主催者発表で約3万人もの、世界中のゲーム業界関係者、エンジニア、クリエイターが集結した「GDC 2025」。世界最大級のゲーム開発者向けカンファレンスとして、業界内外から高く注目されるこのイベントの現場の雰囲気はどのようなものだったのでしょうか。
4月10日、東京・SHIBUYA SAKURA STAGE 404 Not Foundで開催された「GDC2025 報告会」において、ゲーム制作においてのAI技術の活用、XRコンテンツ/メタバースの動向、インディーゲーム開発の新潮流を聞くことができました。その様子をお届けしましょう。

モデレーター・NINE GATES STUDIO代表/ゲームメーカーズ編集長 神山大輝さん

スピーカー・登壇者は株式会社Skeleton Crew Studio代表取締役/一般社団法人渋谷あそびば制作委員会 代表理事 村上雅彦さん

スピーカー・株式会社Pit-Step 代表取締役CEO 御前純さん

スピーカー・Mogura VR編集長 久保田瞬
ジェトロ主催の日本ゲームスタジオブースが出展
1988年、サンノゼで参加者20名という規模で始まったGDCは、現在サンフランシスコに会場を移し、世界最大級のゲーム開発者会議へと発展。前述の通り、世界各国から約3万人のゲーム関係者が集うイベントとなりました。
「開催期間の5日間には、セッションやパネルディスカッションが合計750件以上行われ、AAAスタジオによるビッグタイトルのメイキングから、キャラクターの髪のグラフィックス、アダルトゲームの制作方法に至るまで、多様な議題が取り上げられていましたね」(久保田さん)
GDC Expoと呼ばれる展示スペースには、約400社のゲーム企業が出展ブースを構えていたそうです。出展企業はDiscordやMeta、モーションキャプチャー系企業のほか、興味深いところとしてSecond Lifeがブース出展していたそうです。
さらにGDCの名物でもあるインディゲームアワードとなるGDC Awardsは、3000人ほど入る巨大なホールで開かれたとのこと。他にも様々なライブや、ネットワークパーティといったイベントが開催されました。

GDC Expoには、ジェトロ(日本貿易振興機構)の企画によって設置されたジャパンパビリオンもありました。ここに御前さんのPit-Stepの作品も展示されていました。
「日本の10社の展示にくわえ、特設Steamページを開設して、希望したインディースタジオや個人の開発者が作ったゲームやミドルウェア、ゲーム用アセット生成AIなどを展示していました。その10社のうち2社はGDC Best in Playを受賞されました」(村上さん)
「あとジャパンパビリオンでは、日本酒を振る舞っていましたね。ずっと賑わっている感じになっていました。弊社は最新のAIを搭載した、音声入力でしゃべれるゲームを展示していたのですが、そういった動線の工夫もあって、たくさんの方がジャパンパビリオンに訪れてくれましたね。また、もともと日本に居た方や、日本のカルチャーに興味を持っている方も、フレンドリーな感じでブースに来ていただけることが多かったかなと思っております」(御前さん)
低コストなGDCの歩き方

一般参加ではなく、いち企業として出展する場合は、数百万円もの出展費用がかかるGDC。しかし、この出展費用を無料にできる企画がありました。それがジェトロ(日本貿易振興機構)のジャパンパビリオンです。
「出展費用はジェトロに負担していただきました。彼らはスタートアップ向けのアクセラレーションプログラムを開催されているので、そこで担当者の方とお話をさせていただいていた時に、GDCの話があったので、もうこれは行かないとって思ってやりとりさせていただきました」(御前さん)
モデレーターの神山さん曰く、ジェトロのような取り組みはあまり知られていないという実情があるとのこと。彼らは、実力がある日本の企業を海外でアピールする活動を多く展開しているので、審査に通れば低コストで海外のイベントに出展できるメリットがあるそうです。
「ジェトロのサイトをちゃんと読めば、めちゃくちゃいい情報がいっぱいあるんですよね。最近だったら中東あたりのゲームマーケットのレポートとかも出されているんです。本当にスタートアップとかゲームスタジオを親身になって支援していただける機関なんですよね」(御前さん)
「ジェトロは、XRやメタバースに関するリサーチもしていらっしゃるんですよね。例えばメタバースブーム以降の韓国のメタバース市場レポートだったり、謎に包まれている中国のVR市場のマーケットリサーチとかを、普通に読むことができます」(久保田さん)

なお、日本-サンフランシスコ往復の渡航費は約20~30万円とのことです。
「宿泊費、食費の話となりますが、サンフランシスコだと、例えば一風堂のラーメンが3000円とかするんですね。レストランだと1万円を超えることもある。そこで、昼食がついているドミトリー型のホテルに泊まりました。会場まで徒歩15分くらいで1泊8000円くらいだったので、5泊+5回分の食費が4万円。ちょっと治安の悪い地域なのですが、めちゃくちゃ口コミがよくて、GDCに参加される海外の方が多く宿泊されていましたね」(御前さん)
「僕はホテルで原稿を書いたり深夜まで日本とミーティングしなければならないため、(相部屋の)ドミトリーを選ぶことができなかったんですよ。なので1泊3万5000円のところを選びました。代わりに食費を抑えるため、カップラーメンやパックごはんを日本から持っていきましたね」(久保田さん)
「良さそうなホテルだと1泊7万円くらいしますね」(村上さん)
UnityやEpic Gamesなどの企業が無料で提供しているパーティに参加することで、食費を抑えるという手段もあるとのこと。
「毎日、かならずどこかがパーティをやっていますよね」(久保田さん)
「パーティの集客力って凄いですよね」(村上さん)
「僕も事前にパーティの予約をして、ご飯食べてネットワーキングしていました」(御前さん)
ゲーム開発において、様々な分野で活用されてきた生成AI

