Oculus RiftやHTC ViveはPCに接続して使うハイエンドVR機器です。これらの機器を動かすにあたっては使用するPCの性能に依存するものが大きく、特に3Dグラフィックスの描画を行うグラフィックボード(グラボ)の性能は重要なパーツになります。今回は数あるグラフィックボードの中からGeForce GTX1000シリーズの内、VR対応の3モデルを比較していきます。
VR対応グラフィックボードとは?
VRは通常モニターでのゲームプレイに比べて右目用と左目用の2つ分の描画をしなければなりません。性能の低いグラフィックボードでプレイした場合フレームレートが下がり、酔いに繋がることがあるため一定以上の性能が必要になります。NVIDIAは、VRを動作させるのに十分なスペックを持つグラフィックボードに対してVR Ready(VR対応)認定を行っていて、これがついたグラフィックボードがVR対応グラフィックボードになります。
グラフィックカード選びのポイント
現在販売されている、NVIDIAの最新モデルであるGeForce GTX1000シリーズの中では、GTX1060、GTX1070、GTX1080がVR対応となっています。今回はこの3つのモデルを「グラフィックボードの本体価格」、「性能を測るためのベンチマークの数値」の2点で比較していきます。[a]
グラフィックボードの価格
グラフィックボード単体の価格はGTX1060が約3万円、GTX1070が約4~5万円、GTX1080が約7~8万円となっています。それぞれが組み込まれているPCも搭載されているグラフィクボードの価格に応じて価格差があります。
ベンチマークの結果を比較
『VR Mark』と『SteamVR Performance Test』の二種類のソフトを使って比較していきます。
SteamVR Performance Test
『SteamVR Performance Test』はSteam上で配信されているHTC Viveがどの程度動作するかを計測するソフトです。無料で配信されています。
まずはGTX1060です。平均忠実度は「8.1」、非常に高いから高いを行き来するような形でVRレディとなっています。
続いてGTX1070モデルです。平均忠実度は「10.9」、非常に高いからほぼ下がること無くVRレディという結果に。
最後にGTX1080です。平均忠実度は「11」、非常に高いから下がること無くVRレディと3モデルの中で一番高い結果に。
『VRMark Orageroom』
『VR Mark』は『3DMark』などのソフトを開発しているFuturemark社製のVR用ベンチマークソフト。標準的なVR体験が可能かどうか計測する『Orange Room』とハイエンドなVR体験ができるかを計測する『Blue Room』の二種類があります。今回は『Orange Room』でのテスト結果となります。なお、『VR Mark』自体はVRデバイスを持っていなくても測定することができます。
まずはGTX1060です。スコアは「5710」とVRレディの基準である5000を少し上回る数値に。
続いてはGTX1070です。結果は「6741」とVRレディの基準からは1700ほど、GTX1060と比較すると1000ほど高いスコアとなっています。
最後はGTX1080です。スコアは「9802」とVRレディの基準からは4800ほど高い結果になっています。
総評
値段重視のGTX1060
GTX1060は1070,1080と比較した時に値段の面で優れています。1070が約5万、1080が約7~8万という中で1060は約3万円と非常に安い値段です。性能は低くなくVRレディですが、数値的にVRレディの基準とほぼ同等のスコアであるためハイエンドなVRコンテンツにはあまり向いていません。GTX1060は「とりあえずVRを体験してみたい」といった方や「低価格でVRを楽しみたい」といった方にオススメのグラフィックボードになります。
コストパフォーマンス重視のGTX1070
GTX1070は1060,1080と比較した時にコストパフォーマンスの面で優れています。値段は約5万円と1060と1080の中間くらいの価格です。値段の割に性能が高く、負荷の高いハイエンドなVRコンテンツでも(GTX1080には劣りますが)十分に楽しむことができます。GTX1070は「値段を抑えてハイエンドなVRを楽しみたい」といった方にオススメのグラフィックボードと言えます。
性能重視のGTX1080
GTX1080は1060,1070と比較した時に性能面で優れています。価格は約7~8万と1060,1070と比較した場合はもっとも高い価格です。その分性能は非常に高く今回行ったベンチマークテストでは2つとも一番高いスコアが出ています。ハイエンドかつフォトリアルなVRコンテンツの場合1070では性能不足な面が出てくることがあり、1080はそういった場合でも問題なくプレイすることができます。GTX1080は「常にハイエンドなVRコンテンツを楽しみたい」といった方にオススメのグラフィックボードです。
参考(性能表)
GTX1060 | GTX1070 | GTX1080 | |
シェーダプロセッサ数 | 1280基 | 1920基 | 2560基 |
ベースクロック | 1506MHz | 1506MHz | 1607MHz |
メモリタイプ | GDDR5 | GDDR5 | GDDR5X |
メモリインターフェイス | 192bit | 256bit | 256bit |
メモリ容量 | 6GB | 8GB | 8GB |
メモリパス帯域幅 | 192GB/s | 256GB/s | 320GB/s |
TDP | 120W | 150W | 180W |