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業界動向 2018.12.17

「施設型VRはさらに伸びる」大手VRゲームスタジオが明かした可能性

数々のVRゲームを制作してきたスタジオSurvios社は、同社が推し進める自宅の外で体験するOOH(アウトオブホーム)ビジネスについて最新の見識を発表しました。この分野では、直近18か月にわたって成長率が飛躍的に伸びており、注目を集めています。

ロケーションベースVRの2つのカテゴリー

コンシューマ向けVR施設においては、いまだ爆発的な成長は見られないものの、2018年は、事業分野と商業分野におけるVRへの関心が高まっています。

商業施設向けのロケーションベースVRエンターテインメント(LBE)は、大きく2つのカテゴリーに分類されます。1つめのカテゴリーは「VRアトラクション」です。The VOIDが展開する施設型VR体験のように、家庭では到底再現できない規模や高額な機器を使用し、今までにない新しいVR体験できます。もう1つのカテゴリーは「VRアーケード」です。どちらかというとコンシューマレベルのハードウェアとソフトウェアが使用されており、利用回数によって利用料金を支払うタイプとなっています。

VRアーケードを展開するSurvios

今までにSurviosは、VRレースゲームの「Sprint Vector」(2018)や、VRボクシングゲームの「Creed: Rise to Glory」(2018)など家庭用VRゲームを数多く開発してきました。同時に、ここ数年かけてVRアーケード分野も参入し、事業を拡大しています。同社はロサンゼルスにあるVRアーケード施設を運営するかたわら、自社コンテンツを他社のVRアーケードへ提供するライセンス販売も行っており、サードパーティーのコンテンツ配信会社のような役割も担っています。

データから見るVRアーケードの可能性

先週サンフランシスコで行われたVRカンファレンスイベントのVRXにて、Survios社マーケティング共同責任者のハンター・キタガワ氏が登壇し、同社がLBE VRを展開して発見したことや、同社の年間成長率について発表しました。

2017年のSuurvios社が展開するVRアーケードは、36か国200か所でしたが、2019年は42か国500か所となっています。コンテンツライセンスに関していえば、昨年2,000件だったのに対し、現在は12,000件に増加しました。同社は中国においては、巨大テック企業NetEaseとのジョイントベンチャーを設立し、中国国内でのVRコンテンツを運営していくことを公表しています。提示された数字は、中国での業績を含まない数値となる、とキタガワ氏は話しています。

Survios社は、2019年にかけても同社のVRアーケードビジネスが成長することを見込んでおり、業界トレンドも上昇気味になることを示唆しています。

幅広いユーザー層の獲得

キタガワ氏はスライドで、VRアーケード分野が成長する過程のバリューチェーンを映し出し「ゲーム開発者」、「アーケードプラットフォーム」、「VRアーケードチェーン」、「消費者」と分類しています。その中で、それぞれ主要な企業に注目しており「ゲーム開発者」には、Surviosに加え、Vertigo Games、Beat Games、Big Boxを取り上げています。また、「アーケードプラットフォーム」にはSpringboardVRとSynthesis VR、Private Label VRを、「VRアーケードチェーン」にはCtrl VとJunkies、MontVRを分野のトップとして位置づけています。

Surviosは、VRアーケードへ行き利用料を払う有料ユーザーの人口統計にも着目しています。男女比60対40という比率は、男性ユーザーに偏りがちな家庭用VRと比べて、バランスの取れた割合となっていると分析しています。キタガワ氏の説明によると、SurviosのVRアーケードのユーザーのうち80%が35歳以下とのこと。また、ユーザーの66%はマルチプレイのコンテンツを好み、ユーザーの33%は、誕生日や会社イベントでVRアーケードに来る「パーティー」集団に分類されています。

またキタガワ氏は、同社の家庭用コンテンツと比較して、VRアーケードビジネスは、ユーザーへのリーチ数が10倍以上となっていることを発表しました。スケールの可能性においては、米国内でメジャーなアーケードゲームの施設を展開するChuck E. Cheese’sとDave&Buster;’sと比較し、それぞれ約600か所、約110か所で展開していることに対し、VRアーケードは約1,500か所に設置されていると述べており、ポテンシャルが高いことを主張しました。

体験することのその先を共有するマーケティング

コンテンツのパフォーマンスに関してキタガワ氏の見解は「プレイヤーを引き込むためには、30秒あるかないかです。」と語り、いくつか気付いたことについて述べています。多くの場合、プレイヤーのセッションは30分ほどしか続かず、ユーザーが再訪するには、すぐにゲームを開始できることが重要になるとのことです。

また同氏は、より多くのユーザーを集めるために、ゲーム開発者とVRアーケードはしっかりとPR戦略を練ることが必要だと話しています。映画「ロッキー」シリーズの作品である「クリード」をテーマにしたSurviosのVRゲーム「Creed: Rise to Glory」では、ユーザーがクリードの世界の一部となってゲームを体験することをアピールしたことで、VRヘッドセットの映像を流す一般的なアプローチよりも、より強力なマーケティングメッセージとなったと説明しています。「VRであることをウリにしてはいけない」と主張しています。

(参考)Road to VR
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