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開発 2025.10.12

「Unreal Engine」は今どこまで進化しているのか? 開発者視点で見る注目ポイント【XR Kaigi Hub in 大阪レポート】

9月11日・12日に大阪で開催された、国内最大級のXRカンファレンス「XR Kaigi」の姉妹イベント「XR Kaigi Hub in 大阪」。本稿では、その中で行われた株式会社Indie-us Games代表取締役の中村匡彦氏によるセッション「Unreal Engineのイマ」の模様をレポートする。

目覚ましい進化を続けるUnreal Engine(以下、UE)の最新動向から、開発者が気になる新ライセンス体系、そして次世代のUE6に関する展望まで、UE専門スタジオのトップが語る「イマ」と「ミライ」に迫る。

話者紹介:中村 匡彦(なかむら まさひこ)氏

株式会社Indie-us Games 代表取締役。ゲームプログラマーとして複数のゲーム会社で開発経験を積んだ後、関西で数少ないUE専門スタジオである同社を設立。エンジニアリングのみならず、アーティストにも寄り添った幅広い知識で、ゲームから映像、建築、XRまで多様な分野の開発を手掛ける。

Unreal Engine最新情報

セッションは、まずUEを取り巻く最新情報の紹介から始まった。中村氏は冒頭「XR Kaigi Hubの講演ですが、XRについてのお話が多分一つもありません。そこについてだけ是非ご了承ください」と述べ、会場の笑いを誘いつつ、UEの進化がもたらす可能性を示唆した。

2025年の注目のUE製タイトルとして、中村氏がまず挙げたのはフランスのインディースタジオが開発したターン制RPG『Clair Obscur: Expedition 33』である。日本のJRPGに影響を受けたという本作は、少人数のチームで開発されながらもAAA級のクオリティを誇り、メタスコア93点を記録。330万本以上を売り上げる大ヒットとなった。中村氏は「ストーリーの評価が非常に高くて、ゲームオブザイヤーを取れるぐらいのゲームになるんじゃないかなと思います」と、その完成度を高く評価した。

UEの最新バージョンである「UE5.6」についても解説が行われた。UE5.6では、特に大規模なオープンワールドにおけるパフォーマンスの最適化が進み「60FPSを達成可能」になったという。その他、アニメーション編集機能の強化など、数多くのアップデートが施されており、UEが「重たい」というイメージを払拭する進化を遂げている点が強調された。

『ウィッチャー4』技術デモが示したUEの到達点

UE5.6のリリースに合わせて公開された、人気ゲームシリーズ最新作『ウィッチャー4』の技術デモは、その進化を象徴するものであった。大規模な群衆や広大なファンタジー世界がPlayStation 5上で60FPSで動作する映像は、多くの開発者に衝撃を与えた。中村氏は「アンリアルエンジンは重たいというイメージがある中、サクサク動いていることにインパクトがあった」と語る。

同デモで特に注目されたのが、草木などの植生を効率的に描画する新技術「Nanite Foliage」だ。UE5のコア技術である「Nanite」を植生に応用したもので、UE5.7以降に搭載予定だ。中村氏は「草木の表現に関して、無限にポリゴン数があっても負荷にならないみたいなところ」と解説。これにより、これまで表現が困難だった緻密で広大な自然環境のリアルタイム描画が可能になるという。

オープンワールドゲームの永遠の課題である「データのストリーミング読み込み」についても、UE5.6で大きな進化があった。新機能「高速ジオメトリストリーミング」は、より細かい単位でデータを読み込むことで、高速で移動しても読み込みの遅延が発生しにくくなる技術である。「オープンワールドのゲームを作る上で、読み込みが間に合わないということをなくすような、様々な対策が入っている」と中村氏は述べた。

フォートナイトの世界にAIダース・ベイダーが降臨

UEFN(Unreal Editor for Fortnite)の分野では、AIを活用した驚くべき事例が紹介された。人気キャラクター「ダース・ベイダー」が、AI NPCとしてフォートナイトの世界に登場したのだ。このNPCは、GoogleのAIモデル「Gemini 2.0」を内蔵し、プレイヤーとの対話が可能だ。中村氏は「有名なキャラクターが実際の生成AIによって生きていくという、ちょっと新たなゲームの時代が入ってきたんじゃないかな」と、ゲームにおけるAI活用の新たな可能性に期待を寄せた。

開発者をサポートするAI機能も登場している。「Epic Developer Assistant」は、UEFNに関する質問にAIが回答してくれるアシスタントツールだ。現在はUEFNに特化しているが、Verseスクリプトのコード生成など、開発効率を大幅に向上させるポテンシャルを秘めている。

さらに中村氏は、UEのGitHubリポジトリに「AI Assistant」に関するコードが追加されたという情報を紹介。「AI機能はエンジン本体にもおそらくそのまま入ることになります。5.7に入ると思うんですが、詳細はまだこれから」と述べた。

新ライセンス体系を解説

UEの新しいライセンス体系についても詳細な解説が行われた。2024年からノンゲーム分野でも有料化が始まり、ライセンス体系は大きく変更された。

新しいライセンス体系の最も重要なポイントは「企業の年間総売上が100万ドル未満の場合は、基本的にすべて無料」である点だ。中村氏も「個人や法人が100万ドル未満、大体1.4億円未満の人は、もうほぼ無料と思ってもらって大丈夫です」と強調した。

年間総売上が100万ドル(約1.4億円)を超える企業がUE5.4以降を使用する場合にのみ、ライセンス料が発生する。その支払い方式は、製品の配布形態によって「ロイヤリティベース」と「シートベース」の2種類に分かれる。

ゲームのように、UE製のアプリケーションを不特定多数のユーザーにダウンロード販売などで配布する場合は、従来どおりの「ロイヤリティベース」が適用される。これは、製品の総売上が100万ドルを超えた場合に、その超過分に対して5%のロイヤリティを支払う仕組みである。

一方、映像制作や特定の企業向けの業務用アプリケーション開発など、不特定多数に製品を配布しない場合は、新たに導入された「シートベース」となる。これは、企業の年間総売上が100万ドルを超えた場合に、UEを使用する開発者一人ひとりに対してライセンス(シート)を購入する方式だ。価格は1シートあたり年間280,454円(2025年9月時点)となっている。

Epicファミリーアプリの進化

セッションはUE本体だけでなく、Epic Gamesが提供する周辺ツール群「Epicファミリーアプリ」の進化にも及んだ。これらのツールもまた、クリエイターの表現力を大きく拡張している。

MetaHumanがUEに統合されシームレスな制作体験へ

フォトリアルなデジタルヒューマンを生成できる「MetaHuman」は、これまでUEとは別のWebツール「MetaHuman Creator」で作成する必要があった。しかし、UE5.6からはUEエディタ内に機能が統合され、シームレスなキャラクター制作が可能になった。中村氏は「直感的に見た目も全部調整しやすいし、すぐにあげられて使いたいという人にはすごく分かりやすいかなと思います」と、その利便性を評価した。

「MetaHuman Animator」を使えば、iPhoneなどのスマートフォンカメラで撮影した映像から、リアルなフェイシャルアニメーションを生成できる。高価な専用機材がなくとも、手軽に高品質な表情キャプチャーが可能になる点は朗報だろう。

さらに、音声データからフェイシャルアニメーションを自動生成する「音声ドリブン」機能も紹介された。セリフの音声ファイルを用意するだけで、喜怒哀楽といった感情に合わせた表情が生成される。「フェイシャルの調整はしたくないが、音声だけはあるからこれで作りたいっていう場合には、非常に便利なのかなと思っています」と中村氏は語る。

MetaHumanがUnityやBlenderでも利用可能に

ライセンス面でも大きな変更があった。これまでUE上でしか利用できなかったMetaHumanが、Unity、Blender、Mayaといった他のツールでも正式に利用可能になったのだ。ただし、MetaHumanはUEライセンスの一部であるため、年間総売上100万ドルを超える企業が利用する際は、前述のシートライセンスの購入が必要となる。

