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セミナー 2022.12.28

【XR Kaigi 2022】トップリーダーたちが語るXR業界に必要な人材とスキルとは?

国内最大級のVR/AR/MRカンファレンス「XR Kaigi」が今年も開催されました。今年の「XR Kaigi 2022」はオンラインカンファレンス(12月14日~16日)と、東京都立産業貿易センター 浜松町館でのオフライン(12月22日・23日)のハイブリッドで実施。オンライン開催では、3日間の期間中に60のセッションが行われました。

今回はその中から、初日の12月14日に行われた株式会社集英社(以下「集英社」)と株式会社ティーアンドエス(以下「ティーアンドエス」)によるセッション「集英社XRとTHINK AND SENSEによる XR業界で求める人材2022」をレポートします。

登壇者は集英社 新規事業開発部 部次長 兼 集英社XR プロジェクトリーダーの稲生晋之氏と ティーアンドエス 取締役 THINK AND SENSE部 部長 / クリエイティブレーベルnor所属の松山周平氏、 ティーアンドエス代表取締役社長 THINK AND SENSE部プロデューサー 集英社XRプロデューサーの稲葉繁樹氏。セッションでは、XR業界に必要な人材やスキルについての話題が披露されました。

 

1年かけて「XRの楽しさ」を提供するための研究を進めてきた

セッションは2021年から2022年にかけての振り返りからスタートしました。

 

ティーアンドエスは、今から1年前に、ナイアンティックとのパートナーシップなどBtoB向けやBtoC向けの発表がありました。その時期はまだ、「仕込みの仕込み」みたいであったと松山氏は振り返ります。XRという新しいテクノロジーが、どのように体験を実現して多くの人に楽しさを提供できるのか、研究を進めてきたそうです。

稲生氏は、XR領域のBtoB向けでは代表的なサービスがまだ存在していないため、集英社として共同戦線を張りたいと考えたところ、それに多くの企業が賛同してくれたと振り返ります。しかし、BtoCはまだ仕込み段階にあります。そうした中で、「Seventeen 夏の学園祭2022」を「集英社XR」(プロジェクト名)として実施できたことで、現在のXR感覚を集英社の社内で確認することができたことが大きかったとのこと。

岩城氏と一緒にレーベルを立ち上げた稲葉氏は、様々なことに奔走した1年であったと振り返ります。集英社からティーアンドエスに第三者増資で出資があったことで、組織力の増強と「集英社XR」の下地作りが整ったといいます。

 

新しいメディアを作るには「体力のある人物」が必要

XR業界で求められる人材について、稲葉氏はプロデューサーとしての立場で、新産業の面白いところは、通常のインターネットサービスではないアイデアだと思っていると語ります。そのため、一緒に働く人も、企画と一緒にプロデュースしてくれて、普通のアイデアではないことを楽しめる人がいいと考えているそうです。

松山氏が採用でいつも聞いている質問は、「曖昧な指示に対応出来ますか?」であると披露。これは、誰も作ったことも見たこともないものを生み出す必要があるため、その余白を自分らしさで埋めて作ってもらいたいというオーダーが含まれているからです。

また、こうしたオーダーが来たときに、打ち返すことができる人と手が止まってしまう人のどちらかに分かれます。いいものを打ち返すことができる人が大事なのです。
 

稲生氏の場合、一緒に働く仲間として見るときは、体力があるかどうかに注目しているそうです。これまで集英社が提供してきたメディアは、ユーザーに「見てもらう」ものでした。しかしXRではユーザーに「使ってもらう」メディアになります。それを新しく作るには、チャレンジも失敗も必要で、体力が求められるからです。

 

現在多くの人材を募集しているTHINK AND SENSEですが、松山氏は、自分の余白として持っているクリエイションがやりたくてくる人が少なからず来るので、そうした人たちとマッチングしたいといいます。一方、集英社の企画職は、新しいメディアを創る仕事になるので、「夢想する力」を持つ人がこれから必要になると稲生氏は考えているそうです。

 

答えがない分野で、幅広い領域のクリエイション経験が活かせる

続いて、クリエイターに求められる技術やスキルについての話題に。

 

