巨大な4Kディスプレイに表示された、無数の光の粒。一度見たことがあるとはいえ、それは筆者も思わず息を呑むほどの圧倒的なビジュアルでした。
「将来的には8Kでもいけるように設計してある」
そう話すのは、エンハンス・ゲームズを率いるクリエイターの水口哲也氏。4Kディスプレイに表示されているパーティクル群は、『Rez Infinite』のものです。
2017年8月10日、プレイヤーのアクションに音と映像・振動がシンクロする”共感覚シューティングアドベンチャー”こと『Rez Infinite』のPC版がリリースされました。
本作は既にPlayStation 4で発売されており、PlayStation VR(PSVR)に対応していましたが、今回はPCへ移植。PC向けのVRヘッドマウントディスプレイ(VRHMD)であるOculus RiftおよびHTC Viveへの対応が行われています。
今回の記事では改めて『Rez Infinite』および”Area X”について紹介するとともに、PC版で変化した箇所を水口氏のコメントとともに紹介していきます。最後には今後の展望も。
Rez Infiniteと”Area X”
2001年にPlayStation 2、ドリームキャスト向けにリリースされたシューティングゲーム『Rez』のリメイク作品、それが『Rez Infinite』です。
初代『Rez』は空間の中で決まったルートを移動しながら敵キャラクターである「ウィルス」を倒していくシューティングゲーム、いわゆるレールシューティングです。敵キャラクター攻撃する際に鳴る効果音がBGMと混ざり合って生み出す独特の感覚や、ワイヤーフレームを基調とした抽象的なアートワークで知られています。
『Rez Infinite』ではオリジナルである『Rez』から引き続き、音楽や映像、リズム、そして手元のコントローラーから来る振動が融合することによって、感覚の混ざり合う”共感覚(シナスタジア)”の体験を実現することを目指しています。
さらに追加された新ステージ「Area X」では表現を一新し、パーティクル(粒子)を中心とした表現に切り替えています。本作はVR”対応”なので、通常のモニターでも遊ぶことは可能ですが、Area XはVRでの体験を前提として作られており、”VRならではの表現”に挑んでいます。
筆者がそんな本作を初めてPSVRで体験したとき、そこには抜群の壮大さと没入感、そして『Rez Infinite』の世界との一体感とでも呼ぶべきものがありました。
演出や展開もさることながら、様々な光・音・リズム・触覚の混ざりあった海にダイブし、それらが光の粒のように弾け、消えてゆく……とは書いてみたものの、この体験を文章や映像だけで表現しきれないことがもどかしいほどです。VRならではの体験、VRでなくてはできない体験と呼ぶにふさわしいでしょう。
(参考記事)
・【PSVR】水口哲也が切り拓く“VRならでは”の新境地 『Rez Infinite』新ステージArea X
『Rez Infinite』はどう”進化”したのか
そんな『Rez Infinite』ですが、PC版になったことでどのような箇所が変わったのか、そしてどのような箇所が”変わらなかった”のか、見ていきたいと思います。
まず大画面4Kディスプレイで『Rez Infinite』のプレイを見ることに。通常ステージの解像度もかなり高いのですが、やはり特筆すべきはArea X。PlayStation4 Pro(PS4 Pro)でも4Kに対応していますが、PC版も思わず見とれてしまうほどの美しさを感じました。実際は4Kもしくはそれ以上の解像度に対応しており、将来的に環境を整えれば8Kでの表現にも対応できるように設計しているとのことです。
続けてはVRでの体験です。筆者は本作を既にPSVR+PS4 Proで体験済み。当日はOculus RiftとHTC Viveの双方で体験しましたが、いずれも素晴らしく魅力的な『Rez Infinite』であることは変わりありませんでした。
さらに、下記の新たに追加された要素により、様々な箇所の利便性やプレイ体験がさらにパワーアップしています。
最初からArea Xが開放
まず、最初からArea Xを遊ぶことができます。PS4版では1時間以上プレイするか、Area 5まで到達することでArea Xが解禁される方式でしたが、PC版ではすぐにArea Xの魅力を味わうことができるようになりました。
ビューモードの追加
その場でプレイを一時停止し、360度全方位を見渡せるビューモードが追加。デフォルトではキーボードのVに割り当てられており、押せば即座にビューモードに移行します。これにより闇に浮かぶ美しいパーティクルやオブジェクトを自由に見たり、印象的なオブジェクトを間近で眺めることも可能です。
