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業界動向 2024.10.31

地方自治体がメタバースを活用するメリットは? 注目事例の紹介&行き詰まってしまう課題を解説

近年、メタバースを活用する地方自治体が増加傾向にあります。Mogura VR Newsでも、これまで多くの活用事例を取り上げてきました。しかし、そういったメタバースでの活用企画は、継続的に利用されているケースもあれば、話題にならず短期的に終わってしまったケースまで様々です。

この記事では、話題となった自治体によるメタバース活用事例を参考に、メタバース活用成功のために必要な視点や課題を探ります。

メタバースの特性を地方の課題解決に活用

メタバースとは、「誰もが現実世界と同等のコミュニケーションや経済活動を行うことができるオンライン上のバーチャル空間」「三次元のインターネット」のこと(出典はこちらの書籍から)。

メタバースでできることは多種多様で、アバターを使ってバーチャル空間を自由に動き回って他のユーザーと交流したり、商品やサービスの売買、ゲームや動画視聴等を体験できます。有名なメタバースサービスには、海外プラットフォームの「VRChat」や「Roblox(ロブロックス)」、「Fortnite(フォートナイト)」、国内発プラットフォームの「cluster」等があります。

メタバースを利用するユーザーの大半は若年層です。例えば、世界最大規模のメタバース「Roblox」では、2023年第4四半期の日間アクティブユーザー(DAU)は7,150万人。そのうち、13歳以下が約2,900万人、全体の約40%を占めています。

また電通が実施した国内調査では15〜27歳代のユーザーは1日に平均72.5分、メタバースを利用するとの結果が出ています(出典: プレスリリース)。つまり、メタバースにコンテンツを出すことで、若年層に向けた特定の商品やイベント等の認知拡大を期待できるプラットフォームと言えます。

地方自治体が抱える課題は観光PRや関係人口創出等、行動力・消費意欲の高い若年層へのアピールが欠かせないものばかりです。一方で、メタバースはまだ技術的にも進化している最中の新たなコミュニケーションプラットフォームです。将来もっと広がっていく可能性もあるメタバースに現時点から取り組むことはチャレンジであり、一定程度のトライアンドエラーが必要となります。

次章では「地方自治体×メタバース活用のパターン」を紹介します。

地方自治体×メタバース活用のパターン

観光PR

歴史的イベントや文化財等の認知拡大、地方自治体の物産紹介や観光客誘致を目的として、地域の一部を再現したワールドを作成したり、観光グッズを3Dで作成して広める等のメタバース施策が頻繁に取り組まれています。

自治体 プラットフォーム PR対象または配布3Dグッズ
兵庫県神戸市 Fortnite ・有馬温泉
茨城県 Fortnite ・イオンモール水戸内原
大阪府と大阪市 cluster ・大阪・関西万博
・道頓堀や大阪城
・太陽の塔をモチーフにしたアバター衣装の配布
兵庫県養父市 VRChat ・明延鉱山の坑道跡
・養父市役所
・「バーチャル養父市」の住民になれるデジタル住民票の配布
東京都 Roblox ・東京の現代的な街並み及び観光情報
・アバターに装着可能なぬいぐるみの先着限定配布

就職相談や婚活支援、福祉・教育分野への活用

就職や結婚をきっかけとした地方への移住者を呼び込むためのメタバース施策が複数実施されています。また、引きこもり対象者の自立支援等、福祉現場や教育の場にもメタバースが取り入れられています。

自治体 プラットフォーム 活用分野
愛知県豊田市 VRChat、および
めちゃバース
※株式会社ハシラス提供プラットフォーム
・引きこもりの方のご家族を対象とした相談会
・学生を対象とした就職相談会
・不登校児童生徒のご家族を対象とした座談会
・不登校児童生徒を対象とした体験会
大阪府 cluster ・若者向けの「ハローワーク
・バーチャル企業説明会
福岡県 cluster ・自殺予防相談窓口
山梨県甲府市 DOOR
※株式会社NTTコノキュー提供プラットフォーム
・ひきこもり相談窓口
千葉県 GAIA TOWN
※パーソルマーケティング株式会社提供プラットフォーム
メタバース婚活イベント

