プロフェッショナル用の360度カメラ「Insta360 Pro2」。6個のカメラレンズを搭載し、3D・8K解像度の360度動画をこのカメラ1つで撮影することが可能です。国内価格は税込68万円。今回は日本国内代理店である株式会社ハコスコから実機を借りて、その開封や使用感をレポートします。
カメラの大きさは前モデルの「Insta360 Pro」と同じくハンドボール大ほど。重量は1.5kgと一人でも十分に持ち上げたりなど可能ですが、長時間持ち運びするには少々重いといったところです。
(レンズカバーを外して電源を入れた状態。カメラ本体操作でも設定や撮影を行うことができる)
カメラレンズの大きさも同じです。大きく変わった点としては、レンズと同じ6枚のmicroSDカードが必要になったことがあげられます。「Insta360 Pro」では1枚のSDカードだけに保存される仕様でした。「Insta360 Pro」はSDカード1枚だけで便利でしたが、映像の品質がトレードオフとなっていました。
(6つあるmicro SDカード用スロットのうち、3つは本体下方部の側面。LANケーブルのスロットはこちらに)
(残る3スロットは本体下方部の側面。マイクスロットなどもこちらに配置されている)
「Insta360 Pro 2」では、6枚のmicro SDカードと1枚のSDカードの合計7枚に記録することにより、各レンズ最大120Mbpsの高ビットレートの映像を実現しています。プロユースのカメラとして高性能化を目指した結果と考えられます。
また、一目で分かる外見的な違いはカメラの上部に金色のツノのようなものができたことでしょう。この両ツノには同梱されている遠隔操作コントローラー「Farsight 」用のアンテナを装着する際などに使います。これを利用することで、「insta360 Pro2」では、30fpsのライブプレビュー撮影が行えます。
(カメラを上から見下ろしたもの。頭頂部にネジ穴が設置されていて、マイクを上につける場合などに使用)
(同梱されている台座は取り外し可能。台座にはネジ穴が5個あるので安定設置が可)
撮影はカメラ本体のボタンを押すか、スマホかタブレットに無線接続、PCには有線か無線接続して行うという方法です。撮影自体は非常に簡単で、解像度や3Dのステレオモード、fpsなどを設定して録画を開始するだけ、と分かりやすいな操作性でした。
文字通り上下左右全天球の360度を撮影できるカメラなので、一度撮影を始めてしまえばカメラを動かさなくても周囲を全て収めることができます。そのためカメラを中心にした構図など、事前の準備や計画が大切になってきます。
「Insta360 Pro 2」の撮影で注意したいところでは撮影中のファンの音が大きいところ。ファンを切るモードもあるのですが、長時間の連続撮影はファンを回す必要があります。カメラ搭載のマイクの性能は高性能ではないため、外付けのマイクを使用するのが安全と言えます。外付けマイクはカメラの上と下に接続できる仕様です。
バッテリー容量は5100mAhで取り外し式。連続撮影時間は50分と短めです。筆者が使用した場合は数十分の撮影でも処理することなく安定して動作しました。2018年11月の段階ではカメラの電源を落としている間にもバッテリーが減っていくことがありました。カメラ使用直前に給電をするか、給電しながらの撮影をするかなどの対策を講じるのが得策かもしれません。また、バッテリーが減っていくのは一時的な問題で、カメラのファームウェアが更新されることで解決されるのか、カメラ/バッテリーの個体差の問題なのかは不明なので注視したいところです。
(同梱されている「Farsight 」を繋げて、カメラにアンテナを取り付けた様子)
(「Farsight 」のアンテナをコントロールデバイス(スマホ/タブレット/PC)に取り付けて遠隔操作可能。遠隔操作は最大地上300mまで対応)
また、同梱のハードケースは持って移動するのに一苦労します。編集部でオススメなのはソニー純正品のカメラバック。ACアダプターやケーブルなどもまとめて収納できる上、ケース自体が軽いので持ち運びの利便性は格段に高まります。
Insta360 Pro用に頼んだバッグ(ソニー製)が届きました。ジャストサイズで超便利な予感がします……!! pic.twitter.com/cr66EQYN3N
— オーツグ (@oo2gu) October 31, 2017
「Insta360 Pro2」を三脚に付けると、カメラの形状が球体であるおかげか、意外とコンパクトな感じもします。しかし、足場をしっかりさせないと倒れた際にレンズが割れる可能性が高い、というリスクもあります。球体であるためどの面にもレンズがあり、さらに重量もそれなり。Insta360 Pro 2に限った話ではありませんが、転倒させたり落としたりすると危険なので、取り扱いは慎重にいきたいところです。
「Insta360 Pro2」で撮影した360度動画は専用の無料編集ソフト「Insta360Stitcher」で自動スティッチングしてMP4ファイルに出力できます。また、「Insta360Stitcher」によるスティッチングと編集には高性能なGPUを搭載したPCが必要です。メーカーからはGeForce GTX 980以上を搭載したPCが推奨されています。
各レンズで撮影したオリジナルの動画ファイルを編集ソフトに吸い出して6つの動画ファイルから1つの360度動画を作成します。吸出し方法は下記の2つの方法を選ぶことができます。
(1) 「Insta360 Pro2」とPCをケーブル接続して吸い出す方法
(2) 複数台のカードリーダー(複数ポート)を使ってPCにSDカードを挿して吸い出す方法
結果的に上の2つの方法とも筆者はエラーで吸い出すことができませんでした。もう少し粘れば吸い出すことができたのかもしれませんが、少なくとも初見でスムーズに吸い出しをするのは難しいのかもしれません。2018年11月の状況ですが、今後の更新などで改善されることを期待したいところです。
(「Insta360Stitcher」のスクリーンショット。画面左上にある「Pro2 File Manager」からデータを吸い出す)
