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メタバース 2022.08.23

「Roblox」でプログラミング教育を。「ゲーム版YouTube」がつなぐ開発者・クリエイターへの道

いわゆる「Z世代」に圧倒的な人気を誇る、オンラインゲームプラットフォームRoblox(ロブロックス)。子どもたちが自らゲームを作れるほか、手軽にゲームを遊ぶこともでき、日間ユーザー数(DAU)は5,400万人を突破(Statista調べ)。さらに「Roblox」は、ICT教育の分野でも「教育効果が高いツール」として注目を集めています。

今回は、2020年からRobloxをプログラミング教材として取り入れている「D-SCHOOL」に取材。D-SCHOOLを運営するエデュケーショナル・デザイン株式会社代表の脇田真太郎氏と、エンジニアの今澄亮太氏に、Robloxを使ったプログラミング教育について教えていただきました。


(画像: Roblox Blog

「本格的なテキストプログラミング」とのギャップを埋める

Robloxは海外で圧倒的な人気を得ていますが、日本ではまだ知名度が低め。プログラミング教材としても使われるゲームとしては、「マインクラフト」等の方が幅広くプレイされています。では、なぜD-SCHOOLはRobloxをプログラミング教材に選んだのでしょうか。

脇田氏は「ビジュアルプログラミングを学んだ小学生が増え、次のステップとなるカリキュラムを求める声が増えてきたこと」を理由に挙げました。一昔前であればプログラミング言語のPython(プログラミング言語の1つ)などを教えるケースが多くありましたが、これについては「カリキュラムによってはいきなり実務や業務っぽい内容になってしまいがちで、興味が続かず『自分にプログラミングは合わないんじゃないか』とネガティブに感じる子どもが多かったんです。そこで、ゲームを作りながら、テキストプログラミングの基礎を楽しく学べるRobloxを選びました」と語ります。

たしかに、日本の教育現場で使われているカリキュラムは、命令のブロック(ノード)を並べたりつなげたりする「ビジュアルプログラミング」を採用しているものが中心です。D-SCHOOLも、マインクラフトをベースにビジュアルプログラミングが学べる「マイクラッチ」コースを開設しています。

新たに加わったRobloxコースは、小学校高学年以降を主に想定。他のコースでビジュアルプログラミングを学んだ子供たちを対象としています。「ビジュアルプログラミングと本格的なテキストプログラミングとの橋渡し」を担っているわけです。


(画像: D-SCHOOL

プログラミングスクールの運営という視点から見ても、PythonやJavaにすぐ移行するよりも、Robloxを経由した方が継続率は高くなりそうです。すぐに結果が分かるため、子どもたちにも想像しやすく飽きずに続けて学べる。そしてRobloxはプレイヤーやクリエイターも数多く、参考にできるYouTube動画が多いというメリットもあります。

脇田氏によれば、5年ほど前にベトナムやインドネシア、シンガポール等に行った際、多くの子どもたちがマインクラフトとRoblox両方をプレイしていたとのこと。当時の日本でRobloxの名前はほとんど聞かなかったものの、日本でのプレイヤー、ひいては「自分でもRobloxのゲームを作りたい」という子どもが増えると予想し、その後2020年からRobloxコースを開始したそうです。

2020年度から小学校における英語教育が必修科目になったとはいえ、もしゲーム内画面が英語表記オンリー、または誤訳だらけの日本語表記では、苦手意識が芽生えかねません。Robloxはこの点もきちんと対応しており、2021年8月4日にはRoblox専用のゲーム制作ソフト「Roblox Studio」が日本語に対応。ゲーム本体も誤訳ゼロというわけではありませんが、かなり「きちんとしている」のもメリットのひとつになりえそうです。


(日本語化されたRoblox Studio。言語設定で日本語・英語・スペイン語・ポルトガル語などを選ぶことができる)

