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シミュレーション・接客 2017.10.19

降水量2メートルを体感 JAXAの『世界一の雨降り体験VR』

降水量2281.69mmと聞いてどれくらいの雨量と想像できる人がどれくらいいるのでしょうか。

降水量は雨が流れなかった場合にその場で溜まった水の深さを表しています。現実で雨が流れないことはありえませんが、VRならその感覚を擬似的に体験することができます。

2017年10月11日から10月13日まで東京ビッグサイトで「Japan VR Summit 3」が開催されました。

「Japan VR Summit 3」ではセミナーとコンテンツの展示があります。VRコンテンツが体験できる展示コーナー「JVRS Showcase」は「ITpro EXPO 2017」の一角で同時開催されました。

人工衛星のデータを活用

『世界一の雨降り体験VR』はグリー株式会社国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と提携し、VR/AR分野において人工衛星のデータの新たな利用を開拓するために共同制作した第一弾コンテンツです。

『世界一の雨降り体験VR』は、2つのパートに分かれています。前半はJAXAが人工衛星を使い日々モニタリングしている地球上の変化の中から衛星全球降水マップ(GSMaP)を宇宙に飛び出て地球儀を動かすように眺められます。後半は、全球降水観測計画「GPM」で観測された降水データの中から、2017年8月の降水量が世界で一番多かった地域を地上で体感できる内容です。

地球を回転させながら台風の発生を地球規模で観察


前半は宇宙から始まります。目の前にはバスケットボール大の地球が浮かび、周囲を人工衛星が周回、ピンポン玉サイズの月も見えています。

2017年8月1日、台風5号が発生した頃のGSMaPでの世界の雨分布が1ヶ月分、地球上で動いている様子が見られます。

GSMaPは観測から約4時間遅れで1時間ごとに複数の衛星を利用したデータで世界の雨分布を表示しています。台風や雨雲の形が移り変わる様子をアニメーションのように見られます。

ハンドコントローラのOculus Touchを装着しているので地球儀を手で回すように地球を回転させることもでき、日本以外の世界中の地域を見ることができます。バスケットボールサイズの地球は拡大縮小も自在です。アメリカ大陸を両手を広げたサイズにまで大きくして見ることもできます。

GSMaPは宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 地球観測研究センター (EORC)が運営するサイトでも見ることができますが、平面の世界地図で見るより、VRで見ると地球の裏の方まで見ることができるため、気象現象が地球全体で連動し影響していることが直観的に理解できます。

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地球をくるくる回して見ていると突然クイズが始まります。「2017年8月の降水量が世界で一番多かった地域のある国はどこでしょう?」答えは4択の中から選択します。今見ていた地球上の雨分布から答えられるはずとナレーションが入りますが、そんなクイズがくるとも知らず眺めていたため勘で答えるしかありませんでした。

答えは「ナイジェリアとニジェール国境にあるチャド湖の北側、月間合計降水量最大値は2281.69mm」。つまり雨が全く流れず溜まった場合2m28cm以上の高さまで水が溜まるということ。全く想像がつきません。

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街中で体験する豪雨

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宇宙から一転、地上に場面が変わります。周囲はCGで描かれた街並みです。公園やビルがあり、道路に車が停まっている無人の街です。

目の前には、日付や時刻が書かれたメッセージと降水量を測る大きな定規、そばの机の上には傘が置かれています。これから2017年8月の世界最大の降水量を地上で体験することになります。
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傘は雨が降ってきたら自由に差すことができます。

始めこそ晴れた空ですが、すぐに大粒の雨が降り出します。顔を空に向けると落ちてきた雨粒がメガネやゴーグルにかかったように水滴がつき視界が見えにくくなります。傘を開いて激しくなる一方の雨を防ぐと、視界を覆った水滴が消え周囲がくっきりと見えるようになります。

空は暗雲がたちこめ次々と稲妻が光ると激しい雷鳴が轟き、傘に当たる雨音も強く感じます。

1ヶ月分を体験するので夜と昼がすぐに移り変わりますが、ずっと雨は止みません。気づけば水が腰の高さまできています。

木やビルが映りこんだ水面がゆらゆら揺れているのが見えると、CGでも水の中にいる気分がしてきます。しゃがめば水の中を見ることもできます。
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そろそろ顔にまで水が迫ってくると、下から浮輪が浮いてきます。浮輪は何もしなくても自分の体に装着され水面に浮くことができます。その頃には2mにまで水が溜まり、顔を水面につけて水中を覗くと、自分が地面より高い場所に浮いていることがわかります。
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あっという間に1ヶ月間を体験しますが、街が水没していく様子を見ると本当にこれだけの雨が現実に降ったとは信じられない気分になります。

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単にCGの雨が降っている様子では現実味を感じにくい人でも、水滴がついたり傘を開いたり閉じたりなど、現実でできることがVR内でもできることで飽きさせない工夫をしているようです。

人工衛星による気象データは非常に需要ですが、一般人にとっては天気予報以外にあまり目にとまりません。本コンテンツのようにVRで活用することで、降水量を実感すれば現実で警報が発令されたときに避難等の行動に出やすくなるかもしれません。

平面の地図より地球上で動いている気象データを見ることで、地球規模で気象災害や環境について考えるきっかけにもなりそうです。

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こちらは子供向けのVRデバイスです。タブレットが使われ、雨が降っているシーンを360度見回すことができます。PA128805.JPG

可愛い宇宙飛行士を持ち上げているような体験風景が人目を引きます。子供が自発的に手に取るようなデザインも秀逸です。

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裏側は子供向けに単眼ディスプレイです。


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