XR/メタバース/VTuber専門メディア「Mogura VR」は毎週、Podcast「もぐラジオ」を配信中。「テック・コンテンツ業界の最前線を掘る」というコンセプトのもと、すんくぼ(Mogura VR 編集長)とゆりいか(Mogura VR 副編集長)が業界の注目トピックを語ります。
この記事では、最新回(#191)の内容をかいつまんでお届けします。
ゆりいか:第191回のテーマは「Meta Ray-Ban Displayを購入! その使い心地は?」です。動画をご覧の方は、久保田編集長が何かを装着しているのが分かるかと思います。
すんくぼ:いま、買ってきたばかりの「Meta Ray-Ban Display」を装着しています。
ご存じない方にお伝えすると、Meta Ray-Ban Displayは日本では未発売です。購入するにはアメリカなど海外に行く必要があります。今回、ラジオ再開のきっかけにもなったのが、このデバイスです。収録しているのは、2025年の10月14日ですが、アメリカでは9月末頃から発売が始まっていました。新しいデバイスは、体験して語るのが我々の役目ですので……。
ちなみに買ってからまだ4時間ほど、触り始めてからは2時間ほどです。なので、まだ深くは語れませんが、今回は購入のあれこれや、装着感などの初見の感想をお話しできればと思います。
予約から購入までの険しい道のり
すんくぼ:まず、購入までのストーリーをお話しします。Apple Vision Proの時も大変でしたが、今回も大変でした。購入の手間が非常にかかります。手順が分かりにくい、というのが正しいですね。発売初日も情報が錯綜し、メタが後からブログで詳しい購入方法を補足説明する事態になっていました。
まずMetaのサイトから、実店舗でのデモ(試着)を予約するのですが、最初のトラップとして、日本では予約ボタンが押せません。「日本では利用できません」と表示されます。
すんくぼ:アメリカにいることにして進むと、デモの予約画面が出ます。視力矯正が必要な人への注意書きや、人気で予約が取りにくい旨が書かれています。私はメタ本社のお膝元、サンノゼという都市で購入しました。
すんくぼ:購入できる店舗はいくつかあります。Ray-Banの公式店、サングラスハット、レンズクラフターズ、家電量販店のベストバイ、メタの直営店メタラボなどです。ですが、予約スロットが全然ないんです。
すんくぼ:日付を押しながら空きを探します。私はRay-Ban公式店で、10月13日の夜8時30分という枠を予約できました。飛行機はサンノゼに飛んでいるJALグループのLCC、ジップエアの予約を取りました。コロナ禍以降、航空券が高騰していますが、ジップエアは数万円台から予約できます。これがなければ、購入をためらっていたかもしれません。
予約キャンセル通知と、まさかの在庫なし
すんくぼ:店舗に向かうまでは順調でしたが、ここで悲劇が起きます……。予約は夜8時半だったのですが、夕方5時過ぎに、「予約時間に来なかったからキャンセルしたぞ」という内容のメールが届いたんです。
ゆりいか:ええ!
すんくぼ:メールには予約時間が8時半と書いてあるのに、なぜか3時間前に来なかったことになっていました。電話番号も分からず、行くしかないので8時20分に店に行くと、「待ってたよ」と言われました。メールのことを話すと、「全員に送っちゃってるみたい」と笑われました。
ゆりいか:うわぁ……アメリカっぽいですね。
すんくぼ:アメリカすぎます。店頭ではiPadで予約者を探し、チェックイン処理をしていたので、予約システムは機能していましたね。デモ自体はすぐ終わって、私はメガネの上から装着(メガネオンメガネ)できました。
サイズはスタンダードとラージの2種類あります。私はスタンダードでした。また、操作に使うリストバンド型コントローラーがあります。これは手首の太さでサイズが変わります。
ゆりいか:リストバンドですね。
すんくぼ:このデバイスは装着確認(キャリブレーション)がない代わりに、リストバンドをしっかり締める必要があります。そのためサイズがシビアで、3サイズありました。私は「2番」だと言われました。デモは5分ほどで終わりました。しかし、購入しようとしたら、「在庫がないよ」と言われました。
