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VR体験施設 2025.04.18

その場にいないはずのPerfumeが“いた” 「IOWN」による3D空間伝送技術による3Dライブを体感【大阪・関西万博2025】

音楽ライブは、会場に行かなければ体験できない。

もちろん、オンライン配信が当たり前になった現代においては、自宅にいながらにして好きなアーティストのライブを見ることもできる。コメントを投稿しながら盛り上がれるのはオンラインならではの楽しみでもあるし、リアルタイムで見られなければ、後でアーカイブを視聴する選択肢もある。

ただし、ライブ会場と自宅、それぞれで得られる「ライブ体験」は別物だ。

自宅には一緒に声を出す観客はいない。大音響を放つスピーカーもない。会場に渦巻く熱気を感じ取ることもできない。「それが良い」という人も、中にはいるだろう。そのような価値観も否定しないが、それでもやはり、臨場感のある音楽ライブを「現地」で体感したい人も多いはずだ。だがそのためには、決められた時間、決められた場所に足を運ばなければならない。

つまるところ、音楽ライブは一回性の強い体験である。「映像」として記録することはできても、「空間」そのものを保存することはできない。ライブビューイングやオンライン配信といった映像以外の手段では、現地のライブ体験を別の場所へと伝えることはできない。

しかし、それが部分的にでも可能になるとしたら――?

今回取り上げるのは、そんな「空間のリアルタイム伝送」と「ライブの追体験」を実現しようとした、NTTの技術展示だ。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のNTTパビリオンで体験できる3つのコンテンツを紹介しつつ、特に「IOWN×Perfume」のライブ体験をレポートする。

3つのエリアで最新の通信技術を展示! NTTパビリオンのツアーを体験

NTTパビリオンの体験テーマは、「PARALLEL TRAVEL」。

次世代情報通信基盤「IOWN」(参考リンク)による空間伝送技術を主軸とした、離れた場所と空間そのものを繋いだエンターテイメント体験を味わえる。3つの建物を巡るツアー形式の体験となっており、最大70名が一度に参加可能だ(体験時間は約20分)。


最初に入るZone1の建物では、通信技術とコミュニケーションの進化をテーマにした映像が上映される。

美術館のように展示されているのは、人類の歴史上で活躍してきた通信技術の数々。手紙、モールス信号送信機、ダイヤル式電話、スマートフォンなどが並んでおり、その背後の壁面ディスプレイ上の演出に合わせて、次々にスポットライトが当てられていく。通信機の実物と音が連動した演出と、大きな壁面ディスプレイを使った映像は見ごたえがある。

続くZone2では、IOWNによる3D空間伝送技術を活用した、Perfumeの3Dライブを追体験できる。

端的に言えば「映画館でも使われるような立体視用の3Dメガネを装着して見るライブ映像」なのだが、驚くべきはその臨場感だ。この映像は事前に収録したものであり、YouTubeでもアーカイブが公開されている。それだけならただのライブ映像に過ぎないのだが、Zone2ではこのライブの“追体験”ができ、目の前でPerfumeの3人が踊っているように感じられたのだ。詳しくは後述する。

最後のZone3で待ち受けているのは、バーチャル世界のもう1人の自分「Another Me」との出会いだ。

建物に入った来場者は、まず入口のカメラで全身を撮影する。すると、撮影した写真が周囲の壁面ディスプレイに投影される。全員分の撮影が終わると、映像演出がスタート。来場者たちが「Another Me」として動き出し、踊ったり歌ったり、生き生きと動く姿を見せてくれる。人によっては若干の忌避感を覚える光景かもしれないが、1枚の写真データを元にしたAnother Meたちがほぼ違和感なく動き回る姿は、見ていておもしろかった。

時間と場所を超えた、ライブパフォーマンスの追体験

3つのエリアでそれぞれ異なる体験ができたNTTパビリオンだが、特筆すべきは、やはりPerfumeのライブパフォーマンスだろう。

前提として、体験で使われているライブ映像は事前に収録したものだ。吹田市の万博記念公園で4月2日に収録が行われ、その様子は生配信もされていた。その配信のアーカイブは、現在もPerfumeのYouTubeチャンネルで公開されている。つまり、万博会場に行かなくても、Perfumeのライブ映像は手元のスマートフォンでも見ることができるのだ。

では、この展示のいったい何がすごいのか。一口に言えば、それは「時間と場所を超えた、ライブパフォーマンスの追体験」にある。ライブ会場にいるわけではないし、リアルタイムでパフォーマンスを見ているわけでもない。にもかかわらず、「目の前でアーティストが歌って踊っているようなライブ体験ができる」こと。それが、このZone2の体験の肝だ。

臨場感は「足元」から伝わる

実際の体験でまず驚いたのが、床の振動だ。YouTubeで公開中のアーカイブ映像で言えば、オープニング演出が終わった直後の2:47あたりを見てみてほしい。

薄暗いステージ上に立つPerfumeの3人が、足音を響かせながらステージを前後に移動し、ステップを刻むシーン。映像で見るとなんでもない一幕だが、パビリオン内ではこの足音が響くと同時に、来場者たちが立っている床がまったく同じタイミングで振動する。

