Home » Oculus、次世代VR技術を明かす 新方式のグローブや広視野角・可変焦点の次世代プロトタイプ


テック 2018.05.03

Oculus、次世代VR技術を明かす 新方式のグローブや広視野角・可変焦点の次世代プロトタイプ

フェイスブック傘下のOculusは、サンノゼで開催中のF8にてVR分野で現在取り組んでいるR&D;について発表を行いました。F8の2日目の基調講演では、AIやコネクティビティ、AR/VRといった3つの重点分野についてフェイスブックの研究開発の成果が紹介されました。AR/VRについての発表内容を紹介します。

前日には2万円台の高性能な一体型VRヘッドセットOculus Goの発売を発表したばかりですが、同社がVRのさらなる普及を目指して、弛まぬ技術開発へ投資を行っていることが分かります。

Oculus Goなど現行のVRヘッドセットのその先に

Oculusは現在、PC向けにOculus Riftを、モバイル向けGear VRを、そして新発売の一体型Oculus Goと3種類のVRヘッドセットを提供しています。

見え方一つとっても、現行世代のVRヘッドセットは、人間が現実を見ている状態には程遠い、と指摘しています。その尺度として

・ピクセル密度(視野角1度あたりのピクセル数)
・視野角
・焦点深度

を挙げ、数字で比較しています。

[ads]

今後の改善点として、Oculusでは
・ハンドトラッキング
・ビジュアルイマージョン(視覚の没入感)
・3Dリコンストラクション(現実の3DCG化)

の3本柱を挙げています。

マーカーを使いさらに自然な手の認識を

手や指の動きをより現実に反映させるのがハンドトラッキング技術です。VR内でも手がある感覚やVR内の物体等とのインタラクションをさらに高めることが必要となります。現在は、Oculus Rift向けのTouchコントローラーでは手の位置や指の動きを一部取得していますが、完全に現実の動きが再現されているわけではありません。

Oculusでは、新たにグローブ型のデバイスを使ったハンドトラッキングに注目している、と語りました。グローブにはマーカーが配置されており、その位置関係を読み込むことでより自然な動きが可能になると言います。マーカーの位置情報から手の状態の推測にはAIを使っており、Oculusはこの一連の技術を「ディープ・マーカー・トラッキング」と呼んでいます。

以下のグラフは、「ディープ・マーカー・トラッキング」が手そのものの認識だけでなく、握手など他者の手との干渉や、物をつかむなど物体との干渉時にも手がどういう状態なのか動きを正確にトラッキングできることを示しています。

広視野角、可変焦点を実現した新プロトタイプをお披露目

続いて言及されたのは、ビジュアルイマージョン技術です。ビジュアルイマージョンが意味するのは、VRデバイスによって提示される視覚情報を現実に近づけることによって没入感をさらに深める、ということ。解像度の向上だけでなく、視野角や焦点など様々な要素で構成されています。

人間の視野角は210度程度と言われており、視界の中心には映らない環境からも情報を取得しています。現行のVRヘッドセットでは視野角は100度程度です。また、現在のVRヘッドセットではVR空間内の遠近に応じて「焦点」を合わせることができません。2mの距離の焦点に固定されています。実際は、近くに物を近づければくっきりと見えなければいけません。

Oculusではこれらの課題を解決する広視野角で可変焦点の機能を備えたプロトタイプを初めて披露しました。

「Half Dome」(※)と名付けられたこのプロトタイプのデバイスは改良されたレンズにより140度の視野角を実現しています。また、ディスプレイ部分には焦点を調整する機構を備えており、対象物の遠近によって焦点が合うようになっています。

※Half Dome(ハーフドーム):カリフォルニア州ヨセミテ国立公園にある花崗岩ドームの名称。Oculusはこれまで公表されているプロトタイプの名称にカリフォルニア州の地名を命名している。Crystal Cove、Crescent Bay、Santa Cruzなど


(焦点が調節された際の見え方。近づけるとくっきり見える)


(焦点調節のためのメカニズム)


(改良レンズにより、縦方向にも視野角が広がる)

写真でのみの公開となりましたが、Half Domeのサイズ・重量はOculus Riftと変わらない、とのこと。外見はそのままに視覚系の画期的な新技術が搭載可能なことを示しています。

現実空間をVRに取り込む

Oculusはこれまで、VRの将来像として「Augumented Virtuality」を提唱してきました。この考え方は、VR空間を100%現実と異なる世界にするのではなく、VR空間の中に現実空間を元にした構造を反映させるというものです。リビングに座りながらVRを起動すると、VRの中でも椅子に座っていて目の前に机があるような現実と地続きの世界です。

過去の講演でAugumented Virtualityについて語るOculusのマイケル・エイブラッシュ氏(2016)

そのために必要になる技術が3Dリコンストラクション(直訳:3D再構築)です。現実空間をカメラで撮影した写真や動画から3D空間を再現するというもの。一連の写真からデプス(深度)データを推測し、3DCG空間を構成していきます。

さらに以下の動画を示し、「どちらが実写でどちらが3DCGか?」といった問いかけを行いました。

右が3DCGですが。パッと見た限りは左も右も同程度のクオリティに見え、再現の精度が高くなっていることが伺えます。さらに注目すべきは部屋に置いてあった「鏡」。鏡を画像認識によって鏡と認識し、3Dモデルでも鏡面での反射を再現しています。

フェイスブックは前日の基調講演でも、現在のフェイスブックとVRの交わるポイントとして3Dリコンストラクション技術に言及していました。例えば、子どもの頃の写真を元に3D空間を再構築するというもの。面ではなく点群ですが、こちらも3Dリコンストラクションです。

Oculusは一体型で位置トラッキングや手のトラッキングを備えたSanta Cruzというプロトタイプを2018年中には開発者に配布するとしています。

今回の発表では、Santa Cruzの後の道筋が改めて示されました。VRのさらなる実現に向けて様々な側面から研究開発を続けており、これまで研究段階だった各技術が実践の段階に差し掛かり始めていることが分かります。

 

VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード