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セミナー 2023.01.10

【XR Kaigi 2022】話題のVRグラス『MeganeX』のコア技術も披露! Shiftalltとパナソニックが描くXRの世界とは?

国内最大級のVR/AR/MRカンファレンス「XR Kaigi」が今年も開催されました。今年の「XR Kaigi 2022」はオンラインカンファレンス(12月14日~16日)と、東京都立産業貿易センター 浜松町館でのオフライン(12月22日・23日)のハイブリッドで実施。オンライン開催では、3日間の期間中に60のセッションが行われました。

今回はその中から、12月15日に行われたセッション「Shiftall/Panasonicが描くXRの世界」をレポートします。登壇者は株式会社Shiftall(以下「Shiftall」)代表取締役CEOの岩佐琢磨氏とパナソニック株式会社(以下「パナソニック」)事業開発センター XR総括の小塚雅之氏、パナソニック事業開発センター XR開発部 部長の柏木吉一郎氏の3名です。セッションでは、両社が開発を進めるVRグラスやハードウェアが紹介されました。

1分1秒でもVR空間に長く居たいと感じてもらえるようなハードウェアを提供

セッション前半は、岩佐氏が「メタバースに住む人々と、ハードウェア」というテーマで発表しました。

「ShiftallはVR向けハードウェアを作っている企業です。過去にはメタバースではない領域のハードウェアもリリースしていましたが、2020年末から事業内容もVR/メタバース領域へと大幅にシフトしています。

メタバースで長時間過ごす人たちが、多数登場してきました。そうした人たちは、どんなハードウェアを求めているのでしょうか? 無限にお金があって、映画『アイアンマン』のように簡単に装置を脱着できるなら、五感全てをVR空間と現実空間で同期したいとコアな人たちは考えています。

現実には、お金や場所、装着の手間が大きな問題です。Shiftallが目指すのは、理想の世界です。いつかどこかでそうした世界ができると考え、近づけていこうとしています。

VR/メタバースでは、様々なところで「フルトラ(Full body tracking)」という言葉を見聞きします。足や腰にデバイスを装着して、現実の身体の動きを余すことなくアバターの動きに反映することを、こう呼んでいます。

Shiftallからも『HARITORAX』というフルトラデバイスを販売しています。外部センサー不要で、本体のみで身体の動きをトラッキングできます。様々なプラットフォームで利用できますが、その9割は『VRChat』で使われています。

また、2021年に行われたアンケートで、フルトラ環境を整えた人はVR利用者の56パーセント、将来的に利用したいと考えている人は36パーセントと、合わせて90パーセント以上がフルトラに興味を持っていることがわかりました。

メタバースで大騒ぎしたり、別の性別を演じたり、恋愛話をしたり、ロールプレイングがしたいと思っても、リアルな世界では現実の家族がいてできないという問題があります。そこで開発されたのが、防音Bluetoothマイクの『mutalk』です。大声で騒いでも、2メートル離れれば何を話しているのかわからない状態にできます。

VR空間内で五感を仮想的に感じるスキルを「VR感度」と呼ばれます。そうした感覚を更に増大させたり、感覚を持っていない人でも感じられるデバイスとして開発されたのが『PebbleFeel』です。

VR/メタバースという世界は、ゲームだけではなく、ただのSNSでもありません。長い時間とどまり、いろいろな場所でいろいろな人たちと交流できます。ある種の生活空間でもあります。Shiftallは、1分1秒でもVR空間に長く居たいと感じてもらうにはどんなハードウェアが必要なのかという視点で、日々開発を進めています」

パナソニックのVRグラスはデジタルツイン系をメインに展開

続いてパナソニックの小塚氏から、ビジネスユースが紹介されました。

「2022年4月よりホールディングス化したパナソニック。新規事業を開発する部署でVRグラスの開発が行われています。メタバース向けの販売や製造は、Shiftallが担当しています。