行政サービスのオンライン化

行政が提供する電子申請手続きや相談業務を、バーチャル上で利用可能とするメタバース施策も行われています。

自治体 プラットフォーム 活用分野
新潟県三条市、三重県桑名市、東京都江戸川区 メタバース役所
※大日本印刷株式会社提供のプラットフォーム
電子申請手続きの総合窓口
・各種相談業務・市民交流の場の提供

デジタルツイン構想

特定の地域や建造物・文化財等をバーチャル空間に再現可能な3Dデータとして記録し、デジタルアーカイブ化する活用事例もあります。これらは災害対策や交通基盤整備、貴重な観光資源や施設の保存・公開を目的としています。

自治体 プラットフォーム 活用分野
静岡県 VIRTUAL SHIZUOKA プラットフォーム
※東京都「デジタルツイン実現プロジェクト」との共同運用
災害シミュレーション3D等の防災対策
・県発注業務におけるコスト削減等の土木施策
・インフラの維持管理、台帳連携等の交通基盤整備
大阪府富田林市 おうちdeミュージアム
※米Matterport社が提供する3Dスキャンソリューションで運用
・文化財のデジタルアーカイブ公開
東海地方の各地域
※企画主体は中日新聞社
VRChat ・戦争遺跡のデジタルアーカイブ公開

「メタバース×自治体」の注目事例

メタバースの活用に目をつけた地方自治体は数多く、これまでいくつもの活用事例が生み出されてきました。本記事ではここから参考にしたい「メタバース×自治体」成功事例を紹介します。

神奈川県横須賀市:「メタバースヨコスカ」

横須賀市はVRChatに公式ワールドDOBUITA & MIKASA WORLDをオープンしました。横須賀市の「ドブ板通り商店街」と「三笠公園」をモチーフにしつつ、「未来の横須賀」をイメージして制作されています。アバターが着用できるスカジャンの無料配布やワールド内での音楽ライブ開催等、VRChatユーザーの心をくすぐるコンテンツやイベントが揃っています。またアップデートにも注力し、横須賀にある自然のひとつ「猿島」を再現したワールドもオープン後に追加されています。訪問を何度も繰り返す”リピーター”が多く、成功した活用事例と言えます。

https://metaverse-yokosuka.com/

熊本県:「くまモン島タイクーン」

熊本県はFortniteに公式ワールド「くまモン島」を公開しました。このワールドは熊本県のゆるキャラ「くまモン」と、自然、歴史、文化、食等について学べるというコンセプト。訪問者は農業や漁業、観光名所修復等のミニゲームをクリアしながら通貨を集め、熊本城建築を目指します。Fortniteならではのゲーム性を活用しつつ、観光名所で写真を撮影したりと、アクションに不慣れな人にも楽しみやすいコンテンツとなっています。公開から2ヵ月経った2024年3月28日での累計アクセス数は23万回を突破しています。

沖縄県:「バーチャル沖縄」

地方に基盤を置く企業が自治体のメタバース活用を担う事例もあります。「沖縄生まれの、総合エンターテインメント創造企業」を掲げる株式会社あしびかんぱにーは、VRChatに公式ワールドバーチャル沖縄をオープンしています。国際通りや首里城等、沖縄の観光名所が精巧に再現された空間で、様々なバーチャルイベントを企画・運用を継続。10万人以上の動員数を誇る「OKIVFES(OKINAWA JAPAN VIRTUAL FES)」はVRChat会場の他、ブラウザ会場にも対応しています。

埼玉県:越谷レイクタウン「ミズベリング」

埼玉県はVRChatに「ミズベリング」という期間限定のワールドを毎夏設置しています。日本の水辺の新しい活用を模索するプロジェクト「ミズベリング」から生まれた企画で、越谷レイクタウンにある大相模調節池をVRChatワールドに再現。初代埼玉バーチャル観光大使であるVTuber「春日部つくし」らのライブ等を実施し、埼玉観光情報局の公式YouTubeで配信しました。恒例の夏イベントとして、VRChatユーザーや埼玉の地元のユーザーにも人気を集めています。

期待した効果が得られないメタバース施策も、その原因は?