ゆりいか:衝撃ですね。
すんくぼ:予約時に在庫がない場合もあるとは書かれていましたが、まさか自分が当たるとは……。滞在22時間なので延長もできません。「わざわざ日本から来たのに」と困った顔で伝えたんです。すると、本当に偶然ですが巨大なショッピングモール内の5つ隣に、同じく取り扱い店の「サングラスハット」があったんです。
店員さんに「そこならあるかもよ」と言われ、急いで向かいました。閉店時間が迫る中、走り回って店にたどり着きました。すると「あるよ」と。普通はデモが必要ですが、「Ray-Banでやった」と伝えました。ただ、リストバンドが一番小さい「1番」のサイズしかないと言われました。
私は「2番」だと言われていましたが、「1番でいい」と。店員さんには「本当か?」と何度も笑われました。「買わないと帰れないんだ」と伝えて、なんとか売ってもらいました。
ゆりいか:なにもかもギリギリ。
すんくぼ:変なメールから始まり、在庫なし、サイズ違いと、本当にギリギリでした。もしリストバンドのサイズが合わなければ、NGで買えなかった可能性もあります。
すんくぼ:色々なものを犠牲にして日本から来たのに、「何の成果もありませんでした」では立ち直れませんでしたから。
ゆりいか:本当ですよ。
すんくぼ:無事にホテルに帰り、開封して少し触った、というのが現状です。
ディスプレイは「外から見えない」
すんくぼ:では、早速使ってみます。ゆりいかさんにメッセージを送ってみます。まず、こめかみのあたりを二本指で叩くと、ディスプレイが起動します。ここがタッチパネルになっているんですよね。
この時点で、よくできているなぁと感じます。情報が表示されるタイプのグラス、いわゆるARグラスなどは、レンズに何かが映っているのが相手に分かりやすいから「話を聞いているのか」と思われがちですが、このデバイスは本当によくできていて、外からはほとんど分かりません。
ゆりいか:こちらから見ても確かに分からないですね。
すんくぼ:周りの明るさに応じて輝度も変わります。いま、操作しなかったらすぐに表示が消えました。バッテリー消費を抑えるため、必要な時だけ呼び出す仕様ですね。
すんくぼ:操作はリストバンドで行います。親指で操作し、選択はおなじみのピンチ動作(親指と人差し指をつまむ動作)です。
いま、メッセンジャーでゆりいかさんにメッセージを送りますね。音声入力もできます。まだ英語しか認識しないため、英語で送ります。
ゆりいか:あ、メッセージ来ました!
すんくぼ:今、私はディスプレイを見ながら操作していましたが、外から見ると、あまりそうは思われなかったのではないでしょうか。
カメラとズーム機能
すんくぼ:今見ている景色の写真も送れます。
ゆりいか:おお! 目の前のパソコン画面が映ってますね。
すんくぼ:動画も撮れます。面白いのが、リストバンドでこういう動作をするとズームができるんです。
ゆりいか:デバイスの光が点滅しましたね。
すんくぼ:動画を送りました。
ゆりいか:気軽ですね。
すんくぼ:動画が来ましたか?
ゆりいか:来ました。ただ、動画撮影中はズームはしないようですね。
すんくぼ:そうですね。ズームした状態で写真を撮る、ということのようです。
優秀なリストバンド操作と、右目だけの表示
すんくぼ:操作系はかなり優秀で、誤動作はほぼ起きません。反応がすごく良いです。これまでに出た他のリストバンド型デバイスと比べても、圧倒的に良いと思います。ただ、慣れるまでは指をどれくらい動かせばいいか分からず、大げさに動かしがちです。
ポケットの中でさりげなく操作できるのが、このデバイスの利点だと思います。慣れれば、少し動かすだけで良さそうです。地味に良いのが、入力が成功するとリストバンドが振動することです。
ゆりいか:それは分かりやすいですね。
すんくぼ:ディスプレイ上の操作ですが、振動による手触り感があるのは良い点です。ディスプレイ表示が外から分かりにくい理由の一つは、表示されるのが右目だけだからですね。
右目の、さらに右端にちょこんと表示されます。解像度は600×600ピクセルで、くっきり明るく見えます。
