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業界動向 2019.05.13

VRジェットコースター廃止相次ぐ 続かなかったその理由

ヘッドセットを装着して高速のライドマシンを体験するVRジェットコースターが登場し、世界各地のテーマパークに拡大してきました。しかし2019年前後にはVRを廃止し、元のアトラクションに戻す動きも出てきています。どのような理由があるのでしょうか。

フロリダ州の事例

フロリダ州オーランドの2つのテーマパークでは、2018年に入ってVRコースターが姿を消しました。2016年後半にセントラル・フロリダで初めてVRコースターを導入したFun Spotは、アトラクションを元のVRを使わない仕様に戻しました。また2017年夏に海の世界を体験できるVRジェットコースターをオープンしたSeaWorldでも、2018年9月にVRの使用を中止しました。

Fun SpotのCOOJohn Arie Jr.氏は、VRコースターは若い年齢層の興味をひき、導入当初は成功だったと振り返ります。しかし同じ内容の繰り返しに熱狂は冷め、またメンテナンス費用もかさんで来たということです。さらに悪いことに、乗客の入替時間は以前の倍近く。入れ替わりのたびにヘッドセットをクリーニングし、デバイスの装着、調整にも時間を要したためだとArie氏は説明しました。「Fun Spotが最も大事にしていることの一つが、(アトラクション待ちの)長い行列を作らないことです」

同園はしばらく操業を続けましたが、最終的にはVRコースターの廃止を決めました。

VRコースター廃止の背景

American Coaster Enthusiasts(米国コースター愛好会)のリージョンディレクターChris Kraftchick氏は、待ち時間の長さはSeaWorldのライドでも廃止の背景だったと言います。「(SeaWorldのVRコースターは)とても楽しい体験でした。ただ、VRのせいで行列は耐え難いものでした」同氏は説明します。「これは、VRライドアトラクションを作ったテーマパークや企業には気づけなかったことです」

また、メンテナンスの手間と内容の変化の無さもVRライドが失敗した要因だ、と指摘するのはInternational Theme Park Servicesの代表Dennis Speigel氏です。Speigel氏はスマートフォン向けARゲーム「Pokémon GO」になぞらえ、「誰もがしばらくはやったのですが、いつしか終わってしまいました」とVRコースターの流行を解説しています。同氏によれば、2018年にVRを取り入れていたアトラクションの多くが、翌2019年にはVR利用を取りやめているということです。

VRライドを継続するレゴランド、その理由は

一方、引き続きアトラクションへVRを取り入れるテーマパークもあります。レゴランド・フロリダは2019年春、VRコースター「the Great Lego Race」をアップグレード。前年3月に始まったアトラクションを、今後も続けていく方針です。

「今回導入されるVRシステムは、テーマパーク業界にとって全く新しいものです。我々は初の、そして現時点では世界で唯一の、このVRプロトタイプを有する場所です」とレゴランド・フロリダのShawn Mikus氏は自信をのぞかせます。レゴランドによれば、このライドは比較的小さく、1台あたりの定員は4名です。そのため他の大規模なアトラクションに比べると、乗客の入替時間もあまり長くならないのがポイントだといいます。

ARに寄せられる期待

International Theme Park ServicesのSpeigel氏はVRがテーマパークで生き残り続けることを願う一方、ARにも期待を寄せています。ARは現実の場所にバーチャルな画像を重ね、デバイスとしてスマートフォンの活用も多い点が特長です。

「(ARには)装着とクリーニングが必要な、グラスやゴーグルやヘッドセットといった面倒な側面がありません」Speigel氏はこう話します。「しかも、ポップアップのようにどこでも使えます。レストラン、ライド、売店、園内のベンチ……(VRに比べ)もっとずっとフレキシブルです」

国内のVRライド

海外ではこのように廃止や見直しが行われる一方で、日本ではユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が、「XRライド」としてVRコースターを提供。定期的にコンテンツを刷新し、人気を集めています。

(参考)Orland Sentinel


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