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テック 2021.03.18

ARグラスのコントローラーは“リストバンド” フェイスブックが構想を発表

2021年3月17日、Facebookはメディア向けラウンドテーブル「Inside the Lab」を開催した。今回のラウンドテーブルでは、Facebookが開発中のARグラス、その入力・操作インタフェースに関する研究内容が発表されている。

短期的な答えは「リストバンド型」

2021年現在、市販されているARデバイスの操作方法は大きく分けて2通りある。NrealLightやMagic Leap 1のような、コントローラー型(正確には、NrealLightは接続したスマートフォンをコントローラーとして使う)と、HoloLens 2のような手・指を参照するハンドトラッキング型だ。しかしFacebookが提示したのはそのどちらでもなく、筋電位センサを使ったリストバンド型だった。

FacebookがARデバイスの入力技術において、最も重要視している要素はふたつあるという。「文脈を理解するAI(Contextual AI)」「超低フリクション入力(Ultra low-friction input)」だ。前者はユーザーの意図や周辺環境を理解・推論し入力を助け、後者は入力インタフェースの層を極力減らし、指先のわずかな動きだけで入力を実現する。一般ユーザー向けに、ARグラスを実用的なものとする上では必要不可欠だ。

しかしFacebook曰く、こうしたシステムが実現するのは「何年も先になる」。平面ではなく空間で、かつ物理的なボタンを使わない入力技術のスタンダードを完成させるには時間がかかるし、そこに文脈を理解するAIも加わればその難度はより高まる。今回は短期的に実現可能性のあるバージョンとして、リストバンド型を提案したというわけだ。

余談だがフェイスブックは2019年、指トラッキングを開発していたCTRL Labsを買収しており、同社の元CEOであるThomas Reardon氏(現Facebook Reality Labs所属)が今回のラウンドテーブルに登壇していた。CTRL Labsの技術が資産となっていることは間違いないだろう。

手首は「プライバシーが確保できて、手間が少ない」?

さて、ではなぜ手首なのか? 例えばAmazon EchoやGoogle Homeのような音声操作は直感的だが、公共の場ではプライバシーが確保できない。また、周辺の雑音によって精度が低下する恐れもある。コントローラーやスマートフォンを利用する場合、そもそも「別のデバイスを使う必要がある」時点で手間が増えてしまう。

これらの欠点を克服すべく、Facebookが検討を繰り返して得られた結果がリストバンド型デバイスだ。人の手首は(今のところ)パーソナルなものだし、腕時計のようにほぼ一日装着していても見た目に違和感はない。さらに手の近くにあることから、筋電位センサでの入力でも直感的な操作を実現できるし、触覚フィードバックを利用することで、例えばメールの重要度に応じた振動通知の出し分けも可能になる。Facebook Reality LabsのSean Keller氏は、「人は触覚を通じて、あるいは触覚だけを通じて言語を習得できる可能性がある。全く新しい世界が広がろうとしており、それは手首に装着した触覚システムから始まる」とも語る。


(Facebookが研究中のプロトタイプのひとつ「Tasbi(Tactile and Squeeze Bracelet Interface)」。6つの振動アクチュエータから構成されており、手首に圧力を加える)

もちろん、すぐリストバンド型のコントローラーが製品化されて万事解決、というわけではない。現時点では研究段階であり、「短期的なソリューション」ではあるものの決して完成形ではない。Facebookは研究中のプロトタイプをいくつか挙げつつ、それらのいくつかは「将来的に有望」であると語った。このことは大きい。

冒頭で述べたように、ARグラスの入力・操作インタフェースの標準はまだ決定打になるものがなく、開拓の余地は広がっている。今後各社がARグラス向けにどのような入力系を発表するのか注目したい。


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