「大きな予算を投じて制作したコンテンツ・ワールドの集客がうまくいかない」「オープン当初のメディア対応に力を入れたはずなのに、まったく話題にならない」そういったメタバース活用事例も続出しています。原因は複数考えられます。

  • 原因1:プラットフォーム選定がズレている
  • 原因2:コンテンツ内容そのものが面白くない
  • 原因3:PR手段が適切ではない
  • 原因4:運用・更新が継続できていない

原因1:プラットフォーム選定がズレている

メタバースを制作・運営できるプラットフォームは数多く存在し、それぞれ機能面やユーザー層の特徴があります。メタバース施策の目的や予算規模に合ったプラットフォーム選定が必要です。

よくある例として、アクセスのしやすさを考えて「ブラウザでの入室が可能なメタバースでの展開」を目指す施策があります。一方で各プラットフォームの特徴も様々。アプリをインストールするタイプでハードルが高そうでも、すでにユーザーが繰り返しアクセスしており、コミュニティ活動などの盛んなメタバースもあります。どのプラットフォームがどのようなアクセス形態に対応しているのか、どのようなユーザーがいるのか、そのユーザー層とボリュームは目的にかなったものなのか、事前に調査してよく企画から検討する必要があります。

主なプラットフォームの対応例

プラットフォーム ブラウザ対応 VR対応
VRChat
※PC、Androidスマホ、iPhone(β版)のアプリで体験可能
cluster
※PCのWebブラウザ版(法人プラン)のみ対応
Roblox
※PC、スマートフォンなどのアプリで体験可能
Fortnite
※各種ストリーミングプラットフォームで体験可能
DOOR
メタバース役所
GAIA TOWN
※PCのみ対応
めちゃバース

原因2:コンテンツ内容そのものが面白くない、便利ではない

メタバースを訪問するユーザーが求めているのは、「面白さ」や「利便性」です。制作側にはユーザー滞在時間をどれだけ長くするかという視点が必要になります。観光PRサイトやポータルサイトのように情報を羅列するだけでは、メタバースでの集客効果は得られません。具体的にどのような体験が可能で、それがどういった意味で楽しいのか、便利なのかといったところを考えたほうが良いでしょう。

原因3:PR手段が適切ではない

プラットフォームごとに効果的なPR手法は異なります。一様にメディアにプレスリリースを送るだけではメタバースのアクセス数は期待したほど伸びないかもしれません。一方で数十名のユーザーに来てほしいのであれば、そもそもPRも不要かもしれません。また、どんなSNSや広告よりも、メタバースの中で口コミの宣伝をすることが最も効果的なこともあります。

来てほしいユーザーが普段どのような媒体を通して情報に接しているのか、そしてどのように彼らの中で話題になっていくのか、プラットフォームでうまくいった事例などを分析してPR手法も仮説を立てながら取り組んでいきましょう。

原因4:運用・更新が継続できていない

人気のメタバースコンテンツは頻繁に更新されています。ユーザーに「1度体験すれば満足だ」という体験ではなく、「何度も体験したい」と思わせる体験を提供すること。そして、冒頭記載したように、まだ正攻法が見つかっていないメタバースの活用では期待どおりにいかないことはよくあります。企画・制作側にはユーザーの声を聴いたり、データを分析しながら、コンテンツを日々アップデートしていく運用が求められます。

Moguraはメタバース制作〜運用まで伴走します

「プラットフォーム選定を適切に判断し、予算を勘案し、リサーチから運用まで寄り添ってくれる会社はないのか?」とお悩みの方は、ぜひ株式会社Moguraにご相談ください。

Moguraでは、“Mogura NEXT”という、AR/VR/メタバース/アバター(VTuber含む)領域に特化した、リサーチ・コンサルティング・開発サービスを展開しています。

国内最大のXR専門メディア「Mogura VR」を運営する株式会社Moguraによる業界随一のコンサルティング力を武器に、開発・調査・アドバイザリー等幅広く企業・行政機関のXRの取組をご支援しています。

特に、メタバースの制作に関しては、ご相談ごとにパートナーの開発会社やクリエイターとチームを組成。XR・ゲーム・メタバースの開発経験が豊富なメンバーが実際のサービスやコンテンツ開発までサポートしています。また、業界メディアを運営している知見とネットワークを活かして、メタバースのPRや広報のサポートも行っています。

・建築×Fortnite展開事例(長谷工コーポレーション様)
https://mogura.co/posts/20241031

・ブラウザメタバースを使ったメタバースモデルルーム(長谷工コーポレーション様)
https://mogura.co/posts/20240802

・VRChatを活用した観光PRとデジタル人材育成(鳥取県倉吉市様)
https://mogura.co/posts/20240229

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