2022年1月に行われた「CES2022」で発表したのが、VRグラスの『MeganeX』です。元々は2021年にパナソニックが発表しましたが、2022年はShiftallから発表されています。諸事情により、B2B向け機能を追加して販売が開始されます。

2次元のディスプレイとは異なり、VRは没入感が特徴です。しかし、ビジネス利用を考えると、3D空間の制作コストが重要になってきます。3DCGデータが作れるワークフローが必要で、ある程度対象物のサイズが大きくないと面白く感じられません。ビジネス用途に多いのは、デジタルツインです。とくに自動車や建築・不動産などでの利用が多いです。

デバイスは、PCに接続するPCVR型か、単体で利用できる一体型の2種類があります。トレーニング用途ならコードレスで利用できる一体型が便利ですが、重たい処理をするならPCVR型のほうが優れています。パナソニックでは、PCVR型のデジタルツイン系での利用をメインで考えています。

パナソニックのVRグラスは、軽くて装着性が良く、画質も良く、小さくてカッコイイモノを作りたいと考えて、現在のスタイルに仕上がっています。元々は200グラムを切るサングラスのようなものを作ろうとしていましたが、VR機能を盛り込んだことで、ややサイズが大きくなっています。

VRグラスの利用形態はふたつあります。ひとつはOutside inのヘッドトラッキングです。アダプターを付ける形で実現しています。Inside OutのヘッドトラッキングとLeapmotionのハンドトラッキングアダプターの併用も検討中です」

『MeganeX』で採用されているコア技術の紹介

続いて柏木氏が、『MeganeX』のコア技術について紹介しました。

「すでに5年ほど開発を続けていますが、北米のKopin社と共同開発したディスプレイパネルのマイクロOLEDとパンケーキレンズを組み合わせて、その特徴を最大限に活かす光学モジュールを開発してきました。

Meta VRディスプレー技術担当VPのJoe O’Keeffe氏が2022年に行った講演でも、「VRにおけるマイクロOLEDとパンケーキレンズの組みあわせは主流になっていく」と述べています。『MeganeX』には、その次世代VRの特徴が盛り込まれています。

パナソニックが、マイクロOLEDとパンケーキレンズの組み合わせでこだわったのは、23.4×23.4mmのレンズで2560×2560の画素を実現したところです。自発光のパネルで、黒浮きのない高いコントラストも実現しています。

広いダイナミックレンジ(HDR)とそれを表現する高階調も実現しました。高コントラストかつ高階調で表現可能なパネルの性能を最大限に活かすために、高倍率・低色収差でパネル映像を拡大するレンズ部分にもこだわっています。

HDR(High Dynamic Range)とは、人の目のダイナミックレンジを超える映像の撮影・伝送・表示のエコシステムを実現する方式です。人が現実世界で見ている状況に近い、高精細で立体感のある自然な映像再現ができるのが特徴です。

HDRは、暗部のディテールを表現できます。明るいところも煌びやかに表現可能です。例えば車室内を撮影したときに、Dレンジを明るい部分に合わせるか暗いところに合わせるかによって、白飛びしてしまうことがあります。逆に、白飛びを押さえると暗くなってしまいます。しかし、HDRならその両方をバランス良く表現できるのです。

パンケーキレンズの最大の特徴は、ディスプレイパネルとレンズとの距離を短くできるところです。パネルから人の目までの距離も短くできます。絶対的な明るさに対する人体の感度はそれほど高くありません。主にコントラストで感じています。マイクロOLEDは黒レベルを緻密に高階調で表現できるので、レンズで黒を潰すことなく、浮かさないで表示することが重要です。そのためにガラスBSレンズが採用されています。

もうひとつこだわったポイントが、色収差を抑えることでした。レンズは周辺に行くにつれて、色収差が出やすくなります。それを極力抑えて、VRのリアリティを壊さないことにこだわっています。従来までのレンズでは、緑や赤などの色収差が出てしまいます。弊社が開発した新設計のレンズはクリアです」

最後に柏木氏は、今回発表された内容をまとめとして振り返り、セッションを締めくくりました。


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