グーグルが、3Dオーディオのスタートアップを買収していたことが判明しました。買収先はVRコンテンツ向けのソフトウェア開発実績もあり、技術の用途が注目されます。
元従業員は「オーディオ機器」開発を開始
買収の事実が判明したのは、米国のスタートアップDysonicsです。2011年に創業し、当初はヘッドフォン向けのモーショントラッカーを開発していました。これは市販のヘッドフォン等に装着し、使用者の頭の動きを検出。頭の向きに合わせて音を調整し、臨場感を生み出すというものです。その後、航空会社のヴァージン・アメリカと協同での機内エンターテインメント用音響システムや、VRコンテンツ向け3Dオーディオオーサリングソフトを開発してきました。
米国特許商標庁への提出資料によれば、買収が実施されたのは2020年12月。また共同創業者でCTOのRobert Dalton Jr.氏を始め、複数のDysonicsメンバーがLinkedInのプロフィールで、Googleへの移籍を公開しています。LinkedInによれば移籍後の業務は「オーディオ機器(開発)」、「Googleの幅広いハードウェアに向け、オーディオアルゴリズムを構築するチームで業務している」などです。
ARデバイスへの応用も?
グーグルはDysonicsの従業員だけでなく、知的財産も取得しています。その中には、バイノーラルサウンド(より高い臨場感のために人の頭を模した像の耳にマイクを取り付け収録された音響、VRでも使用されている)のトラッキング技術も含まれます。
では具体的にグーグルは、Dysonicsの技術をどのように応用するのでしょうか?1つ考えられるのは、同社のワイヤレスイヤホン「Pixel Buds」への応用です。競合であるAppleの「AirPods Pro」、「AirPods Max」は既に空間オーディオ(Spatial Audio)を実現しており、これに続くのではないかという推測です。
もう1つの予想は、ARデバイスへの搭載です。Daydream VRのサポート終了などVR事業からの撤退がささやかれる同社ですが、2020年夏にスマートグラス「Focals」開発元を買収し、ARデバイスへの関心はうかがえます。
今回の買収がグーグルのハードウェア開発にどう影響するのか、今後の動きが注目されます。
グーグルのVR関連動向については、こちらのコラムで詳細に取り上げています。
(参考)Protocol