あの「如月千早」が、日本武道館で単独ライブを行う――。
そんなニュースが流れてきて、今まさに驚いている人も多いのではないでしょうか。
765プロダクション所属のアイドル・如月千早さんが、「如月千早」として武道館のステージに立つ。その事実が意味するものは何か。そして発表記者会見では何が語られたのか。『アイマス』シリーズが展開するMR施策とも絡めつつ、本記事ではお伝えします。
765プロの如月千早さんが、武道館での単独公演を発表!
2025年7月26日に20周年を迎える『アイドルマスター』シリーズ。
YouTube公式チャンネルでは、20周年イヤーの関連情報を発信する特別生配信「アイドルマスター20周年イヤー特別生配信~3月もどどんと情報盛りだくさんスペシャル~」を3月25日夜に実施。そして同日夜に放送されたのが、「765プロダクション 発表記者会見」です。
事前情報がないまま始まった記者会見に登壇したのは、765プロダクションに所属するアイドル、如月千早さんご本人。集まった記者たちの前で挨拶をした後、ティザー映像が流れ、武道館での単独ライブの開催を発表しました。
「この度、私、如月千早単独公演を行わせていただくこととなりました。場所は、日本武道館という大きな舞台でライブを行わせていただきます」
ライブの公演タイトルは『Oath ONE』。如月さんによると、この「ONE」には3つの意味が込められているそうです。
- いつも応援してくれるファンや、765プロダクションの仲間への誓い
- 「日本武道館公演」という新たな挑戦や、決意を込めた、始まりの誓い
- このライブに全力を尽くし、すべてをかける誓い
「せっかくいただいた大きな機会ですので、私が出せる最大限のパフォーマンスをしたいと思っています」と話し、来るライブへの決意をにじませていました。
また、映像で流れたライブのキービジュアルでは、「深海から輝く星に手を伸ばすことで、より高みを目指していく」という世界観が表現されているとのこと。幻想的ながら強い想いを感じさせられるビジュアルであると同時に、ひと目で如月さんの魅力が伝わる仕上がりとなっています。
(如月千早武道館単独公演「Oath ONE」キービジュアル)
質疑応答まとめ
ライブの概要が一通り発表された後は、そのまま質疑応答へ。
YouTubeでは如月さんが質問に答える様子が配信されていましたが、現地ではほかにもいくつかの質問が投げかけられていました。記者と如月さんのあいだで交わされたやり取りを、以下にまとめて掲載します。
Q. ソロ公演が開かれることについて、この話を初めて伝えられたときの心境を教えていただきたいです。
如月千早:「正直、『本当に私でよかったのかな?』という気持ちもありました。でも、『ステージに立たせてもらうとなったからには、全力でやり遂げたい』という強い気持ちに、今は変わっています」
Q. 今回の武道館公演について、最初にどなたに伝えましたか? また、伝えたときのその方の反応と、それを見て如月さんがどのように思ったのかを教えてください。
如月千早:「まずは、同じ事務所の仲間のみんなに伝えました。みんなすごく喜んでくれて、それを見て、私自身のためにも、そうして応援してくれる仲間のためにも、がんばろうと思いました」
Q. 先ほど、765プロの方々へのご報告を済まされたとのお話がありましたが、具体的にはどのようなお言葉をかけていただきましたか?
如月千早:「まず、報告を受けたときに事務所にいた、我那覇響さんにお伝えしました。我那覇さんはいつも、私のソロライブが待ち遠しいと声をかけてくれていたので。同じ理由で、四条(貴音)さんや、萩原(雪歩)さんにも。特に萩原さんは、自分のことのように喜んでくださいました。『絶対に見に行く』と言ってくれました」
Q. 音楽ライブの「聖地」と言われる場所で公演することについて、意気込みを教えてください。
如月千早:「そうですね……。今、とても心が震えています。いろいろなアーティストの方にとって、日本武道館は、夢だと思います。しかもソロコンサートなんて……身が引き締まる思いです」
Q. 日本の音楽シーンでは「聖地」として語られることが多い場所ですが、如月さんご自身はこの日本武道館という場所について、どのようなイメージを持っていますか?
如月千早:「たしかに、音楽を志す者なら、誰もが一度は憧れる場所だと思います。私も、子供の頃から、憧れの存在でした。まさかその舞台に、私が1人で立つなんて――。たくさんのアーティストやアイドル、そしてその方々を応援する方々の思いが詰まった、本当に素敵な場所だと思っています」
Q. ソロでの日本武道館ライブということで、緊張はしていますか? また、今回のライブの目標をお聞かせください。
如月千早:「はい。とても緊張しています。まだ演目も全部決まりきっているわけではないので、最後の最後まで吟味して、見に来てくださっている方々が、本当に楽しかったと思ってくださるような、そんなライブにしたいと思っています」