特に(2) 複数台のカードリーダーを使って吸い出す方法は非常に手間が掛かるので、カメラとPCをケーブル接続して吸い出す方法がスムーズにいけると利便性が高くなります。カードリーダーを複数台購入するのが面倒ですし、それを繋げて合計7枚のSDカードをカメラから取り出して、カードリーダーに挿して……というのはやや面倒でした。カメラのmicroSDカードスロットも決して取り出しやすいものではないので余計に煩雑に感じます。重ね重ねですが、PCとケーブル接続して吸い出すことが上手くいかないと、ユーザビリティが高いとは言えないでしょう。
なので下の動画は「Insta360 Pro2」の全6個のうち1個のカメラで撮影した、360度動画では無い通常の動画となります。
上の動画はあまり参考にはなりませんが、メーカー公式サイトから参考動画をダウンロードできますので、それを参考にするのが良いでしょう。こちらのGoogleドライブにサンプル動画/静止画が収められています。
また静止画の方はmicroSDカードではなくSDカードにリアルタイムスティッチされた360度静止画が記録されます。そのため360度静止画は「Insta360Stitcher」で吸い出してスティッチングする必要がないので楽です。
前モデルの「Insta360 Pro」はコスパの良さからも世界中で人気のある機種です。プロユースの360度カメラとしてスペック的には真っ当な進化を遂げている「Insta360 Pro2」も同じように人気を獲得していくのか注目したいところです。
また、今回実機をお借りした株式会社ハコスコでは定期的に「Insta360 Pro/Pro2 体験相談会」が開催されています。体験相談会では2機種の比較から実機を使ったデモ、質問タイムなども設けられているとのことです。
「Insta360 Pro2」スペック
レンズ |
200° F2.4 fisheye lenses |
本体サイズ |
直径143mm |
重量 |
1386g |
ISO |
100~6400 |
露出モード |
Auto、Manual、Lens-by-Lens Custom |
ホワイトバランス |
Auto、Manual |
静止画撮影モード |
Single shot / Burst (10枚連続撮影)/ AEB/ timelapse(RAW 撮影はすべてのモードで可能) |
静止画フォーマット |
JPEG / DNG |
動画モード |
Standard /High FPS(I-logはすべてのモードで可能、 DOL-HDR は一部のモードのみ対応) |
動画フォーマット |
MP4 |
エンコードフォーマット |
H264 in-camera,H265 available in post stitching |
ライブストリーミング |
Push Stream 、Custom server push stream、HDMI Output |
ストリーミングプロトコル |
rtsp、rtmp、hls |
ストレージ |
6 MicroSD Card+1 SD Card |
静止画解像度 |
7680 * 7680(3D) |
動画解像度 |
7680 * 7680 @30 FPS (8K 3D) |
レンズあたりのビットレート |
最大120Mbps |
電源 |
12V 5A |
バッテリー容量 |
5100mAh |
バッテリー動作時間 |
50分 ホットスワップ |
動作温度 |
0~40℃ |
WiFi |
802.11 b/g/n,2.4GHz,到達距離20m,30fpsでのプレビュー距離 5m 以内. |
Ethernetポート |
内蔵 |
HDMIポート |
内蔵 |
リアルタイムモニター |
Insta360 Farsight. Air to ground distance up to 3km in open space, ground to ground distance up to 300m. |
オーディオ |
4x モノラルマイク |
オーディオフォーマット |
AAC |
空間音響 |
Ambisonic |
ジャイロセンサー |
9 axis gyro |
スタビライゼーション |
FlowState stabilization |
スティッチ |
Optical Flow / Template |
コントロールソフトウェア対応OS |
Windows / Mac / iOS / Android |
Insta360 Pro・Pro 2 比較表
Insta360 Pro 2 |
Insta360 Pro |
|
重量 |
1386g |
1228g |
静止画モード |
Single shot / Burst (ten continuous shots)/ AEB/ timelapse(RAW available in all photo modes) |
Single shot / Burst (ten continuous shots)/ HDR / RAW |
動画モード |
Standard /High FPS(I-log available in all video modes and DOL-HDR available in some video modes) |
Standard /Binning/timelapse |
ライブストリーミング |
Push Stream 、Custom server push stream、HDMI Output |
Push Stream 、Custom server push stream、HDMI Output, Aerial mode (support livesteaming + recording) |
ストレージ |
6 MicroSD Card+1 SD Card |
1 SD Card /USB 3.0 |
動画スペック |
7680 * 7680 @30 FPS (8K 3D) |
7680 * 3840 @30 FPS (8K 2D) |
バッテリー動作時間 |
50分ホットスワップ対応 |
75分 |
ビットレート |
Up to 120Mbps |
Up to 40Mbps |
リアルタイムモニター |
Insta360 Farsight (Included) |
Insta360 Farsight (optional) |
ジャイロセンサー |
9 axis gyro |
6 axis gyro |
スタビライゼーション |
FlowState stabilization |
Standard gyro stabilization |