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VR体験施設 2025.04.23

大阪・関西万博の「モンスターハンターブリッジ」に新型ARデバイスが登場 体験して分かった圧倒的な臨場感

最新作『モンスターハンターワイルズ』が2月に発売され、今まさに盛り上がりを見せている『モンスターハンター』シリーズ。ゲーム本編のみならずグッズ展開なども日々話題になっているが、それとは別に、最近注目を集めている『モンハン』がある。

それが、大阪・関西万博で体験できる『モンスターハンター ブリッジ』だ。

「『モンハン』の世界に入ったかのような体験ができる!」と開催前から話題になっていたが、実際に現地で体験してみて驚いた。見慣れたヘッドセットやXRデバイスではなく、なんと専用のARデバイスを使っていたのだ。今回はこの『モンスターハンター ブリッジ』で使われているARデバイスについて、体験の感想も交えながら紹介する。

XR体験ができるパビリオンでは「Meta Quest 3」が定番

今回の大阪・関西万博において、XR技術を用いた体験ができる場所は少なくない。

シグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」やガスパビリオンでヘッドセットを使った体験がメインに据えられているほか、大阪ヘルスケアパビリオン内では、森永乳業などいくつかのブースでXR体験ができる。一口に「XR」と言ってもそれぞれにまったく異なる体験ができたので、気になる人は下記記事を読んでみてほしい。

これらのパビリオンの共通点としては、いずれも「Meta Quest 3を使っている」ことが挙げられる。ヘッドセット単体で起動し、没入感の高いVR映像を見せることもできれば、現実空間に3DCGを重ねるAR表現もお手の物。XR初体験の人でも比較的扱いやすいデバイスであるため、多くのパビリオンで採用されているのも当然と言えば当然だろう。

しかしそんななか、独自のデバイスを用いた体験を提供しているブースがあった。それが、『モンスターハンター ブリッジ』である。使っていたのは、市販のヘッドセットや法人向けのハイエンドモデルではなく、独自開発の専用デバイス(名称不明)だ。

『モンスターハンター ブリッジ』のために開発された、専用のARデバイス

それが、このデバイスだ。

公式サイトの説明によると、「対角105度の広い視野角が特徴となる専用のデバイス」であり、「大阪・関西万博で得られる最高の体験を」という目標のもと、この『モンスターハンター ブリッジ』のために開発されたものらしい。

特徴としてはまず、「メガネ型」に近いデバイスである点が挙げられる。形状は、マイクロソフトのMRデバイス「HoloLens 2」に近いだろうか。一般的なVRヘッドセットのように視界をすっぽりと覆うのではなく、「両目の前にディスプレイが垂れ下がっている」ようなイメージだ。おでこと後頭部のパーツで本体を支えるという構成は、Meta社の業務用MRデバイス「Meta Quest Pro」とも共通している。


目元が完全に覆われているわけではないので、視線を下に向けると肉眼で床が見える。一般的なVRヘッドセットと比較すると、圧迫感もあまり感じられない。

しっかりと頭部に“装着”しなければならないVRヘッドセットに対して、こちらは“かぶる”という表現のほうが近そうだ。目元への圧迫感が強い前者を「水中ゴーグル」にたとえるなら、このデバイスは「帽子をかぶる」ようなイメージだろうか。後頭部の部分にあるダイヤルを回して固定するのだが、強めに締めても頭が痛くなるようなことはなかった。

とはいえ、さすがに帽子ほど軽くはなく、重量感はそれなりにある。長時間かぶっていたらまた違った感想を持っていたかもしれないが、今回の体験は10分程度。「重さ」が気になるシーンはなく、体験中はホール内を足取り軽く歩き回る余裕もあり、最後まで不快感を覚えることはなかった。視力の悪いメガネユーザーとしては、メガネをかけたまま快適に使えるのも嬉しいポイントだ。

肝心のディスプレイ部分は、レンズ越しに見える現実の景色と、バーチャルなオブジェクトが重ね合わさったかたちで表示される「光学シースルー型」の方式だったように思う。MRヘッドセットのMeta Quest 3のようにカメラで取り込んだ現実の景色を映像として再現する方式とは異なっていたはずだ。

視覚・聴覚・触覚からのフィードバックが合わさることで感じられる、圧倒的な臨場感


では、このARデバイスを使った実際の体験はどうだったのか。

会場となるのは、大阪ヘルスケアパビリオンの裏手にある「XD HALL」。床にはプロジェクターを、天井と壁面にはシースルーLEDを使った円筒形状の360度シアターとなっており、高解像度の映像を全面に映し出すことができる。こうして写真で見ればまだ「映像」であることがわかるが、体験中は本当に草原にいるかのような臨場感があった。

