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企業動向 2026.01.07

40-60代の女性がメイン層、年間12万人が来場、異色のVR体験施設「Immersive Journey」はなぜウケるのか?

2024年12月横浜駅近くの商業施設アソビルにオープンしたVR体験施設「Immersive Journey」。開業後、多くの来場者を魅了してきた。

丸1年が経過した2025年11月末に発表された1年間の来場者数は12万人。そして女性比率6割、主な年齢

層が40-60代というユーザー層も合わせて発表された。この手のVRヘッドセットを装着して体験するコンテンツは、通常は若年層に受け入れられやすい。そんな状況でこのユーザー層のデータはなかなか目を疑う事実だ。

筆者が施設を訪れた際も40代の女性グループが楽しそうにカウンターに向かう様子を何度も見た。Google Map、アソビューでの評価も満点近く、リピーターも多いとのこと。


(画像は公式サイトより引用)

現在、国内外問わずVRを体験できる「ロケーションベースVR(施設型VR)」が盛り上がり始めている。コロナ禍以前にもこのロケーションベースVRの波はあったが、オペレーション費用の高さによる収益率の悪さ、注目は集めるものの継続的な集客の難しさ、など様々な理由でコロナ禍の到来とともに多くのロケーションベースVRは姿を消した。

では、Immersive Journeyのようにコロナ禍以降に登場したロケーションベースVRは何が違うのか?
そして、ロケーションベースVRを提供する際に見過ごされがちなのが再現性だ。「ロケーションベースVRがおしなべてうまくいく」のではなく、「上手くいくロケーションベースVRは、その結果にたどり着くべくしてたどり着いている」。見様見真似ではない、成功率を上げるヒントを探る必要がある。

日本国内でロケーションベースVRの最前線を走るImmersive Journey。その運営会社であるCinemaleap株式会社の代表・大橋哲也氏にインタビューを行った。

第2世代のプレイヤーが活躍し始めたロケーションベースVR事情

——今まで大橋さんはCinemaleapの前は映画業界にいらっしゃいました。同じメディアだとしても、映画とXRでは異なる媒体だと思います。改めて、XRをどういう媒体だと捉えていますか?

大橋哲也氏:VR体験時には「本当に目の前にその人がいる、その場所に行っている」という実在感がありました。自分がその空間の中に入り、登場人物たちと出来事を体験していく。本当に映画が立体になって、その世界の中に入り込むようなものだというのは、2016年頃に映画祭でVRを体験した時から思っていました。

それがImmersive Journeyのようにいわゆる“フリーローム”で「歩き回る」体験になると、体験の質が上がった感覚があります。「Tonight with the Impressionists Paris 1874 -印象派画家と過ごす夜-」の作品には、座って体験するバージョンもあるのですが、同じものを見ても体感は全く違います。

座って体験すると「よくできたものだね」という感じなのですが、歩くことによって全く違う次元の体験になりました。しかも、それが100レベルではなく500レベルくらいに変わってくるので、より長い時間その世界に滞在できる。「歩き回るサービス」になってくると、そこがさらに強調されます。より日常的な世界と変わらないような体験に近づいてきた、と感じています。

——業界としては、ここ最近日本国内でもロケーションベースのVRが増えてきました。コロナ後にいよいよ本格的な動きが日本国内でも始まったかなと。そんななかで、Immersive Journeyはその先人を切っていたのではないかと思います。1年経って、日本での取り組みの広がりはどう感じていますか?

大橋氏:ロケーションベース業界全体で言えば、やはりフランスや中国など、海外が先行しています。その中で、グローバルで大成功している「Sandbox VR」があったり、そういった成功例を意識している取組も増えてきました。

コロナ前のロケーションベースVRは、ビジネスモデル自体を開発していかなければなりませんでした。VR自体も新しい上に、届け方も新しく発明しなければならない。リスクにリスクを重ねるような試みでした。

最近は、だんだんと型が見えてきていると思います。グローバルで「こういう攻め方だったら、しっかり採算も取りながらいいものを提供できるんじゃないか」という型が見えてきたところから、自分たちを含めて日本国内でも「第二世代」のプレイヤーが出てきている、と思っています。

今後は、どういうものをコンテンツとして体験を提供するのか、どういうオペレーションにするのがいいか、その精度の勝負になっていくのかなと思っています。

——そんな中、この実際に来場しているユーザー層は本当に狙っていたらできなかった結果だと思います。

大橋氏:「VRで酔う」という方の割合も、ご高齢の方のほうが高くなります。そういうこともあって、狙ったというよりは、本当にそういう方々に評価されるようなものが届けられたということだと思います。何か欠けていたら、「いまいちだった」「やっぱりVRはダメだった」となりかねなかったと思います。

ただ作品を輸入するだけではない、Cinemaleapならではの「こだわり」

——「Tonight with the Impressionists Paris 1874 -印象派画家と過ごす夜-」では、声優に梶裕貴さんや子安武人さんなど豪華な声優陣を採用しています。1作目から声優にこだわっている印象です。手応えがあったのでしょうか?

大橋氏:やはり声で体験が全然変わります。声優さんの力量もそうですし、翻訳もでも違和感のある翻訳にならないように気をつけています。

元々、Immersiver Journeyの取締役である待場さんがローカライズのプロデューサーなので、キャスティングなども含めて担当してもらっています。マーケティング的な意味合いもありますが、声優さんの力量で体験の質は変わります。

特に「Tonight with the Impressionists Paris 1874 -印象派画家と過ごす夜-」はキャラクターがみんな同年代の男性です。そのため、キャラをうまく演じ分けないと区別がつかなくなってしまいます。かなり議論を重ねました。

——どのような議論を重ねたのでしょうか?