村上さんいわく、GDCで感じたゲーム開発のトレンドの1つに、AIの活用があったそうです。
「インディーズにしても、AAAと言われる大規模開発にしても、AIを活用した制作事例がトピックになっていましたね。インディーズの場合ってバジェットが少ないので、効率化みたいな使いかたををしていることが多かったです。AAAも同じように、パイプラインに組み込んでいましたね」(村上さん)
この背景には、コロナ禍以降の開発者の大規模レイオフが関係していると見ています。
「特にアメリカは、だいたい40%ぐらいの方がレイオフされたか、レイオフの影響を受けたといった報告が上がっていました。それぐらい人件費が高いんですよね。そのためAIを使って、人を少なくしつつ開発をキープするみたいなことがトレンドになっているという印象がありました」(村上さん)
実際に1001NightsにはMMLモデルを使ったNPCが導入されており、キャラクターの言動を覚えてオーガニックな会話をしてくるゲームも出てきているそうです。
「またゲームシステムそのものだけではなく、QAだったり翻訳みたいなところと、多分マーケティングみたいなところを補助する目的でも生成AIに期待している人がいると感じました」(村上さん)

IGFアワードに関しては、大賞のSeumas McNally Grand PrizeのほかNuovo Award、Wings Awardも受賞した「Consume Me」に注目されました。
「アジア系の方が、自分の高校生の時の体験をゲームとして追体験をするみたいな内容なんです。見た目はすごくポップで可愛いんですけど、摂食障害みたいな体験とか、親との確執みたいなことを体験するっていうゲームでして。ゲームというものが、今まで面白い体験を人に提供するとか、普段できないことをするみたいなところから、個人の体験を人にシェアするみたいなことが価値として、文化として広がってきているのかなと感じましたね」(村上さん)
なおIGFアワードは大きな盛り上がりを見せており、むしろIGFアワードが終了したら帰国するといった参加者も多かったそうです。
「そもそもインディーゲームってマイナーかつ尖っててとか、大型タイトルがある一方で、そのアンチテーゼとしてのインディーゲームって立ち位置がだったと考えてたんですけど、最近、欧米のAAAスタジオがレイオフを繰り返すという世界になってしまっている中で、インディーの方がより注目度が上がってる印象があります」(久保田さん)
「GDCには、AAAタイトルなどの大規模開発をしたときの技術だったりノウハウを、ほかの開発者にシェアをするっていう流れがあったんですけど、そこからコロナを経て、大きくガラッと変わってるのもあるかもしれないのですが、ゲームエンジンやテクノロジーの発達によって、中規模なスタジオでもAAAレベルのものが作れるようになってきているんですよね。それもあって最近のトレンドは、AAAスタジオに入るよりも中規模の会社、またミドルウェアのパートナーであったりとか、フリーランスのパートナーと組んで、世界最高峰のものを目指そうぜみたいな流れが多くなってきてる気はしますね」(村上さん)
「ゲームって改めてオリジンに戻ったなっていうか、なぜそれを作るのかとか、なぜそれを作りたいのか。プライベートな価値観みたいなことを強く押し出すものの方が人に響くような時代に戻ってきていると感じますね」(御前さん)
MetaがハードではなくVR SNSを推す、その理由

「2016年頃はVRDCというコーナーもあったりして、数多くのVRの展示があったんですけど、それと比べると、2025年現在はわずかになりました」という久保田さんは、XR/メタバース関連の話題を報告しました。

