4月13日に開幕した、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)。
現地の盛況ぶりが日々ニュースになっている今日この頃だが、その一方で、Xでは「バーチャル万博 ~空飛ぶ夢洲~」が先日話題になっていた(参考ポスト)。
「バーチャル万博」はその名の通り、万博会場を再現したメタバースアプリだ。スマートフォン・パソコン・VR(Meta Quest or PCVR対応アプリ)からアクセスできる。筆者も試しにインストールしてみたのだが、その再現度の高さとコンテンツの充実ぶりに驚いた。正直に言って、「万博に行く前に遊んでおけばよかった」とすら思う。
そこで今回は、大阪・関西万博のバーチャル会場である「バーチャル万博 ~空飛ぶ夢洲~」について、実際にリアルの万博会場を歩いてきた目線から紹介する。
TDLやUSJの約3倍!?実はめちゃくちゃ広い万博会場
バーチャル万博の紹介の前に、一点だけ、あらかじめお伝えしたいことがある。それが、現実世界の万博会場の広さだ。
会場全体の広さは、約155ha。公式資料には「東京ドーム約33個分」との表記があるが、「東京ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンの約3倍」と書いたほうが伝わりやすいかもしれない。会場のシンボルとなっている大屋根リングも見るからに巨大だが、なんと1周を歩くと約2kmもあるのだそうだ。
しかも、会場内に立ち並んでいるパビリオンの数は180以上。事前情報がなければ目移りしてしまいそうだし、位置関係のわかる会場マップも不可欠だろう。
当初は「万博の公式アプリとは別に『AIナビゲートアプリ』があるのはどうしてだろう?」と疑問だったのだが、現地に着いて納得してしまった。とにかく広く、見るものも多い。それが万博だ。広大な夢洲では、プラン作成やルート案内の機能が搭載されているAIナビが良き案内人となってくれる。
(東ゲート付近から大屋根リングに登って見た万博会場。メディアデーに撮影)
万博会場で指針となってくれるAIナビに対して、もうひとつ、こちらは事前予習にぴったりなアプリがある。自宅にいながらにして万博会場を見て回ることができ、パビリオンの位置関係も把握できる優れもの。そう、「バーチャル万博 ~空飛ぶ夢洲~」だ。
アプリの存在を知ったときは、「リアルの万博会場をコンパクトにして、主要なパビリオンの建物や展示を見られるアプリかな?」と思っていたのだが……とんでもない。実際にバーチャル万博にアクセスしてみると、あの広い夢洲会場が、驚くほど忠実に再現されていたのだ。それこそ実物との比較ができるレベルだったので、現地の写真も交えつつ紹介したい。
ほとんどリアルそのまま! バーチャル万博の「東ゲート島」へ
アプリ「バーチャル万博」は、以下のデバイスで利用できる。それぞれのダウンロードリンクや動作環境は公式サイトに掲載されているので、そちらを確認してみてほしい。
- スマートフォン(iOS/Android)
- PC(Windows/Mac)
- VRヘッドセット(MetaQuest3,3S)
インストールして起動すると利用規約の確認があり、万博IDでユーザー登録することを促されるが、登録せずにスキップして始めることも可能だ。ただし、プレイ中に獲得したアイテムのデータは消えてしまうため、何度も遊ぶつもりの人は登録しておこう。
基本情報を入力したら、アバターのコーディネート画面へ。
パーツの種類はさほど多くなく、服と帽子も最初は3種類しか選べない。パビリオンを巡ると新しいアイテムが手に入るので、最初はこだわらなくてもOKだ。すでに数多くのアイテムが実装されているので、いっぱい遊んでコーディネートの幅を広げていこう。
(妖精「ナビやん」によるチュートリアルもあるので安心やでー)
最初に訪れることになるのが、「歓迎の島」と名付けられたエリアだ。
現実の万博会場とは異なり、バーチャル万博では、会場内のエリアが空に浮かぶ「島」として分類されている。いかにもメタバースらしい世界観だが、それぞれの「島」の構造とパビリオンに関しては、基本的には現実の万博会場を踏まえて再現されているようだ。
実際に散策してみると、新しい島に入るときはちょっとしたワクワク感もあり、島単位で区切ることで、エリアごとの雰囲気を把握しやすくなっている印象もあった。また、島ごとにデータを読み込むようにすることで、動作負荷を下げている側面もあるのかもしれない。
この「歓迎の島」ではアバターを動かして操作方法を確認しながら、もっと詳しく知りたい人向けの説明を読むこともできる。その場で操作感を確かめるように動いている人も多く、筆者が入ったときは「もしもーし」とマイクテストをしている人の声も聞こえていた。
操作の確認ができたら、いざ万博会場へ。エントランスに向かうワープポイントが2つあり、それぞれ「東ゲート島」「西ゲート島」と書かれている。
現実世界の万博会場も「東ゲート」と「西ゲート」の2箇所が入口となっており、鉄道利用の場合は東ゲートから入ることになる(シャトルバスを使う場合は西ゲート)。今回は鉄道でのアクセスを想定して、東ゲートから入ってみよう。
データの読み込みが終わると、すぐに東ゲートが目に入る……のだが、正直驚いた。てっきり「現実世界の万博会場を下地にしてはいるが、建物としては別物の東ゲート」が目の前に現れるのかと思っていたら、想像以上に再現度の高い空間が広がっていたのだ。
上の画像が、バーチャル万博のスクリーンショット。
下の画像が、筆者が現地で撮影した東ゲートの写真だ。
どうだろう。「完全に一致」とまでは言わないが、「ほとんどそのまま」と言っても過言ではないのでは?
