ARプラットフォーム開発で知られるNianticから、空間コンピューティングに特化した新会社「Niantic Spatial Inc.」がスピンアウトしました。同社は約360億円(2億5,000万ドル)の資金調達を実施し、現実世界を理解するAIの開発に取り組みます。一方、Nianticの主力モバイルゲーム事業は約5,040億円(35億ドル)で米モバイルゲーム企業スコープリーに売却され、同社は今後「ジオスペーシャルコンピューティング(空間情報を活用するコンピューティング)」領域に注力するとしています。

Niantic Spatialの設立に際し、同社は「現在のAIはテキストや画像の理解には長けている一方、現実世界の構造や意味を十分に捉えることができていない」と指摘。スマートグラスやロボットなど、物理的な環境と関わるあらゆる機器が世界を理解できるよう、新たな地図の構築が必要だと説明しています。
Niantic CEOのジョン・ハンケ氏とCTOのブライアン・マクレンドン氏は、かつてGoogleに買収されGoogle Earthなどへと発展した地図技術「Keyhole」の開発者としても知られています。今回のスピンアウトにおいても両名が中心的な役割を担っています。
Niantic Spatialの事業の中核をなすのが、同社独自の空間コンピューティング基盤「Niantic Spatial Platform」です。このプラットフォームには、空間情報に基づいて正確な位置を特定する「Visual Positioning System(VPS)」、3Dスキャン技術「Gaussian Splatting」、および開発者向けSDK群などが統合されています。
世界中から集めた300億枚以上の空間情報付き画像を基に構築された「Large Geospatial Model(LGM、大規模地理空間モデル)」開発にも取り組みます。LGMは、大規模言語モデル(LLM)に空間的な推論能力を加えるもので、物体の位置だけでなく、その意味や周囲との関係性まで理解することを可能にするとしています。
開発者向けには、センチメートル単位の精度で位置を特定できるVPS、リアルタイムで3Dスキャンが可能な「Scaniverse」、そして共有型のAR体験を構築できるSDKなどが提供されています。現在、物流や不動産、製造、エンターテインメント、行政などの分野で実証実験が進められており、ロンドンとオックスフォードの研究チームは既に240件の特許を取得し、238件を出願中です。また、関連分野で多数の論文も発表しています。
今後の短期的な目標として、Niantic Spatialは倉庫や施設など特定のエリアにおける企業向けソリューションの提供を掲げています。長期的には、ARグラスや自律システムなど多様な機器を支える空間知能を持つAI基盤の構築を目指しています。
同社はこうした取り組みを「AIの次なるフェーズ、スクリーンの外への拡張」と位置付け、現実世界とデジタルの融合によって人と機械の関わり方を変えることを目指しています。開発者向けツールは公式サイトから利用でき、企業や開発者との連携も積極的に行っています。
(参考)Niantic Spatial