VR空間で多人数のコミュニケーションが取れるソーシャルVR。様々なアプリが出ている中で、また一つ大きなコミュニティ形成を狙うサービスが登場しました。イギリス発の「Sinespace」です。
Oculus RiftやHTC Viveに対応
「Sinespace」は、まだソーシャルネットワークサービスの巨大市場、米国には大きなインパクトを与えていません。
Sinespaceの創設者の1人Adam Frisby氏は、このアプリを「開発者のためのバーチャル世界のプラットフォーム」だとしています。ユーザーはバーチャル空間で、ゲームやイベントの開催、街づくりなどを行うことができます。
現在Sinespaceの月間アクティブユーザー数は約1万人。PCブラウザを使うユーザーもおり、VRヘッドセットを使って利用しているユーザーは10%程度と言われています。Oculus RiftとHTC Viveがメインのデバイスです。
アプリは基本的に3人称の視点ですが、VRヘッドセットを使うと1人称の視点で体験できます。
Flying wild and free in the Ethereal region during a Story Circle Gathering. We discovered many mysteries and the expansive freedom for creative expression in space. Join us and visit these beautiful worlds!https://t.co/trxyybahPO pic.twitter.com/TRE72cpvPb
— sinespace (@sinewavespace) 2018年6月24日
ユーザー間のやり取りでマネタイズ可能
このアプリの特徴として、運営会社もユーザーもマネタイズを行っていることが挙げられます。Sinespaceの滞在時間は1回あたり平均2時間、ユーザーの月ごとの使用額は約17ドル(約1,900円)ということです。
Frisby氏自身は、バーチャル空間の先駆け「セカンドライフ」で2つのビジネスを起こし、多額の利益を上げる成功を収めた実績があります。同氏によれば、「(Sinespaceは)セカンドライフをベースにし、更に機能を追加している」ということです。
Sinespace内のコンテンツの大半は、ユーザー自身が制作します。制作したコンテンツは、UnrealやUnityといった他のプラットフォームでの利用も可能です。コンテンツから得られる収益は、7割がクリエーター、3割がSinespaceの取り分となります。
Sinespaceで服や乗り物、建物といったアイテムを購入できる点も、セカンドライフの仕組みとよく似ています。このグッズの売り上げで月に何百ドルも稼ぐクリエーターもおり、ユーザー数が拡大すればさらに金額は伸びると見られます。
またSinespace独自の特徴として、ウェブカメラを使ってユーザーの顔の動きをアバターで再現する技術も採用しています。残念ながらVRユーザーはこの機能は利用できませんが、将来的にはVRユーザーも含めて更にインターフェースの改善を図るとしています。
セカンドライフを越えるのか
Sinespaceを他のソーシャルVRと比べて特筆すべき点は、やはりそのマネタイズ方法にあると言えます。運営側が利益を上げるだけでなく、ユーザー間のやり取りによって個人が利益を上げる。これは、セカンドライフのやり方と同じです。
現在SinespaceをVRで体験するには、ハイエンドのPC向けヘッドセットが必要です。米メディアUpload VRによれば、今後はOculus Go、Gear VR、Daydream等への対応が予定されているとのこと。
かつてセカンドライフを開発した企業であるリンデン・ラボ社自体も、現在ソーシャルVR「Sansar」のベータ版を提供しています。また、セカンドライフの創設者であるフィリップ・ローズデール氏は自身で立ち上げたスタートアップで「High Fidelity」というソーシャルVRサービスを作りました。
ソーシャルVRでは、2017年末から盛り上がりを見せた「VRChat」が最も成長しています。Sinespaceが他のソーシャルVRをしのぐ存在となるのか、今後の拡大が注目されます。