各種オプションの追加
PC版には新しいオプションが追加されており、レンダリング解像度やテクスチャの品質、アンチエイリアシングといった、ビジュアルに関する設定の幅が広がりました。プレイヤーごとの環境に応じて最適な体験ができるようになっています。
コントローラー
また、本作はOculus TouchやVive コントローラーのみならず、多数のPC用ゲームパッドや通常のキーボードでもプレイできます。加えて、ゲームパッド・キーボード・マウスのキーバインド設定も可能。所持しているコントローラーの形や種類に応じ、様々なプレイスタイルを選ぶことができます。
ハードな道のりを越えて究極の『Rez』へ
上記のように、本作の魅力は変わらぬまま、PC向けに様々なアップデートが施されています。本作は2017年8月の現段階における、究極の『Rez』と言っていいでしょう。
なお、水口氏曰く、「移植には手こずった」とのこと。ハードウェアや操作方法、そしてVRHMDの種類を変えつつも、様々なスペックに応じて『Rez Infinite』を堪能できるようにするのは簡単なことではないでしょう。操作系やグラフィック表示などの最適化は、ハードな道のりだったことが伺えます。
本作はひとつの到達点であり通過点でもある
時代を超えて、様々なプラットフォームと表現方法で進化し続ける『Rez』。本作『Rez Infinite』はそのひとつの到達点であると言えるでしょう。世界で40以上のアワードでノミネートならびに受賞し、批評家・レビュアーからも軒並み高評価を受けていることも、本作の完成度の高さ、体験の素晴らしさを裏付けています。
しかし、水口氏に「VRで表現したいことは色々とあると思うのですが、本作ではそのうちどれくらいが実現できたと考えていますか?」と質問したところ「未来的に、構想的に……という意味だと30~40点くらいですね」との答えが。
その理由を尋ねてみると、「PCやゲーム機の性能から、開発に使うエンジンまで、その表示能力がもっと欲しいと考えています。シナスタジア(共感覚)の気持ちよさをさらに、もっと上げていきたい。みんなが『どうしてこんなに気持ちいいんだろう?』と思うくらいに。オーディオやビジュアル、体感といったものの連続から来るストーリー体験……あるいは何か、という意味ではまだまだです」とのこと。水口氏の探求・発想・表現は、VRを経てまだまだ続くようです。
本作『Rez Infinite』は、水口氏のクリエイティブが結実したひとつの素晴らしい到達点であるとともに、次なる表現へのステップのひとつでもある、と言えるでしょう。VRという表現手法を通して”進化”してゆく水口氏と『Rez Infinite』の今後に、さらなる期待が高まります。
なお、水口氏に今後の展開について尋ねてみたところ、「DayDream(GoogleのVRプラットフォーム)でも出す予定」といった新情報も。Daydreamはスマートフォン装着タイプのヘッドセットや一体型VRデバイスのための、VRコンテンツのプラットフォームです。
他にも、「日本科学未来館で行ったような、実験的なイベントもやりたいですね。いろいろなVRのありかたを探っていきたい。もちろん、ARやMRもカバーしていきたいと思っています」とのこと。今後の動向に注目です。
タイトル |
Rez Infinite |
パブリッシャー |
|
開発 |
Monstars Inc. and Resonair |
ジャンル |
共感覚シューティングアドベンチャー |
発売日 |
PlayStation 4版:2016年10月13日 |
販売価格 |
PlayStation 4: 3,400円 |
対応デバイス |
PlayStation4: PlayStation VR |
対応コントローラー |
PlayStation VR: PS4 コントローラー/PS Move
Oculus: Oculus Touch/Oculus Remote |
PC版必要スペック |
■デスクトップモード ■フルVRモード ※VRでプレイするには、Intel i5-4590 CPU, 8GB RAM, DirectX 11以上が必要 |
PC版推奨スペック |
■デスクトップモード ■フルVRモード |
レーティング |
CERO A(全年齢対象)/E10+/PEGI 7 |
ストアURL |
Steam: http://store.steampowered.com/app/636450/ |
備考 |
発売から2週間、無料でボーナスコンテンツ「DIGITAL DELUXE EDITION(デジタル・デラックス・エディション)」がダウンロード可能。内容はオリジナルサウンドトラック7曲、デジタルアートブック、20枚以上のデスクトップ壁紙、およびRez アバター。 |