足元に鮮やかなタイルが敷き詰められていたり、ゲート下に万博のロゴマークが施されていたりと、一見するとバーチャルのほうが鮮やかではある。しかし、ゲートそのものの構造や縮尺に関して言えば、ほとんど実際の東ゲートそのままであることが伝わるはずだ。
現実世界では、夢洲駅を降り、改札を出て、エスカレーターを昇ると、まず目に入る万博会場の建物が、この東ゲートでもある。先にバーチャル万博で見ておくと、実際に現地で目の当たりにしたときに少なからず感動があるかもしれない。
ゲーム感覚で楽しめる!バーチャル万博のパビリオンに入ってみよう
(バーチャル万博にも、会場のあちらこちらにミャクミャクがいるよ!)
ここからは、バーチャル万博の会場の様子と、パビリオンをいくつかピックアップして見ていこう。ただ、見られる るべきところが多すぎて、まだ全体の数%程度しかチェックできていないので、もしおすすめのパビリオンがあったらSNSでシェアする際にコメントで教えてほしい。
NTTパビリオン
東ゲート島に入って最初に目に入る、NTTパビリオン。リアルの万博会場でも、位置関係としてはまったく同じ場所にこのような建物が建っている。
外観がリアル万博そのままだった一方で、パビリオン内部にはまったく別の空間が広がっていた。
NTTの次世代通信技術をテーマにしている点、展示エリアが3つに分かれている点などは、リアルのNTTパビリオンと共通している。その一方で、内部の展示内容はまったくの別物だ。2つ目のエリアはまだ準備中だったが、バーチャル万博ならではの体験ができる展示を用意していそうな雰囲気があった。
(入り口近くに浮かんでいるコスチュームに近づくと、アイテムを獲得。コーディネート画面から着替えることができる。バーチャル万博ではこのようにしてアイテムを集められる)
(2つ目のエリアは準備中。リアルのNTTパビリオンではPerfumeのライブを追体験できるエリアだが、「Waiting for Real World Live Performance」とは……?)
(3つ目のエリアは、鏡に写ったもう1人の自分「Another Me」を通して、未来にあるかもしれない職業と出会える。内容は異なるが、リアルのNTTパビリオンの3つ目のエリアも「Another Me」と出会う体験だった)
大阪ヘルスケアパビリオン
同じく東ゲートからほど近い場所にある、大阪ヘルスケアパビリオン。
リアル万博では「リボーン体験ルート」というコンテンツが用意されていて、建物の中を巡りながら健康にまつわるさまざまな体験ができるパビリオンだ。
ここでは何らかの体験ができるわけではなく、リアル万博の展示内容が紹介されている。拍子抜けした人もいるかもしれないが、バーチャル万博ではこのような「実際の展示物の紹介」のみのパビリオンも少なくない。
とはいえ、「バーチャル万博で気になった建物に入ってみる」ことが取っかかりになって興味を持つかもしれないし、リアル万博の事前予習になることは間違いない。それがこのメタバースの目的でもあるはずなので、気になるパビリオンが目に入ったら、ガンガン入ってみよう。
(大阪ヘルスケアパビリオンの内部。バーチャル万博のほうはかなり簡略化されているが、雰囲気は結構近い)
(大阪ヘルスケアパビリオンの裏手に回ると、入れない建物も含めて会場が再現されていることがわかる。ちなみに、一見すると殺風景な通路と建物にしか見えないこの場所は、『モンスターハンター ブリッジ』を体験できる「XD HALL」へ向かう通路だ)
(画角が違うためわかりにくいが、先ほどのスクショで左手に映っている建物の壁に、現実だとリオレウスが描かれている。バーチャル万博では奥まで入ることはできなかったので、さすがに見えないところも含めて隅々まで再現しているわけではないようだ)
いのちめぐる冒険
「いのちめぐる冒険」は、『マクロス』シリーズや『アクエリオン』シリーズでおなじみのアニメーション監督・河森正治さんがプロデュースするパビリオンだ。
リアル万博では「超時空シアター」「ANIMA!」という2つのイマーシブ体験ができるパビリオンだが、バーチャル万博では、このパビリオンのシンボルである「いのち球」を主軸に据えた体験ができる。
(最初に足を踏み入れる「バーチャルセル」では、リアル万博のコンテンツが紹介されているほか、アバター用のアイテムも手に入る)
(リアル万博では、建物の正面に建っているシンボル「いのち球」。バーチャル万博ではこの「いのち球」を登りながら、アバターがさまざまに“変形”する体験を味わえる)