Q. 如月さんにはすでにたくさんのファンがいらっしゃいますし、みなさん今回の公演を楽しみにされていると思います。如月さんは今回の公演をどのような方に見ていただきたいと思っていますか?
如月千早:「そうですね。今まで応援し、支えてくださった、たくさんの方々。そして、仲間や関係者の方にも見に来てほしいです。それと……両親にも。また、この大きなプロジェクトをきっかけに、私たち765プロのみんなに興味を持ってくださる一助となり、今まで私たちを知らなかった方々にも、ぜひ見に来ていただきたいです」
Q. ファンの方々へ、どんなステージを届けたいですか?
如月千早:「そうですね……。何年経っても、あの時の光景が目に浮かぶ、あの時の歌声が耳に残る――そんな、宝物のようなステージにできればと」
Q. 冒頭でキービジュアルやライブタイトルに込めた想いなどを語ってくださいましたが、それらのコンセプトを決める際には、如月さんも意見を出されたのでしょうか? また、キービジュアルも新たに撮影されたとのことですが、撮影時に思い出に残っていることがあれば教えてください。
如月千早:「はい。すべてではありませんが、『こんな風にしたい』という思いをお伝えさせていただき、スタッフのみなさんにこのような形にしていただきました。実は、真冬の海での撮影だったので、体が凍えそうなくらい気温が低かったんです。手が震えてしまって……。ただ、不思議なことに、本番になると不思議と手が震えなくなるんです。最終的には、デザイナーの方が、文明の技術を用いて、とても美しく仕上げててくださいました」
Q. 単独公演ということで、765プロのほかの方々と一緒の公演との心境の違いはありますか?
如月千早:「これまでにも公演中にソロで歌わせていただくことはありましたが、やはりパフォーマンスを終えたら、振り返れば仲間がいるので。今回、1人でステージをやりきるというのは、大きく違うと……思います」
Q. 日本武道館はその独特な構造から、音響特性や客席との一体感など、さまざまな魅力を持つステージだと思います。そこでパフォーマンスを行うにあたって、演出の構想や、公演にあたって楽しみにされていることをお聞かせください。
如月千早:「ステージの演出などについては、多くのスタッフさんが現在考えてくださっている最中かと思います。私としては、会場独特の形――まるで、空から歌声が降ってくるような、そんな、隅々まで歌声が届けられるような音響環境にできたらと、そう思っています」
Q. このライブに向けて、如月さんが取り組んでいることはありますか?
如月千早:「はい。今まで以上に歌のレッスンに取り組んでいます。それ以外にも、1人でステージに立つということで、今まで以上に体力を求められるので、体力トレーニングも今からしっかりと始めていこうと思っています」
Q. 直近の765プロのアイドルたちのライブとしては、萩原雪歩さんと菊地真さんのデュオでのライブ、そして天海春香さんと秋月律子さんによるソロライブがそれぞれ行われましたが(※)、ご覧になりましたか? ご覧になっていた場合は、感想などを伺えればと思います。
如月千早:「はい! もちろん拝見いたしました。特に一番始めに公演があった、『はんげつであえたら』は、本当に衝撃的でした。真と萩原さんの2人のライブが、こんなふうになるんだと、配信で何度も何度も見返しました。私も、いつか誰かと――と思っていたのですが、まさか、ソロとは思いませんでした。ですが、自分にかけていただいた期待に、心から答えたいと思っています」
※菊地真・萩原雪歩 twin live “ はんげつであえたら ”(ティザー)
※M@STER EXPO LIVE SHOWCASE HARUKA AMAMI SOLO LIVE “START”(ライブ冒頭)
※M@STER EXPO LIVE SHOWCASE RITSUKO AKIZUKI SOLO LIVE “Let me hear”(ライブ冒頭)
質疑応答はここまで。最後にこの武道館単独公演に込める想いを、如月さんが改めて語ってくれました。
今回のライブは、これからの765プロの道筋を決める、本当に、本当に大切なライブかと。だからこそ、私の出せる全力を出し切り、次に繋げられるようなライブにしたいと思っています。
私たちアイドルにとって、歌やダンス、パフォーマンスを届ける場があるというのは、当たり前ではないと思います。このチャンスを、身になるものとして、次のメンバーに繋げられるような、精一杯の力を尽くしたいと思っています。
そして何よりも、大好きな歌を、世界中の人に聴いてほしい――。心からそう思います。
リアルとバーチャルの融合を推し進めてきたMRプロジェクトと、「武道館」という現実世界の大舞台
「765プロのアイドル本人が記者会見に登壇する」
「その会見を、実際にメディアの記者を呼んで行う」