どうしてもマンパワーが必要になのは3Dやクリエイションの部分だと語るのは、松山氏。

「XRやARでは、立体物としてのオブジェクトが必須です。アニメ制作と異なるのは、分業体制を取ることが難しいところです。モデラーとして作業しつつも、最終的に見せたい絵も思い浮かべながら作っていくなど、幅広いスキル領域を横断しなければならないことがあります。そのため、(クリエイションが)職人として得意だという人も重要ですが、これまでよりも広い領域を触ってきているという経験も重要になってきているのです」(松山氏)

稲生氏がクリエイターに期待するのは、新しいモノを生み出していく意味では誰も答えを持っていないため、若い人たちが「マンガをXRで作っていくこと」を最初から目指す必要はないといいます。

「XR領域で使える技術や機材を、作家やアニメーターといった才能を持つ人たちとフュージョンし、サポートすることで新しいものが生まれていきます。それをどんどん上乗せしていくことで、作家やアニメーターが自分たちでもできるようになっていきます。それを実現していくための第一歩を、来年早々から取り組みたいです」(稲生氏)

リアルワールドメタバースの想像力はマンガにも通じる

続いて「リアルワールドメタバース」の話題に。ナイアンティックが提唱している言葉ですが、稲葉氏はこれが「驚きとワクワク」のいい例だと語ります。THINK AND SENSEが得意としているのは、まさにリアルで感じることができる「リアルワールドメタバース」です。

 

ナイアンティックが提唱する「リアルワールドメタバース」は、マンガと似ている部分があると松山氏はいいます。そこでは様々な体験が提供されているものの、視覚や聴覚、匂いはなく、想像に任せています。その想像の余地は、人の数だけ存在しており、人の想像力を信じているがゆえのものとなっているのです。

その部分がマンガと似ており、全てを作品の中で描ききっているわけではありません。見る人の余白と想像力とクリエイティビリティを要求するものになっているのです。両者に共通した面白さを理解したうえで、どうしたら別の表現ができるか考えられるクリエイターに来てもらえると、より面白くなると考えているそうです。

 

これまで、マンガの編集者として作品を作ってきた稲生氏。同じコンテンツを愛しているユーザー同士の見えない絆が、リアルワールドメタバースによって太くなっていくといいます。それにより、現在提供しているメディアよりも高次元のメディアができるのではないかと持論を述べます。

 

集英社XRはマンガやアニメが見放題!?

最後に、THINK AND SENSEと集英社XRの紹介と、求める人材について話題になりました。

現在は国際的な動きが高まっているということもあり、国際色(のあるビジネス)に興味がある人は向いていると語る稲葉氏。また、こちらのセッションを見に来ている人の中には学生も含まれていますが、そうした人たちにとって申し訳なく感じる2年間があったといいます。

稲葉氏はコロナ渦で学校の授業がリモートで行われていたことを(しばらく)知らず、それを知ったとき、大学に入ったタイミングでネットのみになってしまった学生たちにとって、「世の中に対する希望が減ってしまったのではないか」と感じたからです。そこで、自分たちの会社は「どんな人たちでも楽しく向き合える会社である」とアピールしていました。

 

一方の稲生氏は、集英社XRは「マンガやアニメが見放題」だとアピール。それをどのように活かすかが仕事となるので、「コンテンツが好きな人」の募集を待っていると述べました。

 

THINK AND SENSEの雰囲気は、「わいわいしている」と語る松山氏。リモートでの就業も選べるものの、仕事ができる先輩に教えてもらいたいがために、学生アルバイトも自主的に出社するようになってきたといいます。リモートで孤独な作業がつづくクリエイターもいるなかで、社内のコミュニティが出来上がっており、一緒に(作品を)作っていけるところも、THINK AND SENSEの魅力となっているようです。

 

最後に稲葉氏は、「マンガ・アニメ見放題でわいわい楽しいクリエイションができる組織です。僕らと一緒に新しいクリエイションを世界に届けられると思います。採用にご応募ください」とまとめ、セッションを締めくくりました。
 


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