国内最大級のVR/AR/MRカンファレンス「XR Kaigi」が今年も開催されました。今年の「XR Kaigi 2021」はオンラインカンファレンス「XR Kaigi Online」(11月15日~17日)と、リアル会場での展示・体験会「XR Matsuri」(11月25日・26日)のハイブリッドで実施。XR Kaigi Onlineでは、3日間の期間中に50以上のセッションが行われました。
今回はその中から、11月16日に行われた電通のセッション「電通 XRX STUDIO メタバースは一般の人にどう捉えられているか徹底調査結果レポート」をレポートします。登壇者は電通 XRX STUDIOの金林真氏。セッションでは、一般の消費者がメタバースをどのように捉えられているのかについて調査した結果が報告されました。
電通 XRX STUDIOとは
セッションではまず、金林氏が所属する電通 XRX STUDIOの紹介が行われました。
XRX STUDIOは電通とグループ会社6社で構成する横断組織。電通は2017年に「Dentsu VR Plus」(電通VRプラス)を立ち上げていましたが、2021年2月に「XRX STUDIO」にリブランド。組織にはコンテンツ制作・メディア・ソリューション開発など、グループ内各社の部署からメンバーが集い、バーチャルヒューマンやAR/VR技術を用いたサービスを提供しています。
金林氏は続けて、XRX STUDIOが携わってきたXR事例を紹介。COMOLU、WARP BALL、LIVE_XRなどに加え、ambrと協力して制作した、東京ゲームショウをVR化したコンテンツ「TOKYO GAME SHOW VR 2021」が紹介されました。
(2020年、2021年とオンライン開催になった東京ゲームショウ。さらに2021年はVR会場も設置された)
メタバースに関する調査とその結果報告
続いては本題であるメタバースの調査報告。調査期間は2021年11月2日~4日、調査対象人数は人口構成比で回収した2,000人が対象です。
「メタバース」という言葉の認知率
はじめに、メタバースについて知っているか尋ねたところ「知っている」「見聞きしたことがある」と答えたのは5人に1人に留まりました。一方で、メタバースの定義を事前に説明してから体験の有無を尋ねると、約37%が何かしらの形で知っていると回答しました。
(「メタバース」という言葉の認知率は約20%。ただし、具体的に内容まで知っている人はわずか5%という結果に)
(「メタバース」の意味を説明すると37%まで数値が上昇した)
(Z世代(15~25歳)に限定すると認知率46%と、全世代平均を大幅に上回った)
世代別の「メタバース」認知・体験率
回答者の年代を分析していくと、Z世代(15~25歳)の認知率・体験率が高く、40代を越えると割合が急激に減ることが判明。また性別ごとの結果を見ると15~19歳の女性にもっとも認知されており、体験者も多いことがわかりました。
(年代別のデータ。やはり30代までの若い世代のほうが認知率・体験率とも高い)
(15~19歳女性がもっとも体験数・認知度が高いという調査結果に)
体験したメタバースの種類
メタバースの体験事例としてもっとも多かったのは『あつまれ どうぶつの森』や『フォートナイト』などのゲームでしたが、それ以外に音楽ライブや企業主催イベントと回答した人も一定数いました。とりわけ30代では、飲み会・スポーツ観戦・買い物体験といったジャンルでの体験が他の年代を上回るという傾向が見られました。
(本調査では『あつまれ どうぶつの森』『フォートナイト』『エーペックスレジェンズ』などのゲームもメタバースに含めている)
(30代では「友人・知人が開催するバーチャルイベント」など、他の世代では少ない利用例も目立った)
メタバースに関する興味・関心
メタバースに関する興味・関心は若年層ほど高い傾向にあり、その内容としては空間のデザイン・コミュニケーション・アバターカスタマイズなどが上位でした。
これらの要素は続く「メタバース体験者にとって魅力と感じる事柄」や「メタバースでやったことがあること」の調査でも回答数が多く、ユーザーの興味と実際の体験が直接的につながっているのではないかと金林氏は分析します。
(調査対象全体では、空間デザインやコミュニケーション、アバター、ショッピングに関する興味・関心が高い)
(10代男性はコミュニケーション、10代女性は空間デザインとアバターへの興味・関心が高いなど、年代・性別による特徴もデータに現れた)
(実際にメタバースを体験した人の中での興味・関心も、全体とほぼ同じような結果に)
(メタバース体験者の約半数がコミュニケーションとアバターカスタマイズを行っている)
メタバースでの課金
メタバース上での課金意向についての調査では、10代・20代男性で他の層よりやや強い課金意向が見られたものの、全体的にはあまり高くありませんでした。
一方、実際の課金動向では30代男性が形態によらずよく課金する特徴があり、また、男性に比べて女性はあまり課金していないという結果も得られました。
(課金したいという意向と、実際に課金したかどうかの間にはズレがある。また、課金内容にも年代・性別による差が見られた)
メタバースの認知・普及はまだまだこれから
最後は金林氏がここまでの調査結果を総括。全体としての「メタバース」認知率は20%、ゲーム以外にも音楽ライブの体験率も高い、30代男性が特に積極的に体験・課金していることなどをあらためて説明し、セッションは終了となりました。