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活用事例 2026.09.02

スマホ1台で空間を持ち帰る! ビジネスを加速させる3Dスキャンの最前線【XR Kaigi Hub 名古屋レポート】

2026年8月6日に開催された「XR Kaigi Hub 名古屋」で行われた講演「3Dスキャンの活用法」をレポートする。iPhoneなどのモバイル端末や高精度な3Dガウシアンスプラッティング(3DGS)によって身近になった3Dスキャン技術を、我々はどのように実社会やビジネスで活かしていくべきか、その具体的な活用法が語られた。

登壇者紹介:桑山優樹氏 ワイクウーデザイン(株式会社桑山瓦)

XR技術を使った国内唯一のデジタルツイン遠隔臨場アプリ「XRegion」開発販売。また、H-BIMの先駆者として全国の文化財関係者に利点や導入方法のアドバイスをするなど精力的に活動。奈良文化財研究所と文化財XRアーカイブに関する連携研究協定を締結するなど、文化財でのXR活用についても強みを持つ。XRミートアップ三重を発端にXRミートアップ運営委員会を発足、文化財編:奈良・東京・京都・東京と4回の文化財特化イベントを開催し、今年度は伊勢・浜松でも予定している他、XRミートアップ愛知の運営メンバーも務める。

11万画素の携帯からLiDAR搭載のiPadに

セッションの冒頭、桑山氏は携帯電話におけるカメラ搭載の歴史を振り返ることで、3Dスキャン技術の現在地を紐解いた。

「若い方は全然知らない世界だと思うんですけど、2000年に初めてカメラが携帯電話に搭載されました。その時に搭載されたカメラの画質というのがなんと11万画素だったんです。」

2000年頃の写真撮影は、一部のカメラ愛好家や家族の記念日などに限られており、使い捨てカメラでも24枚撮りで数百円のコストがかかっていた。しかし現在では、写真を撮るという行為自体が日常に溶け込んでいる。桑山氏はこの写真技術の進化を、現在の3Dスキャン技術の普及と重ね合わせた。

「2020年より以前にモバイル端末で3Dスキャンをしようとすると、iPadに別のセンサーをくっつけて操作するスタイルがあったんですが、それでもだいたい20~30万円は最低限必要でした」

2017年には「Google Tango」というプロジェクトが存在し、対応するAndroid端末(当時8〜9万円程度)で3Dスキャンが可能であったものの、市場に出回ったのは数機種に留まり、普及には至らなかったという。

そうした状況を一変させたのが、Appleの動きである。当初はARのトラッキング向上やカメラのフォーカススピードを上げる目的であったが、2020年にiPad ProにLiDARセンサーが搭載されたことにより、その副産物として「誰でも簡単に3Dスキャンできる時代」が幕を開けた。

実際に試して分かったスキャン機器とiPhoneの違い

LiDARセンサーの搭載により3Dスキャンが手軽になったとはいえ、完璧なスキャンがすぐにできるわけではない。3Dスキャンアプリ自体の性能向上という日進月歩の側面もある。そこで桑山氏は、南アルプス市にある重要文化財「安藤家住宅」にて実施した、各スキャナーの取得データの比較結果を提示した。

比較されたのは、iPhone、ハンディ型のBLK 2GO、据え置き型のBLK 360、そして一眼レフを用いたフォトグラメトリである。iPhoneでスキャンしたデータはスカスカな点群にみえる一方で、ハンディ型のBLK 2GOでスキャンしたデータは「襖の向こうとかも透けていないような、ちゃんとしたリアルに近いスキャンができる」という。据え置き型のBLK 360となると、さらに高密度で美しい点群が得られたそうだ。対照的に、写真を計算して3D化するフォトグラメトリでは、環境によって「襖が虫に食われたように見えてしまう」といった欠点が現れることもある。

