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Oculus Rift 2019.03.04

Oculus “Rift S”で「指トラッキング」実現か? その4つの理由

PC向けVRヘッドセット「Oculus Rift」のアップグレード版としてリリースが噂される「Oculus ”Rift S”」。このデバイスが、ヘッドセット搭載のカメラを用いた指トラッキングを実現する可能性があると、米メディア・UploadVRは複数のソースから分析しています。

Oculus Riftのアップグレード版”Rift S”

「Oculus ”Rift S”」は、フェイスブックのVRヘッドセット・Oculus Riftのアップグレード版だとされています。2018年11月にTechCrunchがその存在を初めて報道しましたが、フェイスブックは正式な発表を一切行っていません。その後2019年2月には、UploadVRが「Rift Sに関するコードを発見した」と報じています。

UploadVRは今回の分析で、Rift Sのリリースと同時に指トラッキングが実現するとは結論づけてはいません。将来的にソフトウェアのアップデートで実現する可能性を持っている、というものです。

指トラッキング実現が考えられる背景

以下4つの観点から、根拠を説明します。

1.CTOの発言

OculusのCTOであるジョン・カーマック氏は2018年の開発者向けイベントOculus Connect 5(OC5)にて、一体型VRヘッドセット「Oculus Quest」での指トラッキング実現についてコメントしています。同氏によれば、指トラッキングに関するヘッドセット側のボトルネックは「パワー」と「コンピューティング」。カーマック氏はOculus Questが「パワーと能力を備え、指トラッキングに関する研究のプラットフォーム」になると話しています。

TechCrunch等の報道によれば、Rift SはOculus Questと同仕様のカメラをヘッドセットに備え、インサイドアウト方式の位置トラッキングとなる見込み。一体型でなくPCと接続するRift Sならばパワーがネックにならず、指トラッキングも実現可能ではないか、と考えられます。

この点についてUploadVRは、Twitterを通してカーマック氏に確認も行っています。そして「PC向けの」ヘッドセットであれば、CPUのコア数増で指トラッキングが可能である、とのコメントを得ています。

2.長期にわたるフェイスブックの取組

フェイスブックの指トラッキングへの関心は、2014年にまで遡ります。この年に手の認識システムを開発するNimble VR社を買収しており、結果的にこの技術はOculusのデバイスで利用されなかったものの、同社が以前から指トラッキングを検討していたことがうかがえます。

またNimble VRのトラッキングがデプスセンサー(深度センサー)を要するものであったのに対し、現在フェイスブックが検討中と考えられるのは、既にあるカメラを用いる方式です。追加のハードウェアコストが要らない点で、実現に近づいたと言えるかもしれません。

さらに2016年のOculus Connect 3基調講演にて、チーフ・サイエンティストのマイケル・エイブラッシュ氏は、5年後(2021年)のVR技術について語りました。同氏はこの中で、マーカーやグローブ型デバイスを使わないダイレクトな指トラッキングは、5年後には可能だろうとの見方を示しています。2021年を2年後に控える現在、この実現が徐々に近づいていることが考えられます。

3.機械学習のブレイクスルー

フェイスブックは2018年のカンファレンス・F8にて、グローブ型デバイスやマーカーを使わない高精度の指トラッキングを披露しました。同社の説明によれば、この「ブレイクスルー」は機械学習に関係する研究によって成し遂げられたということです。

この技術はメディアや開発者に公開されていないため詳細は不明ですが、前述のOculus Questでの指トラッキング実現計画はこれを踏まえたものと考えられそうです。

4.競合メーカーの動き

VRヘッドセットのみで指トラッキングを実現しよう、と考えている企業はフェイスブックに限りません。HTCはPC向けヘッドセットVive Proで、フロントカメラを用いた指トラッキングを計画していると発表しました。また同社の新型PC向けハイエンドVRヘッドセット「VIVE Cosmos」もフロントカメラを備えていることから、こちらにも可能性があります。

2018年11月には、世界最大級のゲーム配信プラットフォーム・Steamを運営するValve社オリジナル製品と思われるVRヘッドセットの画像が流出しました。そしてこのデバイスにもフロントカメラ、さらに手と指をトラッキングするセンサー「Leap Motion」を装着可能と思しきスロットが確認されました。

指トラッキングの持つ可能性

最後に、指トラッキングが持つ可能性について説明します。VR内での手の動きは、コントローラーの操作で表現されます。VRゲームならばこれで十分ですが、指1本1本の動きが再現されない点は、時に制約となります。例えばソーシャルVRで指を含めた手の動きを正確に表現できれば、没入感や互いのプレゼンスがさらに高まるでしょう。
またエンタープライズ向けの用途でVRを用いる際、例えば設計図面をビジュアル化する際なども、直接指の動きを見られる方が有用だと考えられます。

フェイスブックの発信する情報を見る限りでは、指トラッキングがRift Sのリリースと同時、あるいは直後に搭載される可能性は決して高いとはいえません。しかしいつの日か実現する可能性を持っていることが、こうした複数の観点から推測されます。

(参考)UploadVR


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