もちろん、一般的な音楽ライブでは、「床」はそんなに振動するものではない。「床が揺れたくらいで、そんなにリアルに感じられるのか?」と首を傾げる人もいるかもしれないが、不思議なことに、筆者の体感では「ライブっぽい」と感じられていた。「ライブハウスのスピーカーが放つ大音響によって身体がビリビリさせられる感覚を、足元の振動で再現している」ようなイメージだろうか。

「目の前で踊る3人の姿」「ステージ(の映像)から響く足音」「足音と寸分違わないタイミングで振動する床」の3つの要素が違和感なく合わさることで生まれる、まるで生のライブであるかのような臨場感。強弱や位置関係まで感じられるほど繊細な「揺れ」の表現は、「そこにPerfumeの3人がいる」と錯覚するようなリアリティを伴っていた。

「ちょっと立体的に見える3Dメガネ」がもたらす、生のライブっぽさ

「目の前で歌って踊っているようなライブ体験」を形作っていた要素は、当然振動だけではない。

よく見れば、Perfumeの3人が立っている格子模様のステージと繋がるようなデザインが天井や壁面には施されていたほか、来場者たちが立っている場所も、全体的にライブハウスのフロアのよう。空間を丸ごと使って、「ライブ」に相応しい雰囲気が醸成されていた。

意外性があっておもしろかったのが、Zone2に入る時に手渡される3Dメガネだ。万博会場では最新のXRデバイスを使っているパビリオンやブースも多かったため、何の変哲もない3Dメガネが出てきた時はちょっとした驚きがあった。しかもこの3Dメガネの存在こそが、意外にもこのライブ体験の“生っぽさ”に一役買っていたのだ。

と言っても、技術的に何か高度なことをやっていたわけではない。3Dメガネ自体は映画館などでもよく見るもので、実際の体験も「映像がちょっと立体的に見える」程度のものだった。

しかし、その「ちょっと立体的に見える」が馬鹿にできない。ライブのようなフロア、ライブのような音響、ライブのような振動、そしてライブのような照明が施されている空間で、3Dメガネによって「ちょっと立体的に見えるライブ映像」を目の当たりにすると、どのような印象を受けるか。これが、想像以上に生のライブっぽく見えるのだ。

視覚的な臨場感や没入感を重視するのであれば、たしかにXRデバイスは有効だ。だが、没入するほどのリアリティ体験ができるヘッドセットは、どうしても「頭に装着している」という感覚が強い。普段からVRに慣れている人でもないかぎり、重量と圧迫感のあるヘッドセットは、“生のライブっぽさ”の妨げとなってしまうのだ。

そこで、3Dメガネである。

メガネなら多くの人にとって身近な存在だし、何と言っても軽い。「そこにいる」という実在感はVRに及ばないが、それでもちゃんと立体的には見える。音響や振動で“生のライブっぽさ”を演出しつつ、視覚面では、体験を損なわないように3Dメガネを採用する。最新技術と身近なツールの、絶妙なタッグ。ライブ映像としての画作りとカメラワーク、音響と空間演出のどれもが高品質だったからこそ、「気軽に装着できる3Dメガネを使った立体演出」が効果的に働いていたように思う。

誰にでもおすすめできる、少し先の未来にあるかもしれないライブ体験

ここまで、パビリオンでの実際の体験にフォーカスしてZone2の内容を見てきたが、技術的な説明に目を通してみると、このライブ体験を実現するまでの過程も興味深い。

映像の元となる、万博記念公園で2日に実施されたライブでは、20数台ものセンサーやカメラをステージに設置。それらの機材によって、Perfumeのパフォーマンスと振動を含めたステージ全体の空間を数メートル四方単位で計測し、その情報を夢洲に伝送している。伝送先のパビリオンの建物内には、位置情報を含む振動データを再現するために、百数十個の振動子が床に埋め込まれているそうだ。

また、ライブ映像を見ると、Perfumeの3人が3DCGで描写されたり、リアルとバーチャルの2つの空間を行き来しながらカメラが自由自在に飛び回ったりしていることがわかる。これは、ステージで計測・撮影された膨大な3次元の点群データと画像データを組み合わせたうえで、リアルタイムで3Dデータを高解像度化するNTTの独自技術を用いているとのこと。

生身の人間の動きをリアルタイムで3Dデータ化し、自由な角度から描写する技術は、すでにスポーツ中継などでも広く活用されている。しかしそれにしても、今回のPerfumeのライブ映像の解像度の高さと滑らかさは特筆すべきポイントだと言えるだろう。

技術面の話も含め長々と書いてきたが、「Perfumeのライブを間近で見たような体験ができた!」というのが、純粋な感想でもある。また、余談だが、パビリオンのスタッフリストを見ると本当に大勢のクリエイターや技術者が関わっていることがわかるが、『フォートナイト』のマップ制作などで有名なヤノスさんもCGアーティストとして携わっているそうだ。

小難しいことは抜きにして体験型コンテンツを楽しめるのが、このNTTパビリオンの、そして万博の魅力でもある。Perfumeファン必見なのはもちろんのこと、「圧倒的な臨場感でライブ映像を味わえる」という点では、誰にでもおすすめできる体験だ。Perfumeが好きな人も、詳しくは知らないという人も、少しでも気になった人はぜひチェックしてみてほしい。

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