「その場で“如月千早”の日本武道館単独ライブを発表する」
一見すると異例尽くしにも見える、今回の発表記者会見。「記者会見にキャラクター本人が登壇し、自身の武道館ライブを発表した」と書けば、たしかにそれなりの衝撃や話題性はありますし、「如月千早の武道館単独公演」というフレーズを抜き出すだけでも、それが長年のファンにとってビッグニュースであるのは言うまでもありません。
ですが、『アイドルマスター』シリーズ全体に関して言えば、今回の「記者会見」が特異だったわけではありません。むしろ近年は類似の施策も多く見られていましたし、遡れば、2018年開催のMRライブ「THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆」以降、同シリーズではリアルとバーチャルが混ざり合うコンテンツを模索し続けています。
おそらくは今回の会見も、そのような近年の取り組みの中の1つ。2022年に同シリーズが発表したIP軸戦略「PROJECT IM@S 3.0 VISION」が前提としてあり、特に「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」(以下「MRプロジェクト」)の流れを汲んでいる施策だと考えられます。
では、『アイマス』が取り組むMRプロジェクトとは、どのようなものなのか。当時のニュースリリースでは、以下の3つの軸を中心に説明されています。
- アイドル個人の魅力を活かしたマルチなタレント活動の強化
- XR(※)やリアルタイムモーションキャプチャ技術を活用した展開の強化
- 音楽ストリーミングサービスでのシリーズ楽曲展開
(※VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)の技術の総称)
ここで注目すべきは、上の2つの軸です。一言でまとめると、「XRやモーションキャプチャ技術を活用し、アイドル個人の魅力を活かしたタレント活動を強化する」こと。実際、近年の『アイマス』シリーズでは、この軸に当てはまるようなコンテンツやコラボレーション企画がしばしば行われています。
(【学マス】如月千早に聞くApple Music「空間オーディオ」の世界|♪アイヴイ/月村手毬【アイドルマスター】 – YouTube)
(魂ネイションズ公式アンバサダー「天海春香」からのお知らせ! – YouTube)
また、キャラクターを演じるキャストさんではなく、作中の“アイドル”本人が出演するタイプのライブやイベントも、今や珍しくありません。
それこそ、質疑応答で話題に出た萩原雪歩さんと菊地真さん、天海春香さんと秋月律子さんのライブもそうですし、2023年のMRライブ「765 MILLIONSTARS LIVE 2023 Dreamin’ Groove」もそう。2025年に入ってからも「961 PRODUCTION presents 『Re:FLAME』」の追加公演や「283 Production LIVE Performance [liminal;marginal;eternal]」が行われ、現地会場だけでなく、配信ではXRライブならではの演出を楽しむことができました。
先ほどの空間オーディオの動画やアンバサダー活動はまさに「アイドル個人の魅力を活かしたタレント活動」ですが、ライブもその「タレント活動」の一種だと言えます。しかも「如月千早」というアイドルに関して言えば、彼女の魅力とはすなわち「歌」。彼女の真価を発揮できる活動として、「武道館での単独公演」はこの上なくしっくりくるように感じます。
(ゲーム【ミリシタ】如月 千早 スペシャル動画【アイドルマスター】 – YouTube)
また、今回の発表がこれまでのXRライブと明確に異なる点として、「日本武道館」という会場を強調している点も挙げられます。
一連のMRプロジェクトを踏まえるなら、今回のライブは、アーティストの「聖地」という性質が色濃い「武道館」という現実世界の場所を前面に打ち出すことで、バーチャルな作品世界から、より“リアル”へと一歩踏み出した取り組みだと言えるのではないでしょうか。
「MRプロジェクト」は“MORE REALITY”を志向するプロジェクトとして進めているのですが、その根本には「Mixed Reality」、虚構と現実が溶け合う新たな世界観表現、いわゆる複合現実の拡張が1つのテーマとしてあるとも捉えています。なにがバーチャルで、なにがリアルで、といった二元的な解釈を越えた感動体験を味わえる、そんな世界観に可能性を感じています(後略)
(アイドルマスターの挑戦的なプロジェクト「vα-liv(ヴイアライヴ)」は何を目指すのか? 「PROJECT IM@S vα-liv」プロデューサーインタビュー – MoguLive)