一方のARデバイス上では、その空間を行き交うモンスターとエフェクトが投影される。特にモンスターについては、「ARデバイス本体のディスプレイ上に投影されたモンスターが、目の前で立体的に動いているのがわかる」だけでなく、「ARデバイスを通すことで、LED上の草原にモンスターの姿が重なって、実際にその場所にいるように見える」という、2つの方法で投影されていた。

背景の映像に重ねる形でモンスターを投影するため、位置によっては空間とのズレが感じられたり、動き回ると描画がブレたりしてもおかしくなさそうだが、最初から最後までそのような違和感はなかった。それどころか、今こうして振り返るまで、「そういえば、モンスターがすごく自然に見えていたな……」と気づけなかったほどである。「違和感がない」どころか、「見え方を意識させない」ほどの自然な表現だった。

ARデバイスを使った体験の中でおもしろかったのが、周囲を飛び回っている回復ミツムシを触る体験だ。

この草原エリアの場面では、回復ミツムシが抱えている「蜜」の部分をたぷたぷと触ることができ、しばらく触っていると破裂する。これが不思議なもので、手にコントローラーを持っているわけでもなく、実際には空気を撫でているだけのはずなのだが、不思議と水風船を突いているような感覚があったのだ。蜜が飛び散る音と演出にもリアリティがあり、自分含め「わっ!」と驚き声をあげている人も少なくなかった。

この「音」もまた、特筆すべきポイントの1つだろう。

おそらく、草原の環境音は壁面のLEDの後ろに設置されているスピーカーから、モンスターが発する音や演出の効果音はかぶっているデバイスから、それぞれ聞こえていたのではないかと思う。特にARデバイスから発せられる音に関しては、3次元空間の「位置」まで反映した立体音響になっていたはずだ。草原を飛び回るモンスターの羽音が、ただ耳元で再生されているのではなく、「飛んでいるモンスターの位置」から聞こえている。そんな音だった。

ARデバイスの話からは若干逸れるが、この『モンスターハンター ブリッジ』ならではの体験として、やはり「床振動」の要素は外せない。

飛んできたリオレウスが着地した瞬間、轟音が鳴り響くと共に小石が飛び散り、実際に足元が揺れる。目の前の巨竜の動きと咆哮、床の振動が違和感なく連動していて、凄まじい迫力だった。視覚・聴覚・触覚で感じるそれぞれの演出の臨場感が高く、しかもそのすべてがシンクロしているからこそ得られる、迫力と没入体験。こればかりは、自宅では味わえない。

また、筆者の記憶違いでなければ、来場者一人ひとりの視界に映る映像と耳元で響く音を連動させるだけではなく、デバイス同士でも情報をリアルタイムに同期していたはずだ。他の来場者が回復ミツムシの蜜を割ったり、リオレウスに石を投げたりしている様子が、自分の目からも見えていたと記憶している。各々が自分の視界に映るものを楽しむのではなく、その場にいる全員で「『モンハン』の世界に入る」ことができる、とても稀有な体験だった。

「『モンハン』の世界に入る体験」を実現する手段の1つとして開発された、専用ARデバイス

本記事ではARデバイスに着目して『モンスターハンター ブリッジ』について紹介してきたが、「『モンハン』の世界に入る」という体験を形作っているのは、このデバイスだけの力ではない。

この没入体験を実現しているのは、360度の高解像度スクリーン、空間全体を使った立体音響システム、そして床の振動といった、XD HALL内のあらゆる要素が融合した掛け合わせだ。

ARデバイス単体でも回復ミツムシを触る体験はできそうだが、「いろいろなモンスターが暮らす草原の中で回復ミツムシを触る」という、その世界に入り込んでいるかのような体験は、おそらくあのXD HALLでしかできないだろう。

そもそもが「『モンスターハンター ブリッジ』のための専用デバイス」として開発されたものなので、今後、万博会場以外で体験できる機会があるとは限らない。現時点では世界でここでしかできない体験なので、気になった人はぜひ期間中に足を運んでみてほしい(※体験は完全予約制)。

ちなみに、今回取り上げたのはメディア向けのデモ版の内容であり、実際は他にもいろいろな体験ができるそうだ。SNSで検索すると、「予想外の展開があった」「まさか泣くとは思わなかった」という、『モンハン』ファンからのアツい感想も見受けられる。筆者もアイルーと交流できなかったのが心残りなので、機会があれば再訪したい。

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