すんくぼ:ただ、これを使い続けて目に影響が無いかは少し心配ですね。
高速なリアルタイム翻訳と、懸念されるズーム機能
すんくぼ:店頭で体験した機能ですが、リアルタイム字幕が非常に便利でした。Metaの発表会でもアピールされていましたが、特に字幕の応答速度がとても速かったです。スペイン語が話せる店員さんが流暢なスペイン語を話すと、一瞬で英語の字幕が目の前に表示されました。これは驚きます。
ゆりいか:海外旅行で重宝しそうですね。
すんくぼ:さらに「フォーカス機能」もあります。話している人の方を向くと、その人の声だけが字幕になります。複数人がいる場所でも、目の前の人の声を選んで翻訳する「仕分け」をしているようです。これは便利だと感じました。
賛否両論あるようですが、カメラのズーム機能も面白いです。これまでのメタのAIグラス(カメラ付きメガネ)にはズームがありませんでした。今回、ディスプレイでプレビュー(映像の確認)ができるようになり、ズームが解禁されました。
ただ、こういったデバイスで懸念されるのが盗撮などの問題です。ズーム機能は、正直に言って良くも悪くも、という部分です。
ゆりいか:パッと見では撮影しているとは気づきにくいですよね。
すんくぼ:これは気づかないと思います。使う人の良心に委ねられますが「使ってはいけない用途がある」と感じてしまいます。
ゆりいか:使い方がユーザーの良心に委ねられる点は、スマートフォンも同じではありますけどね。
重さ、バッテリー、そして視力矯正の「地獄」
すんくぼ:重さについてです。これまでのメタのAIグラスと比べると、ディスプレイが搭載された分、重くなっています。今のところ、重さは気にならないレベルです。見た目は「大きいサングラス」という感じです。以前のモデルと比べても、サイズ感はあまり変わりません。厚みは違いますが。
ゆりいか:(比較を見て)ああ、確かに。
すんくぼ:これまでのAIグラスを使ったことがある人なら、違和感は少ないと思います。ただ、普段から軽いメガネを使っている人にとっては、重いと感じるかもしれません。
次にバッテリーですが、これは1日使わないと分かりません。スペック上は実働6時間とありますが、動画撮影などで消費電力は変わります。ディスプレイがすぐに消えるなど、省電力は徹底されている印象です。日常生活でスマートフォン(スマホ)の代わりにどれだけこれを使うか、という使い方次第で、バッテリー評価は変わってくると思います。
ゆりいか:観光地で地図を頼りにしている時に、電源が切れないかが重要ですね。
すんくぼ:そして、視力矯正レンズです。これは感想というより、勘弁してほしいという話ですが、地獄ですね。
ゆりいか:え、そうなんですか?
すんくぼ:はい。ディスプレイが載ったことで、レンズが特殊なものになりました。以前のAIグラスはレンズ交換が比較的簡単でしたが、今回は専用レンズです。度付きの矯正レンズを店頭で頼むと、5週間から8週間待ちになります。さらに、本体価格に加えて、プラス100ドルがかかります。
メガネ型デバイスのたびに思いますが、視力が良くない人には本当に辛い。メガネユーザーに優しくないです。ディスプレイ表示がぼやけてしまうので、視力が合っていないと話になりません。矯正レンズが必須なのに、これほど買いにくいのはどうしようか、という感じです。
地味に感動した「たためる」ケース
すんくぼ:色々と言いましたが、現時点で一番感動したのは、これです。
ゆりいか:ケースですか?
すんくぼ:はい、ケースです。これ、たためるんですよ。以前のRay-Banメタのケースも似ていましたが、ソフトケースだったので、メガネを出している時にカバンの中で潰れました。今回はたためるので、それがありません。これは最高に良いです。
ゆりいか:確かにMetaは保管収納系のアイテムが良い気がします。
すんくぼ:Ray-Banのこだわりかもしれませんね。新しい第2世代のRay-Ban Metaが379ドルからなのに対し、このディスプレイ版は799ドルと倍近い価格です。その分、クリーニングクロスが付属するなど、要所要所が少しリッチになっています。
現時点での評価「買ってよかったか?」
ゆりいか:それで、そもそも買って良かったですか?
