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活用事例 2017.07.19

ロケーションベースVR協会が始動 13歳未満のVRHMD使用制限緩和も論点

7月18日、ロケーションベースによるVR事業に関わる事業者によって構成された一般社団法人ロケーションベースVR協会が、その活動を正式に開始したことを発表しました。ロケーションベースVR協会の代表理事は株式会社ハシラスの安藤晃弘代表取締役が務めます。

安藤氏によれば、すでに国内で大きな盛り上がりをみせている施設型のロケーションベースVRにおいて、実際の運営者の間ではVRアトラクション運営ならではの共通した問題や課題を感じているとし、事業者同士の情報交換やガイドラインの策定など横の繋がりを活かし、一社だけではなく「団体や協会の力で課題を解決していきたい」と協会設立の経緯を話しました。

そして同協会の設立目的にも「ロケーションベースVR事業を振興し、同事業に関する統一規格を設定のうえ、同事業に関する各種課題に対処し、その国内外への普及を促進することを目的する」とあります。

安藤氏はロケーションVRにおいて特に挙げられる問題として「VR体験の年齢制限」を指摘。VR体験の年齢制限とは、立体視細胞が形成されていない6歳以下の子供が3D映像を視聴した場合に急性内斜視になってしまう危険性がある問題、頭部の成長が止まり瞳孔間距離(左右の黒目と黒目の間の距離)が固定される10歳頃まではHMDの慎重な使用が求められる問題から設けられた制限です。

(参考記事)
なぜ13歳未満の子供は、Oculus Riftを使用してはいけないのか?医学的な見地からの警鐘

Oculus RiftやHTC Viveは13歳未満の使用を非推奨していますが(※)、安藤氏は海外のVR展示会などの現場では必ずしも推奨年齢を遵守しているわけではなく13歳未満の子供が使用していることも散見されること、そしてVR体験をした13歳未満の子供からの健康被害が報告されていない状況について言及しました。また、施設のVR体験であれば家庭でVR体験する場合と違い、プレイ時間を制限したり、例えば「10分プレイしたら5分休憩する」といったように休憩を必須にすることも可能なことから、家庭用と施設用ではVR体験の使用制限が異なるものになる可能性があるとしました。

※PlayStation VRは対象年齢12歳以上。

また、小児科医、医学博士の南里清一郎慶應義塾大学名誉教授は、子供は身体的精神的に発達していくことから眼科以外にも小児科からの視点も必要になると話しました。また、13歳未満という数字には、医学的な見地の他にインターネット上で子供の個人情報を保護することを目的とした「COPPA(Children’s Online Privacy Protection Act) / 児童オンラインプライバシー保護法」に影響を受けている可能性があることを指摘しました(※)。

そして、実際に制限をかける際には「18歳以上、ただし高校生は不可」といったように、年齢と学年を併記した制限で運用するのが良いではないかと指摘しました。他にもたとえばテレビではフラッシュなどの強い光の点滅がある場面では注意喚起の警告が表示されるように、コンテンツ単位で点滅表現の問題などに関しても注意を払う必要性を指摘しました。

※Oculusの親会社であるフェイスブック社はFacebookのアカウント作成するには13歳以上であることを条件としています。また、HTC Viveを開発するValve社のSteamでは13歳未満のユーザーが同サービスの利用規約に同意することができません。

南里氏は、日本とアメリカの考え方の違いについても触れ、米国では「先に進んでダメだと分かったらすぐに止める」という姿勢があることを紹介し、制限や自制を考慮した上で積極的にVR活用に関しても進んでいくことに意味があるのではと述べました。

また、安藤氏は年齢制限の問題によって、教育現場でのVR活用や親子でのVRを介したコミュケーションができなくなってしまうといった機会損失が生じていることを挙げ、VRの持つ大きな可能性を広げるためにも年齢制限の問題を解決していくことの重要性を指摘しました。また、現在ロケーションベースVR協会の正会員は下記の通りで、HDMのメーカーは名を連ねていませんが、年齢問題についても今後メーカーと協議をしていくとしました。

【正会員】
・イオンリテール株式会社
・株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント
・株式会社タイトー
・株式会社ハシラス
・株式会社バンダイナムコエンターテインメント
・株式会社フタバ図書

(賛助会員)
・株式会社リクルートテクノロジー

他にも風営法やVRアトラクションへの案内・アテンド方法など、業界の発展に必要なガイドラインを策定するためにコンセンサスの形成を今後行なっていくことなどが述べられました。なお、Mogura VRでは7月26日(水)にロケーションVRをテーマにしたイベント「VRビジネスの”イマ”が分かるセミナー~VRアーケード編~」を主催します。


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