2025年3月末でサービスが終了した、NTTコノキューのメタバースプラットフォーム「DOOR」。その後、5月28日に株式会社リプロネクストへ事業譲渡され、7月9日には新名称「Roomiq(ルーミック)」として再スタートしています。

事業を引き継いだリプロネクストは「XRとメタバースで社会課題を解決する」を掲げ、法人向けメタバース開発やデジタルマーケティング、AIコミュニケーションを手がける企業です。同社は以前からDOORを活用してきましたが、なぜ自社プラットフォームとして迎え入れる決断をしたのでしょうか。代表取締役の藤田献児さんにその経緯を伺いました。
実は300万人超のユーザー基盤を持っていた
メタバースといえば、B2C向けのコミュニケーションサービス「VRChat」や「cluster」、ゲームUGCの「Roblox」や「フォートナイト」がよく知られています。一方、NTTコノキューが提供してきた「DOOR」はニュースに取り上げられる機会が少なく、一般的な認知度は高くありません。
ところが藤田氏によると、DOORには延べ300万人超のユーザーと、21万を超えるルーム(ワールド)が存在していました。大々的なプロモーションこそ行われなかったものの、ブラウザだけで利用でき、PC・スマートフォンともアプリ不要という圧倒的なアクセシビリティが、この規模のユーザー基盤を生み出したのです。
DOORでコンテンツ開発を手がけてきたリプロネクストにとって、サービス終了はクライアントや現場を直撃します。同社は他ユーザーの困惑する声も受け、プラットフォーム存続に向けて動きました。
藤田:DOORはアプリが不要で、PCやスマートフォンのブラウザからすぐ体験できます。比較的スペックの低いデバイスでもサクサク動く点が大きな魅力でした。もしサービスがなくなれば、ただでさえ追い風とは言えないメタバース市場で、利用ハードルがさらに上がると感じたのです。
リプロネクストは2024年に自社プラットフォームの開発に着手しましたが、コストと期間の課題から一時停止。そのさなかにDOOR事業の譲受へと踏み切りました。
自治体の各部署が抱えていた課題の解決に役立つ
リプロネクストは、これまでDOORをどのような案件で活用してきたのかとお聞きすると、「主に自治体案件で、広報活動や地域物産の展示会、婚活、教育など、本当に多岐にわたる用途で活用してきました」。象徴的な事例として挙げられたのが、山梨県甲府市との連携です。2023年10月10日、同市は日本で初めてDOORを利用したひきこもり相談窓口を開設しましたが、その制作に携わったのがリプロネクストです。
藤田:甲府市様は、当事者へ直接支援が届きにくいという課題を抱えていました。アバターを介することで当事者が相談しやすくなるのではと考え、メタバース上に窓口を設けたのです。自治体が主体となって運用するメタバース相談窓口は全国初でしたが、相談を契機に外出につながるケースも生まれています。
教育分野でも同様にメタバースの効果を実感しているそうです。
藤田:学校ではほとんど発言しなかった子どもが、メタバース空間に入った瞬間に積極的に発言し始める。そんな変化を何度も目の当たりにしました。
岩手県との取り組みでは、農業の後継者不足を解消するマッチングイベントをDOOR上で開催し、実際に移住者が誕生しました。また同県の食のオンライン展示会もDOORで実施。味覚体験が重要な分野だけに、実食ありきのリアル展示会でなければ成果を期待しづらいのではないかと感じますが、結果は想定を超えていました。
藤田:リアルの飲食展示会はおいしいものしか並ばないので、品質に間違いはありません。ただ、バイヤーや飲食店は、にんじん一本であってもストーリーを重視します。どこで、誰が、どんな思いで作っているのかを先に知りたいのです。生産者の思いに共感すれば、バイヤーは日本全国どこへでも足を運びます。その最初の接点としてメタバースは十分に機能しています。
静岡県のケースも興味深いものがあります。広報目的でDOORを導入したところ、担当者がDOORの利便性に感銘を受け、すぐさま他部署に紹介。婚活イベントなど横展開が進んだそうです。扱いやすさと導入ハードルの低さ、そしてアバターによるフラットなコミュニケーションが、社内にエバンジェリストを生み、プロジェクトを自走的に拡大させた事例となりました。
こうした実績は自治体全体に広がっているのでしょう。NTTコノキューが保有していたデータによれば、DOORの自治体採用実績は38都道府県・約180件とのこと。メタバース活用の裾野は、想像以上に広がっていることがわかります。
全体を把握してから戦略を立てていく
実は高い人気を誇っていたDOORは、Roomiqとリブランドされ再出発することになりました。今後、リプロネクストはRoomiqをどのように展開していくのでしょうか。

藤田:DOORの基本思想に基づき、プラットフォームとして広く運⽤していく⽅向で考えています。⾃社だけではなく、各⽅⾯の利⽤者に使っていただける形を重視しています。
マネタイズに関してはまだ不透明なところがある……というよりか、まだすべての資料を確認しきれていないというのが現状とのこと。ゆえに基本システムは来年3月末まで維持しつつ、来年4月以降に刷新するかどうかも含めて戦略を立てていくといいます。
藤田:これからは従来のお客さまだけではなく、DOORを活用していた他のユーザー様とも対話していきます。そして要望に応じた機能を新たに開発し、有料オプションとして提供していく予定です。
公式サイトはこちら:https://roomiq.jp/