フォトグラメトリ(複数の写真から3Dモデルを生成する技術)ツールの「RealityCapture」は、「RealityScan」へと名称を変更し、「2.0」へとアップデートされた。デスクトップ版とモバイル版が統合されたほか、AIによる背景の自動マスキング機能などが追加され、より使いやすく強力なツールへと進化している。

RealityScanのライセンスもUEに準じており、年間総売上100万ドルを超える企業が利用する場合にライセンス購入が必要となる。UEのシートライセンス(年間約28万円)を契約している場合は追加費用なしで利用できるが、RealityScan単体で利用したい場合は、年間189,496円(2025年9月時点)の単体ライセンスが必要となる。

Unreal Engineの未来とUE6

セッションの最後は、Epic GamesのCEOであるTim Sweeney氏の発言を元に、次世代の「Unreal Engine 6(UE6)」がどのような方向を目指しているのか、その未来像が語られた。中村氏は「ここで言ってる情報はあくまでSweeneyがオンラインで発言したものなので、これが本当に正確なものかっていうのはまだ分かりません」と前置きしつつ、いくつかの興味深い計画を紹介した。

UE6は「置き換え」ではなく「統合」を目指す

Tim Sweeney氏によれば、UE6はUE5からの大きな世代交代、つまり「置き換え」を目指すものではないという。むしろ、現在のUE5、UEFN、そして新言語「Verse」といった複数の要素を一つに「統合」し、さらに、MetaHumanやMegaScansといったエコシステム全体を拡張していく方向性だ。プロ向けの強力さと、初心者向けの敷居の低さを両立させ、最終的なワークフローの統合を目指すとしている。中村氏は「UE5のような大きな世代交代はもうせずに、既存なものをどんどん拡張していきますよというような方向性」と、そのビジョンを要約した。

UE6は、UE5の時と同様に、まずプレビュー版(Early Access版)としてリリースされ、コミュニティからのフィードバックを取り入れながら開発が進められる予定だ。Tim Sweeney氏はこのプレビュー版を「今後2〜3年でリリースしたい」と語っており、正式リリースはそこからさらに1年以上先、今から4〜5年後になるのではないかと中村氏は予測した。

メタバースを「持続的な大規模世界」へ

UE6は「メタバース」の実現も強く意識している。フォートナイトだけでなく、他のUE製タイトル間でアバターやアイテムを相互運用できる「クロスタイトル思想」を検討しているという。そのために、APIの標準化や権利管理、経済圏の整備を強化していく方針だ。

3D開発者にとって大きなニュースとなるのが、エンジン内部の座標系の仕様変更だ。現在のUEは「左手系Z-Up」という独自の座標系を採用しているが、UE6ではMayaやHoudiniといった他の多くのDCCツールと同様の「左手系Y-Up」へと変更される見込みだ。

これにより互換性の問題は生じるものの、中村氏は「取っつきやすくなることが長期的に見てプラスになるんじゃないかな」と分析する。UE6が目指す「統合されたエコシステム」と「クロスタイトル思想」は、私たちが「メタバース」と呼ぶものの基盤となり得るポテンシャルを秘めている。

進化を止めないUnreal Engineが、今後XRの世界をどのように変えていくのか。その未来から目が離せない。

国内最大級のカンファレンス 「XR Kaigi 2025」が東京で開催!

そして、年間の締めくくりとして、国内最大級のカンファレンス「XR Kaigi 2025」が東京ポートシティ竹芝で開催されます。バーチャル領域の担い手がノウハウや技術をシェアし、繋がり、高め合うことを目的とした本イベントに、ぜひご期待ください。

  • イベント名: XR Kaigi 2025
  • 開催日程: 2025年12月1日(月)~3日(水)
  • 会場: 東京ポートシティ竹芝(ポートホール・東京都立産業貿易センター浜松町館)
  • 公式サイト: https://www.xrkaigi.com/

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