大橋氏:登場人物たちが、どういう感じの喋り方なのか、どういう関係性なのか。主に原作者であるフランスのスタジオ・エクスクリオや、監修に入っていただいている赤松先生にアドバイスをいただきながら作っていきました。

事前のプリプロダクションの部分で、「このキャラクターはこういうイメージだよね」というのをしっかりすり合わせをしています。もともとエクスクリオが制作した時点で、オルセー美術館が監修して「時代設定的に合っているか」といった、そもそものコンテンツ的な監修は入っています。

その後、日本語版にローカライズする時の議論としては言葉遣いがあります。言葉遣い一つで人間関係やキャラクターが変わってしまうので、かなり丁寧にやっていきました。例えばモネとマネの関係性を考えると、「こういう言葉遣いはしないでしょ」といったツッコミがあり得るわけです。赤松さんたちにしっかり監修してもらいました。

——制作時だけでなく、ローカライズ時でも監修していて、二重の監修体制なんですね。

大橋氏:エジプトの時もそうでした。元々のコンテンツがあって、それを日本語版にする時に吉村作治先生にも監修してもらい、「専門家的な視点からはこうだ」「言語のニュアンスはこっちなんじゃないか」といった調整を行いました。翻訳者さんだけでは分からないところもあったりするので、そこをしっかり監修してもらいました。

——さらに声優さんにもこだわると。

大橋氏:各キャラクターはこういうイメージで、というのをはっきりさせてから、声優さんにもお伝えしています。

——僕はそこまで声優さんに詳しいわけではないですが、よく聞く声の方々が続々と出てくるので、引き込まれました。特に子安さんなどはすごく独特で、キャラ立ちもしている声優さんなので。うまくマッチすると声優さんにも没入感があるんだなというのは感じました。

大橋氏:そうですね。フランスの方々が聞いた時に、「全然別の体験だ」と驚いていました。「日本語で、フランス人がやっている」みたいな体験というか。

ただ日本語を当てただけのものは聴いていたらすぐに分かります。海外で体験した日本語対応のコンテンツには、とても聞けたものではない、というものもありました。やはりローカライズがちゃんとうまくいくかどうかで受ける印象が変わってしまうので、そこは気をつけないといけないと思っていました。

——確かに、海外のものを日本に持ってきた時のツッコミどころは多くなってしまいがちですよね。字幕を出したらフォントが変だったり、声優さんが声を吹き替えていても、読むスクリプトがいまいちで違和感になったりします。

大橋氏:VRは特にリアルさを求めてそこの世界に行っていると言っているのに、そこに違和感があったら「架空でしょ」と思われてしまいますからね。

名古屋に新店舗、日本発コンテンツ開発も進行中

——今後の展開について教えて下さい。

大橋氏:Immersive Journeyでは、体験の前後などももっと充実させようと考えています。入ってから出るまで、テーマパーク的な世界観を持って体験できるようにできればいいなと思っています。

——施設としてもアップデート予定なんですね。

大橋氏:元々ディズニーで働かれていた方など、施設・店舗の世界観を作ったりすることに長けた方もチームに入っています。そこでしっかり運営の部分もアップデートしていきたいなと思っています。

VR体験は本当に手がかかります。装着の手際だったり、接し方だったり。また、物販とか体験後のエリアなども含めて、もっとやれることが多いと思っています。

——横浜もアップデートするし、名古屋で新店舗をオープンする時もそういった知見を注入していくということでしょうか。

大橋氏:常に日々アップデートはしていますが、そういったところでより体験価値を高めていく。最近「テクノロジーとクリエイティブとホスピタリティ(おもてなし)を届ける」というミッションを策定しました。3つが揃わないとなかなかいい体験にならない、と思っています。

——名古屋には横浜と同じものを全く同じように持っていくわけではないということですね。

大橋氏:それぞれで運営は少し変わってくると思います。

——Immersive Journeyではエジプトのピラミッド、ヨーロッパの絵画と、それぞれでテーマを選んできました。新たなコンテンツは日本の浮世絵をテーマにしたものになるとのこと。選定にあたってのポイントは何でしたか?

大橋氏:まずは、時代や場所の制約を超えて「どこかへ行きたい」というニーズに応えるものを作ろう、というところから企画が始まりました。その中でいろいろなアイデアが出たのですが、今回は第一弾ということもあり、日本だけでなく海外にも届けていきたいという狙いがあります。
海外の人がパッと聞いた時にイメージがつく題材でないと、なかなか広がりません。例えば中国であれば「万里の長城」であれば、誰でも知っていますが、海外の人は分からないような世界遺産も多くあります。

そもそも「イマーシブ・ジャーニー(Immersive Journey)」と名付けているように、この施設には「旅に連れていく」という要素があります。映画館のように、コンテンツごとの興味関心によって、その場所に集まる人の性質も変わっていくのではないかと考えています。
最初は市場を切り開くために今回の題材を出していきますが、ゆくゆくは色々なテーマの作品を提供できるといいですね。

——いよいよ独自色が出てきますね。

大橋氏:オリジナルの展開が進んでいけば、さらに胸を張ってこういったフォーマットでやっていけると思っています。

——ありがとうございました。

公式サイトはこちら:https://immersivejourney.jp/


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