。大型カメラを載せたビデオ雲台を操って、XRヘッドセット内に表示されるフォーミュラーカーをフレームに収め続けるというものですが、工業用扇風機やドライヤー、ハプティクス加工されたカメラマンベストなどを用いて、フォーミュラーカーが眼前を通り抜けていくシーンの没入感を高めています。
筆者も試してみましたが、これが難しい! ビデオカメラマンの仕事は時に簡単そうに見えますが、実はそんなことはなく、ハイレベルな技術職なんだと実感しましたね。
販売用グッズの良いアイディアも
VRChatでserial experiments lain「WEIRD展」を開催したAnique Museumのブースには、serial experiments lainのファンやVRChatユーザー向けに販売したグッズが展示されていましたが、この中央にある一品が技ありのアイテムでした。
どこにでもあるようなCDパッケージに見えますが、実はこれ、アクリルブロックなのです。CDジャケットのように飾れるアイテムとしてデザインされています。
さらに、全72楽曲を収録したサウンドトラックのダウンロードコードが付属しており、スマートフォンやPCで『serial experiments lain』の楽曲を楽しめます。購入者の所有欲を満たしつつ、コンテンツも提供するというこの仕掛けは、なかなかいいアイディアではないでしょうか。