Robloxを用いたプログラミング教育は「自由度の高さ」が魅力

プログラミング教育において、ゲームを作るというエンタメ性を重視しているD-SCHOOL。Roblox Studioで使われるプログラミング言語は、他の言語と比較してどのような特徴があるのか尋ねてみました。

今澄氏によれば、「Roblox Studioで使われているLua言語は、小学生にとっても比較的扱いやすい方だと思います。変数の型がなかったり、他の言語でよく使われる「;」がなかったりと、初心者にとって躓きやすいポイントが少ない印象です」とのこと。「子どもにとっても使いやすい」ことが重要視されています。

また、最初にLua言語から学ぶことで、その後の子どもたちへの影響はあるのでしょうか。今澄氏いわく、「わたし個人の考えですが、テキストプログラミングを学んでいく中で、最初に何のプログラミング言語を学んだのかというのはあまり重要ではないと思っています。子どもたちには、まず『テキストプログラミングではどういう考え方をすればいいか』といった部分を学んでもらうことが大事です」とのこと。

確かに、ビジュアルプログラミングからテキストプログラミングに移る際、なんらかのチェンジは必要です。今後子どもたちがC言語やJavaScript、Swiftなどを勉強したくなったとき、Roblox StudioとLua言語で培ってきた感覚は活かせるのではないでしょうか。脇田氏も、「テキストプログラミングのベース部分を、Robloxのエンターテイメント性を通して楽しく学べるといい、という考え方なんです」と語ります。

さらに、Robloxには、豊富な3DモデルやSE(効果音)といった素材が自由に使えるというメリットもあります。これは子どもたちの関心を集めるという点では決して無視できない要素です。「Robloxが公式に用意した素材や、Robloxクリエイターが作った3Dモデルや効果音を置いていくだけで自分のゲームの世界を作れるんです。子どもたちがそれをLua言語でカスタマイズしていく。Robloxを用いたプログラミング教育は、自由度の高さがポイントになっていると感じます」(今澄氏)。

Roblox Studioからはじまる「クリエイター人生」

Robloxは自分で作ったゲーム(公式には「体験」や「エクスペリエンス」)への入場チケット、つまりゲームへのアクセス権を販売することもできます。こうして得たゲーム内通貨を「リアルマネー」に換金することも可能(※年齢制限等の条件あり)。YouTubeのように、クリエイターが何らかの方法で報酬を得られるプログラムが存在しているのです。

さらにゲームだけでなく、アバター向けの服やアクセサリ、サウンド等を作って販売することも可能。子どもたちも需要や供給、そして流行を見極め、ブランディングを試せる場にもなっています。


(Robloxのアバターショップ。髪型に衣服、靴、アクセサリー、表情パーツなど、クリエイターによるファッションアイテムが並ぶ)

D-SCHOOLではこういった3DCGデザインやサウンド、アート・デザインに興味を持つ子どもたち向けのコースを作る予定はあるのでしょうか。脇田氏は「現状はまだ考えていません。一方で課題を感じているところとして、プログラミング学習における『女の子の少なさ』があるんです。僕たちとしては『性別等に関係なく、いろんな子どもたちがプログラミングをはじめとしたデジタル領域を学んでいける場にしたいよね』と考えています。間口を広げるために、Robloxカリキュラム上にデザイン等を組み込んでいく可能性はありえるかもしれません」「いずれにせよ、『子どもたちが開発者・クリエイターへステップアップするための一歩』にできれば嬉しいです」とコメントしました。

1つのゲームに多数のユーザーが同時ログインして、一緒にわいわいがやがやと楽しめるRoblox。その中には「自分でゲームを作ってみたい」と考える子もいれば、「面白いゲームで遊びたいという」子もいます。D-SCHOOLの取り組みは、前者の「ゲームを作りたい」という子供たちを育てることにつながり、将来的なアプリケーション・ソフトウェア開発者を育成する第一歩となると感じました。

(執筆: 武者良太 / 編集・インタビュアー: 水原由紀 / 取材協力: D-SCHOOL


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