そして、アーティストの聖地を舞台にするのであれば、そこに立つ1人目は「如月千早」というアイドルをおいてほかにいません。作中(アニメ・ゲーム)でも現実(ライブ・イベント)でも、誰よりも歌と向き合い、ずっと大好きな歌を歌い続けてきた、1人のアイドル。
そんな彼女の魅力を活かせる最高の舞台で、XR技術を活用したライブを、ファンに向けて届ける。前述の2つの軸を踏まえつつ、「武道館」という現実世界の音楽カルチャーと縁深い場所を舞台とすることで、MRプロジェクトが志向する「リアルとバーチャルが溶け合う世界観」を促進する。
この武道館公演には、そのような意図もあるのかもしれません。
「記者会見」という舞台で感じた実在感に、いつかの夢が現実になることを確信する
日本武道館と言えば、アーティストを志す人にとっては夢の舞台。
それは、「如月千早」という1人の女の子にとっても憧れの舞台であると同時に、長年にわたって彼女を応援してきたプロデューサーたちが夢見た、いつか実現すればと願った景色でもあったかもしれません。そのような意味では、今回のライブは、そんな数々の「夢」がついに現実となる舞台である。そう言えるでしょう。
筆者は今回、実際に記者の1人として現地で発表を聞いたのですが、この記者会見自体も、どこか不思議な、独特な体験だったと感じています。
もちろん、目の前に実態を伴ったアイドルがいたわけではありません。壁面ディスプレイに投影されたアイドルの姿は、通常のイベントで見るモニターと比べれば間違いなく鮮明で高精細でしたが、しかしそれでも、視覚的には平面の映像に過ぎません。目の前に「いる」と感じられるVRと比べれば、実在感はそこまで高くない。そう言わざるを得ませんでした。
ところが、いざ会見が始まり、舞台袖から現れた彼女が頭を下げ、マイクの前で一言発した瞬間――視界に映る風景が一変しました。
挨拶をする彼女の声が、記者たちを見回す彼女の視線が、そこに着席する記者たちが、会見を進行する司会の声が、壇上のマイクとその周囲に置かれたレコーダーが、その空間に漂う緊張感が、雄弁に語りかけてくる。その場を構成するあらゆる要素が、自分が今いる空間が「武道館ライブを発表するアイドルの記者会見場」であると認識させてくる。
――そこに、「如月千早」がいました。
少しだけ個人的な話をさせていただくと、そもそも「如月千早の記者会見に立ち会う」なんて体験をすることになるとは、この直前まで想像すらしたことがありませんでした。
時にアニメで、時にガラケーアプリで、時にライブ会場で見ていた765プロのアイドルが、現実世界で記者会見を行い、自分がその場に出席するなんて――。2011年にアニメ第20話を見て泣いていた当時の自分に伝えたとしても、きっと一笑に付されていたことでしょう。
ですが、「如月千早の記者会見」は現実に行われました。
もちろん、今回の会見に限らず、『アイマス』に登場するアイドルたちをリアルで見る機会は近年増えつつあります。XRライブで。企業や自治体とのコラボレーションで。vα-livの公式番組で。この数年間、彼女たちの活躍をいろいろな場所で目にした人も多いのではないでしょうか。20周年を経て同様の取り組みはますます増えていくでしょうし、それが今以上に当たり前になる日も、もしかしたら遠くないのかもしれません。
会見が終わり、その独特な緊張感から解き放たれ、ほっと息をつきながら、席を立とうとした瞬間。この日一番の「実在感」を覚えたのは、その、気持ちが緩んだタイミングで響いた、マイク越しの声だったかもしれません。
「あの、記者の皆様……? 本当に今日は、来てくださってありがとうございました。皆様のおかげで素敵な記者会見になったと思います。ご協力、本当にありがとうございました! 如月千早でした!」
堂々とした振る舞いで会見に臨むのみならず、最後に記者への気遣いまで示してくれたその声に、たしかにそこに「千早」がいたことを、強く実感せずにはいられませんでした。
20周年を迎えてなお広がりを見せ続ける、『アイドルマスター』の世界。来年1月、大勢のプロデューサーたちでいっぱいになった武道館で、みんなの「夢」が現実になる光景を見る日が、今から楽しみでなりません。
公演概要
- 公演名:如月千早武道館単独公演「Oath ONE」
- 開催日:2026年1月24日(土)
- 開催場所:日本武道館(東京都千代田区北の丸公園3)
- 出演:如月千早
如月 千早(きさらぎ ちはや)
- 誕生日:2月25日
- 身長:162cm
- 血液型:A型
- 星座:うお座
- 出身地:東京都
- 趣味:音楽鑑賞、写真
765プロダクション所属のアイドル。東京都出身の16歳。歌を愛し、常に高みを目指しストイックに音楽に向き合う姿勢とその卓越した歌声は多くのファンを魅了している。
©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.