対象物によっても最適な手法は変わる。例えば「茶釜」をスキャンした場合、iPhoneでは輪郭がアバウトにしか取れず、BLK 2GOではある程度の裏側まで形状が把握できる。しかし、据え置き型のBLK 360では、本体を置いた場所から死角になる裏側が完全にすっぽり抜けてしまう。逆に、こうしたオブジェクトの撮影においてはフォトグラメトリが最も優秀であり、360度綺麗に取れている。

データ容量と作業性についても重要な比較が行われた。安藤家住宅のデータにおいて、iPhone 14 Proの点群容量が約52MBであるのに対し、BLK 360は2GB、そして広範囲を歩行しながら取得したBLK 2GOは4.7GBに達した。容量が重いデータは描画計算に負荷をかけるため、作業内容に応じた機材選びが求められる。

その中で桑山氏が強調したのは、iPhoneによるモバイルスキャンの独自性である。

「iPhoneの良いところは、点群データを取得できる点と、メッシュも一緒に生成される点です。この2つを同時に出力できるというのは他にはないツールになってきます」

これにより、点群で作業性を確保しつつ、詳細を確認したい時はテクスチャーが貼られたメッシュに切り替えるといった運用が可能になるという。

3Dスキャン技術を高めるためには

機材の手軽さが増す一方で、質の高いスキャンを行うには一定のコツが必要となる。桑山氏は自身が主催するイベントを通じて、その技術の底上げを図っている。昨年の11月には、約500名が参加する「名古屋城で3Dスキャンイベント」を開催した。普段は立ち入れないエリアにツアー形式で入り、学芸員の解説を聞いた後に全員で3Dスキャンを体験するという内容だ。ここで桑山氏が意図していたのは、参加者同士のコミュニティ形成である。

「イベントを運営している人だけが教えるのではなくて、みんなで教え合う関係ができたらいいなと思っていました。実際『なぜ、あなたのスキャンはうまく成功しているんですか?』と意見交換されていて、すごく良かった点かなと思っております」

さらに桑山氏は、日常的に行えるスキャンの訓練方法として「スキャン飯」を提唱している。外食の際、食べる前に必ず食べ物をスキャンするというものだ。参加者が大勢いるイベントなどでは、『どうしてもスマートフォンの画面に釘付けになってしまうが、極力画面は見ないようにスキャンしてください』と話す。食事をスキャンする際も、画面を見ずにスキャンできるように訓練することで、日常的な空間のスキャン技術も向上していくのだという。

講演では、打ち合わせで訪れた際、交渉して高級ホテルの部屋(1泊100万円ほどするという)スキャンさせてもらったデータや、自身の手をスキャンした動画も紹介された。「天井のデータを取るのは結構抜けがちなので、上は意識してみるようにしています」と、実践的なアドバイスも添えられた。

さらに桑山氏は、取得した3Dスキャンデータが我々の日常やビジネスにどのような価値をもたらすのかも紹介した。

「普段、旅行に行かれて、今まで景色とか名所を立体的なかたちとして持ち帰ってくることは難しかったと思うんですが、それを実現できるのが、スキャンの良いところです」

静岡県内にあるプラモニュメントや瀬戸大橋の景色、あるいは友人の結婚式でのウェディングドレス姿などをスキャンし、3Dデータとして「持ち帰る」という活用である。写真や動画は撮影者の視点で固定された「完成品」だが、3Dスキャンデータは受け取った側が自由な視点で見ることができる点が強みである。


この特性は、宿泊したホテルをスキャンしてインテリアの参考にする際にも生きる。「記憶の中ではこうだったけど実際は違う」という認識のズレを防ぐと桑山氏は語る。寸法感覚も記録されるため、設計そのままを再現することも可能になる。

ビジネスへの直接的な応用として、前述の「スキャン飯」のデータ活用が挙げられた。
桑山氏の会社では建築のパース(完成予想図)を制作する際、飲食店であれば、そのお店で実際に出されているメニュー(例えば「さわやかのハンバーグ」など)をスキャンしてパース内に配置する。これにより、顧客はより身近に設計を感じることができ、具体的な意見が引き出されやすくなるという。

