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開発 2018.07.19

注目の新型ARヘッドセット「North Star」の作り方

(※本記事はexiii株式会社より許諾を得て、同社のブログ記事を編集・転載しています)

2018年6月6日、米Leap Motion社からARヘッドセット「Project North Star」がオープンソース化されました。

このヘッドセットを活用したインパクトのある動画が次々と公開されていることもあり、かなり期待感が高まっているのですが、残念なことに主要部品の多くが入手不可能な状態であり、組み立てることができません。
 
そこでexiiiでは、現在入手可能な材料で置き換えて簡易版のProject North Starを作成しました。簡易版では公式動画のレベルには劣るものの、Project North Starの持つポテンシャルは十分に感じることができます。
 
本記事では、この簡易版Project North Starの作り方をご紹介したいと思います。

目次

1.ライセンスについて
2.North Starについて
3.部品表
4.組み立て手順
5.セットアップ
6.おわりに
 

ライセンスについて

Leap MotionはProject North StarをApache License 2.0で公開しています。簡易版Project North StarはこのApache License 2.0で公開されたデータを使用しています。
 
簡易版Project North Starの3Dデータ、ドキュメントについてはCC BY 4.0にて公開します。こちらのリンク先の条件の範囲で自由にお使いいただくことが可能です。
(※データを使用される場合は「CC BY 4.0, exiii Inc.」という形でクレジットを表示してください)
 

North Starについて

本家Project North Starの作り方はこちらで確認できます。今回作成する簡易版では、以下の点を変更します。

Leap Motion Controller:既存のものを使用

Leap Motionからは「Leap Motion Controller(LMC)」の次世代機を使用する設計と、既存のLMCを使用する設計の二種類が公開されています。次世代機はまだ手に入らないので、既存のLMCをベースに作成しました。
 

3.5-inch 120Hz LCD:代用品のLCDを使用

このディスプレイはVS035ZSM-NW0という品番ですが、これは一般入手できません。販売元のBOEは大口の注文に対してのみ販売を行うそうです。代替品を探した結果、Raspberry Piに取り付けて使うLCDがちょうど3.5″でドライバ回路も含まれており、安価で購入できることが分かりました。今回はこちらを採用しました。
 

Display Driver

上記の代替品のLCDに含まれているためそちらで代替しました。
 

Reflectors:アクリルを切削加工

公開されている3Dデータを元にアクリルの切削加工を行いました。
 

反射防止コーティング:窓用ミラーフィルムを使用

単なるアクリルでは殆どの光を透過してしまうため、本家では50-50%の反射防止コーティングを行っているようです。簡易版では窓用のミラーフィルムを貼り付けることで適度な透過率と反射率を得られるようにしました。
 

OEM Headgear replacement:国内で入手可能なものを使用

本家ではデバイスを頭部へ固定するために溶接用のヘッドギアの使用を提案しています(安価で丈夫、装着感も良いです。North Starに限らずヘッドセット関連の多くのプロジェクトで流用できるのではないでしょうか)。本家で指定しているものは海外品だったため、日本で入手可能なものを選定して使用しました。

Al Bar:3Dプリントで代用

筐体とヘッドギアを繋ぐためのアルミレールです。手に入らないことは無いですが、作りやすさ優先で3Dプリント品で代用しました。
 

3Dプリント部品

新しいLCDが固定できて、HDMIケーブルとUSBケーブルが通せるように形状を変更しました。本家では複数種類のネジを使用していますが、簡易版ではM2L6セルフタップねじに統一できるようにしました。その他強度アップのための補強を加えました。
 

部品表

North Starの部品表はこちらのスプレッドシートを参照して下さい。各部品の3Dデータもスプレッドシートのリンクからダウンロード可能です。必要なデータをまとめてダウンロードする場合はこちらのリンクから
 
また、アセンブリ状態を見る場合はこちらのリンクからご確認下さい。
 

>組み立て手順

まず、切削加工後のアクリルの表面を耐水ペーパーで磨きます。研磨前は以下のような状態です。


 
粗い番手から順番に、表面の筋や模様が消えるように磨いていきます。最後に研磨剤とペーパータオル等で仕上げると以下のようになります。こちらでは#400→#1000→#1500→アクリサンデーの順で磨きました。


 
次にミラーフィルムをカットし、20x80mm程度の帯を8枚作ります。Reflector L,Rそれぞれの内面にミラーフィルムを敷き詰めて貼っていきます。

隣り合うフィルムとの端面を完全に揃える事はできないので、多少の重なりは許容して貼っていきます。外形からはみ出した部分はカットします。デザインナイフを使うとキレイに仕上がります。
 
完成したReflector L,RをReflector Holderにはめ込みます。下図の赤丸の箇所に接着剤を塗布して固定しています。


 
続けて、3.5” LCDをLCD Holder A,Bで挟みネジで固定します。同じものを2セット作ります。

 
作成したLCDのユニットをReflector Holderへ固定します。背面から6箇所をネジで固定します。


 
Reflector HolderにLCM Holderを取り付けます。5箇所をネジで固定します。


 
Leap Motion Controllerにケーブルを取り付けます。先にケーブルを穴に通してから、Leap Motion ControllerをLMC Holderに取り付けます。

Sliderに対してLeft Slide Rail, Right Slide Railを通します。その後LMC Holderにネジで固定します。

 
Top Coverを固定します。上から2箇所をネジで固定します。


 
下から4箇所をネジで固定します。

 
LCDにHDMIケーブル、USBケーブルを取り付けます。
 
溶接用ヘッドギアの両側面部のネジを取り外し、挟まれているワッシャ等の部材を取り除きます。


 
Sliderを挟み、再度ネジを締め込みます。

ヘッドギアが固定されたら完成です。ケーブルが複数本でてしまうので、結束バンドでまとめておくと取り回しがよいです。

 
 
 

セットアップ

3.5″ LCDのHDMIケーブル x2、USBケーブルx2、Leap Motion ControllerのUSBケーブルをPCへ接続します。HDMIポートの差込口が足りないときはHDMI-Display Portの変換ケーブルを使用します。
本家Leap Motionが公開しているUnity Packageをダウンロードして立ち上げ、こちらのリンクを参考に映像のキャリブレーションを行います。
 

おわりに

いかがでしたでしょうか。うまく動いた際にはぜひSNSで#LeapMotion #ProjectNorthStar #exiii等のハッシュタグを付けてシェアしていただけると嬉しいです。
 
Leap Motionは同社ブログの中で、Project North Starについて「オープンソース化し、ハッカーコミュニティの手に委ねる事で、ARの可能性についての議論や実験を加速したい」と述べていました。exiiiはこの思いに賛同し、簡易版Project North Starを作り公開しました。ぜひ多くの方に製作して頂き、この取り組みが広がっていく事を願っています。
 


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