(いのち球の中へ飛び込むと、そこは色を失った「無限共鳴」という空間。この世界が色を取り戻し、鮮やかになっていく演出は必見だ)
アオと夜の虹のパレード
バーチャル万博のパビリオンをいくつか巡ってみて、「これはぜひ体験してほしい!」と感じたのが、「水の島」の「アオと夜の虹のパレード」だ。
リアル万博で毎晩開催されている水上ショーのバーチャル版であり、本編と同じキャラクターが登場する。ストーリーも同様だが、客席から鑑賞するリアル万博とは異なり、自分でアバターを操作して先へと進んでいく楽しみがある。その道中の演出もバーチャル万博ならではだ。
VRChatやclusterで見られるパーティクルライブのよう――とまでは言わないが、アバターを操作することでストーリーが展開し、次々に周囲の空間が変化していく体験は、かなり見ごたえがある。というか、まさか公式アプリでこんなコンテンツが用意されているとは思わなかったので、軽く感動したほどである。
リアル万博のショーで最高に盛り上がるシーンで流れるテーマソング「伝承歌」(作詞作曲:菅野よう子)も、このバーチャル万博の体験にちゃんと組み込まれている。ショーを未鑑賞の人でももちろん楽しめるし、すでにリアル万博でショーを見ている人は、あの感動を追体験できるはずだ。
(リアル万博の水上ショーでは、約300基の噴水装置と水のスクリーンを使ってキャラクターを投影しながら、物語が展開していく。そこにレーザーや炎の演出も加わるため、ただきれいなだけでなく迫力のあるショーが楽しめる)
(リアル万博の水上にあるモニュメント「ウォーターカスケード」も、バーチャル万博のショーに登場。リアルとバーチャル、それぞれで見られる虹の演出も美しい)
その他会場風景
(フランスパビリオン。各国のパビリオンも再現度が高いので、「バーチャル万博で気になる建物をチェックしておいて、現地で実物を見に行く」という使い方もありかもしれない)
(万博会場のシンボル、大屋根リング。もちろん、リアル万博会場ではさすがにこの光景は見られない)
(大屋根リングでは定期的にパレードを開催。ここまで登って来るとパレード用の衣装も手に入るので、アイテムのコンプリートを目指している人はお忘れなく)
万博の雰囲気を味わいたい人にも、会場の下見をしたい人にも
180以上のパビリオンがあるリアル万博に対して、バーチャル万博のパビリオン数は全部で110。さすがに完全再現とまではいかないが、むしろ「あの広い会場を、よくぞここまで再現しようと思いましたね!?」というのが率直な感想だ。アバターを操作してバーチャル万博を歩けば歩くほど、本当にリアルの会場そのままで驚かされた。
アプリの操作性については、スマートフォンでの利用に最適化されている印象を受けた。本記事のスクリーンショットは主にPC版のものを掲載しているが、視点の動きが大ぶりなため、人によっては画面酔いしやすいかもしれない。実際、筆者は酔った。
VR版では酔わないように調整がされていたが、手を動かしたり写真を撮れたりするわけではないので、あえてVRで入るメリットはそこまでないように思う。もちろん、没入感はそれなりにあるし、VRで入ったことで「本当にリアル万博の会場と同じだ……!」とより強く実感できた一面はあるので、VR環境がある人は一度入ってみてほしい。
(スマートフォン版でスクショを撮るとこんな感じ。使用端末はPixel 7a)
また、同じ空間に入れる人数の上限はエリアごとに設定されており、セッションIDを共有すれば友達と一緒に遊ぶこともできる。最初に入った「歓迎の島」では常に30~50人が出入りしていたが、動作が重くなる場面は一切なく、快適に遊べていたことも付記しておく。
このバーチャル万博に関して言えば、アプリ単体で見ても魅力的だと感じた。とにかくコンテンツ量が多く、友達と遊ぶこともでき、遊びながら万博について知ることができる。万博に行かない人も雰囲気を味わえるし、行く予定がある人は予習や下見をするように使えるのも嬉しいポイントだ。
遊び方は人それぞれだが、一度にまとめて会場内を巡るのではなく、スキマ時間に気になるパビリオンを覗いてみるのもいいかもしれない。筆者自身、達成率が表示される「パビリオン図鑑」を埋めたい気持ちになっているので、気ままにアクセスして楽しもうと思う。
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