また、自宅空間をスキャンして持ち歩くことのメリットも大きい。家具店で商品を選ぶ際、ARを用いて自宅の3D空間に家具を配置すれば、木目が合うか、通路が狭くならないかといったシミュレーションが可能になる。「大きい家具を買って、実際に置いてみたら通路が狭くなってしまった」といった失敗を防げるのである。

「このリモコンだよ」を的確に指示

セッションの終盤では、より専門的な建設現場や文化財保存における実用例と、今後の展望が示された。

桑山氏が手掛けた、奥行きが12mにも及ぶ古民家の玄関リノベーションの事例では、VRによる事前の設計検討が行われた。古民家再生の現場では、ビジュアライズするための詳細な図面が存在しないことが多い。そこで、現地を3Dスキャンして設計データと合わせることで空間を構築し、当時はHoloLens(ホロレンズ)を用いて現地に投影しながら検討を進めた。このデータが顧客だけではなく、設計士と相談する際にも活用できたという。


また、自身が2013年まで瓦職人であった経験を活かし、文化財の各部材(瓦など)に番号を振って管理するプロセスをデジタル化する「H-BIM」への取り組みも紹介された。現在は名古屋城と実証実験を行っており、データの視覚化によって「誰もが同じ見た目、認識を持てるデータを作っていくことができる」そうだ。

そして、桑山氏が開発する遠隔臨場アプリ「XRegion」の真価についても解説された。

従来のビデオ通話では、画面に切り取られた映像しか見えず、その枠外にある状況が把握できない。例えば、画面に白いリモコンしか映っていない状況で、担当者が「左側にある黒いリモコン」と指示を出しても、同じ色のリモコンが複数あった場合、現場は「どのリモコンだ?」と混乱してしまう。

しかし、デジタルツインデータ(3Dスキャンデータ)を共有したXR空間であれば、全体の状況を双方が把握できる。

「XRを使っていくと、VRでそこに書いてあげて、このリモコンだよというのを指示してあげると、現場のARの方にも、その場所に同じ情報が見えてくるので、的確に分かるようになります」

接続中にリアルタイムで3Dスキャンを行いVR空間を構築できるため、現場での導入も非常に手軽だという。

LiDARの搭載によって世の中に広がりつつある3Dスキャン技術。単なる記録ツールにとどまらず、ビジネスの現場のコミュニケーションをよりスムーズにする可能性を秘めている。本セッションは、その具体的な道筋を示すガイドとなった。

次回は大阪で開催!「XR Kaigi Hub 大阪 2026」無料チケット受付中

「XR Kaigi」のローカル版イベント「XR Kaigi Hub」は、2026年9月9日(水)から10日(木)にかけて「XR Kaigi Hub 大阪 2026」を梅田 サウスホール(大阪市北区)にて開催いたします。

本イベントでは、XR、スマートグラス、フィジカルAI、メタバースに関する最新動向や活用事例の紹介をはじめ、出展企業によるソリューションやデバイスの展示、セミナーなどが実施される予定です。XRやAIに取り組む企業・開発者、新規事業担当者、DX担当者などを対象としており、9月9日(水)のイベント終了後には懇親会(参加費1,500円)も開催されます。

参加費は無料で、定員は400名(先着順)です。セッションのリアルタイム配信やアーカイブ配信は行われないオフライン限定のイベントとなっております。無料チケットの申し込みは現在Peatixにて受付中です。

イベント名 XR Kaigi Hub 大阪 2026
開催日 2026年9月9日(水)〜9月10日(木)
時間 11:00〜17:00
会場 梅田 サウスホール
所在地 大阪府大阪市北区梅田1丁目13−1 ツインタワーズ・サウス11F
定員 400名(先着順)
参加受付 https://xrkaigihub-osaka2026.peatix.com/view
参加費 無料
懇親会 2026年9月9日(水)17:30〜19:30
懇親会参加費 1,500円
主催 XR Kaigi実行委員会(MyDearest株式会社内)

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