「XR関連のセッションはいろいろありました。その中身をよく見ていくと、スポンサードセッションが多かったんです。基本的には、自分たちのプラットフォームに向けて新しいゲームを作ってほしいってアピールでしたね。その中で意外だったのが、Snapです。彼らはSpectaclesというARグラスを作っていて、直近のバージョンでは6DoFのARグラスとなりました。そして一緒に手を組んでいるのが、ナイアンテックなんですよね」(久保田さん)
グローバルでは数億人ものアクティブユーザーがいるSNSのSnap。Spectaclesは日本で発売されていないために認知度は低いけれども、北米には一定数のユーザーがいるといいます。
「従来のSpectaclesは写真や動画を撮るといった機材でしたが、6DoF化したことで空間コンピューティングの領域に入ってきた。それをゲームイベントでPRするというのが印象的でした」(久保田さん)
他のセッションについては、Roblox、UEFN、そしてMetaのHorizon Worldsが目立ちました。
「いずれも狙っていることは同じですね。とにかく開発者を、自分たちのプラットフォームに呼び込みたい。GDCに来てる人たちは、基本的にはプロのゲームエンジニアさんなので、UnityやUnreal Engineユーザーばかりなんですよ。そのため、それらのゲームエンジンに比べて、自分たちのデベロッパーツールがいかに素晴らしいかっていうのを伝えるセッションをたくさんやっていました。とはいってもただの宣伝ではなく、パネリストとしてトップクリエイターを呼んでいるので、ノウハウが詰まった講演だったり、成功しているビジネス活用事例が中心でした」(久保田さん)
その中でも特徴的だったのが、Meta。彼らはMeta Quest 3/3Sといったハードではなく、Horizon Worldsをアピールしたというのです。
「こういう攻め方をするのかと思ったんですけど、MetaってAIの会社でもあるんですよね。そしてMetaのLlamaベースの生成ツールをHorizon Worldsのクリエイティブツールに入れてきました。そんな講演を複数本、いろんな切り口でやってたんですよ。普通に手作業だけで作ったら2週間かかるメタバースワールドが、AIと喋りながら6時間で全部作れるんだよ、すぐにパブリッシングできるよ、みたいな感じで。これは既存のゲームエンジンに対してもそうですし、Robloxやフォートナイトのような、先行しているメタバースプラットフォームに対抗して、自分たちのAIの強みをアピールしていましたね」(久保田さん)
なお、GDC Expo会場において、XR系グラス型・ゴーグル型ハードウェアの展示は残念ながら極少数になったとのこと。新デバイスとしては、XEOというメーカーの8Kヘッドセットがあったそうです。
「比較的小型で軽量。Bigscreen Beyond 2や、MeganeX superlight 8Kの競合品になりますね。値段とか、詳細のスペックはまだわかりませんでした。他のハードウェアとしては、VRゲームやVRChatと連携する振動ベストを開発しているbHapticsが出展していました」(久保田さん)
AIを用いた、新たなゲーム表現が増えていく時代に
「最初に注目したのは、NPCの生成AIを組み込めるゲームエンジンのInworld AIです。とあるスタジオが生成AIを活用したパーティーゲームを作り、それをDiscordで遊べるようにしてたところ、確か数か月で2000万人ぐらいがプレイをした。しかしAIのコストが高騰しすぎて大変なことになり、それをInworld AIに助けてもらった、という話を聞きました。また、4体のNPCが喋っている場所に近づいていって、いきなり喋りかけるシミュレーションも面白かったですね。「誰だコイツは」みたいな感じでその4体のNPCが反応するのですが、なんか人間の世界に近くなってるなって感じましたね。また生成AI NPCと協力する脱出ゲームもありました。複雑なギミックとかがあるのですが、NPCに音声チャットで助けを求めながらサポートしてもらうものでした」(御前さん)
2021年に設立されたInworld AIですが、様々なベンチャーキャピタルから資金調達をしており、年々その規模が大きくなってきているとのこと。ゲームに導入したときのレスポンスも次第に改善されてきており、面白い存在だといいます。
GDC Best in Playの受賞作のなかでは、「Cursed Crown」と「AI2U」に注目されました。
「『Cursed Crown』は本物そっくりのAIキャラクターと、絆を深めるというところが肝になっているということでした。残念ながらピッチではあんまり詳しい内容を言ってなかったんですけど、情報を集めた結果、プレイヤーは、人間のような行動をとるAI対応のNPCとチャットをして、彼らと関係値を向上させたり、意識を高めることによって、ゲームを進めていくもののようですね。『AI2U』は3人のAI駆動ヒロインと掛け合いをしながら、脱出するというゲームでした。記憶喪失の主人公がヤンデレヒロインに殺されないようにするという、特殊なシチュエーションのゲームなんですよね。ヤンデレっていうのはたぶん日本特有のカルチャーだと思うので、それをニューヨークに住む中国系のかたが作っているというのも面白いところです」(御前さん)
AIにまつわるセッションに関しては、テンセントとUbisoftが面白かったといいます。
「テンセントは、サポート役としてAIコンパニオンを導入してインタラクションの突入感を向上させたそうです。また別の会社と協力をして、AIによるゲームのコーチングに関してのセッションもありました。ゲームの中だけではなく、ゲームの外でもAIを使うっていうところに注目しましたね。UbisoftはOCC感情モデル・認知プロセスモデルを基盤として、よりリアルな感情表現をNPCに導入したそうです。よりNPCを生きたキャラクターに昇華させていくみたいなところが興味深かったですね」(御前さん)
ゲーム業界の大企業がブース展示を取りやめるなど、ネガティブな話題もあったGDC 2025。しかし、現地にいった方々のお話を聞く限り、新たな潮流が生まれてきているとも感じます。
特にゲーム/メタバースのプラットフォーム間競争や、生成AIの活用事例など、XR/メタバース/ゲーム業界を追いかけるにあたって重要なトピックばかり。今後のゲーム開発の方向性を示す貴重なプラットフォームとして、その意義を強く再確認させるイベントだったようです。