すんくぼ:アメリカまでわざわざ行って試した価値はありました。ただ、この手のデバイスは日常使いしないと本当の評価はできません。そういう意味では「まだ分からない」というのが正直なところです。私の場合は視力の問題で、日常使いするにはコンタクトレンズが必須です。
ゆりいか:眼鏡ユーザーからすると、気軽に使うというわけにはなかなか行きませんね……。
すんくぼ:私はコンタクトが非常に苦手なので、そこが悩みどころです。ただ、この体験が他にないことは確かです。特に、このリストバンド型コントローラーが一般販売レベルで出てきたのは初めてです。ハードコアなガジェット好きは買った方がいい、とは思います。
メガネ型デバイス、AIグラスの先に、ARグラス(拡張現実を表示するメガネ)の未来があります。このデバイスは、そのARグラスの入り口です。ARグラスが社会実装される上で何が課題になるかを、このAIグラスの段階で示唆していると思います。そして、触れば触るほど「社会実装には、なんだかんだ時間がかかりそうだ」とも感じます。
これまで私たちが扱ってきたデバイスは、座ったり、その場に留まって使うものが多かったのですが、今回は「歩き回りながらディスプレイも見る」という、移動を伴うデバイスです。そこの価値がポイントになりそうですね。
開発者もまだ触れない? アプリの現状
すんくぼ:デバイスとしては面白いです。そうなると「これは開発者用ですよね」と言われがちです。ですが、現状では開発者が好きに遊べる要素は少ないんです。
ゆりいか:ええ。
すんくぼ:メタはAIグラス向けのSDK(開発ツールキット)、「ウェアラブル・アクセス・ツールキット」を発表しました。しかし、このMeta Ray-Ban Displayの核となる「ディスプレイ表示」や「リストバンド操作」の部分は、まだ開発者には公開されていません。
ゆりいか:アプリが作れないんですね。
すんくぼ:はい。そのため、使えるアプリも少ないです。メタの純正アプリしかありません。
すんくぼ:日本人が使いたいLINEやX(旧Twitter)などを見ることはできません。アプリストアもないので、本当に初期の段階だと感じます。
日本での展開は? 最大の壁は「日本語入力」
すんくぼ:このデバイスで生活が変わる可能性があるのは、メタが「ファミリー・オブ・アップス」と呼ぶSNSを日常的に使う人たちです。具体的には、メッセンジャー、WhatsApp、Instagramです。
ゆりいか:Instagramは使っている人が多いですよね。
すんくぼ:ただ、このデバイスで使えるのはSNSの「閲覧」部分ではなく、「メッセージング」の部分が中心です。
ゆりいか:あ、そうか。
すんくぼ:インスタグラムならDM(ダイレクトメッセージ)ですね。WhatsAppを日常的に使う人には可能性がありそうです。日本で発売される可能性はどうかですが、大元のシステム(Meta AI)が日本語に対応していないのが一番大きいです。そこが対応しない限り、日本での発売はないと思います。
そして、このデバイスにとって致命的なのが、日本語入力ができないことです。
ゆりいか:致命的すぎますね。
すんくぼ:はい。音声入力も英語しか受け付けません。メッセージングが中心のデバイスなのに、日本語入力ができない。マップを見るにも、英語で指示する必要があります。この時点で、日本ではかなり厳しいと感じます。
ゆりいか:英語が堪能で、WhatsAppやインスタのDMを頻繁に使う人……かなり絞られますね。
すんくぼ:システム側とAI側、両方の日本語対応を待つ必要があり、時間がかかりそうです。
AIグラスからARグラスへ
ゆりいか:日本でも技術的な申請などが終わったら、ぜひ街中で使ったレビューもしてほしいですね。
すんくぼ:語ることが非常に多いデバイスだと思いますので、今後も色々な形で取り上げていきたいです。
ゆりいか:AIグラスは、日本でもクラウドファンディングなどで少しずつ販売が始まっています。メガネ型デバイスの今後を考える上で重要ですので、引き続きウォッチしていきたいですね。
すんくぼ:そうですね。気がつくと事務所がメガネ屋みたいになっているかもしれません。課題は多いですが、そのあたりも含めて、また紹介していきたいと思います。
AI・ARグラスの未来をXR Kaigiで覗いてみよう!
すんくぼ:最後に告知です。MoguLiveが毎年開催しているXR・メタバースのカンファレンス「XR Kaigi」が今年もやってきます。開催日は12月1日から3日の3日間です。早割チケットを11月3日まで発売しております。通常より25%安くお求めいただけますので、参加を決めている方はぜひご利用ください。
すんくぼ:学割チケットやVIPチケットも用意しています。AIグラスやAIとバーチャルの関係、ハードウェアなど、詳細をこれから発表していきますので、ご注目ください。
ゆりいか:というところで、今回は終了したいと思います。お相手はパーソナリティの副編集長のゆりいかと、
すんくぼ:編集長のすんくぼでお送りしました。ありがとうございました!
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