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活用事例 2016.11.22

【VRDC2016】VRゲームはどの程度遊ばれているのか?統計で見る、VR市場と消費者の意識

現地時間2016年11月2日・3日に、アメリカはサンフランシスコにて「VRDC 2016」が行われました。

VRDCとはVirtual Reality Developers Conferenceのこと。会場では世界各地のVR開発者が集い、企業によるデモの展示、パーティによる開発者・企業間の交流、そして開発に関する知見を共有するセッションが行われました。

本記事ではその中で、『Data and Insights in the VR Market』と題されたセッションのレポートをお送りします。登壇したのはリサーチ企業「EEDAR」からパトリック・ウォーカー氏。

セッションでは、VR業界に関する様々な統計データが公開されました。

VRDC2016で行われた全セッションはこちらから視聴可能です。(すべて英語)

VR/ARに関する投資額

VR/ARに関する投資額の推移から、セッションは幕を開けました。

Oculus RiftがクラウドファンディングKickstarterに登場したのが2012年、その翌年2013年にはVR/AR分野の投資額はおよそ2億ドルとされていますが、2016年末には11億ドルにまでのぼる予測です。

これらの数字にはシード、シリーズABCの各ラウンドが含まれていますが、買収やMR(Mixed Reality)デバイス「Magic Leap」に関する投資は含まれていません。Magic Leapは、マイクロソフトのHoloLensの比較対象に持ちだされますが、2016年11月現在開発中であり、詳細は不明。しかしデバイスの外見すら不明であるにも関わらず、2016年4月の段階で22億ドル以上の資金調達を成功させています。

現在のコンシューマー向けVRデバイスの分布

この図は現在メジャーとされるVR/ARのHMDを売り出している企業を、「手に取りやすさ」「没入感の高さ」の2グループに分類し、それぞれのデバイスの価格・2016年末の推定普及台数をまとめたものです。

PSVRは世界中でのPlayStation 4の普及台数(300万台以上)を考慮して、やや「手に取りやすい」デバイスに寄っています。事実、年末までの推定普及台数も世界中で150万台(オレンジの折れ線)とされ、ハイエンド向けのVRHMDとして肩を並べるOculus Rift(25万台)やHTC Vive(20万台)から頭一つ抜けています。

なお先日2016年10月には、HTC Viveの売り上げは14万台と公式に発表がありました。2016年8月のアナウンスでは10万台とされており、2か月で4万台を売り上げています。

VRHMDの販売台数などの具体的な数値は、ほとんど公表されておらず、このような予測値しかないのが現状です。

いくらなら買う?VRHMDを所持していない消費者の意識

VRデバイスを持っていないアメリカ在住の消費者3800人に、「いくらまでならVRデバイスにお金を出すか?」というアンケートを取ったもの。

現在ハイエンド向けVRデバイスとして代表的なOculus RiftやHTC Viveが属する価格帯(およそ7~10万円)であっても買うと答えた人はわずか4%にとどまっています。

PSVRの価格(およそ5万円前後)でも買うと答える人は全体の約20~30%です。

キリのいい数字として、「(約)3万円までなら出せる」と答えた人まで含めると全体の60%になります。また現在スマートフォンを用いてミドルレンジの層で展開しているGear VRやGoogleのDaydreamの価格である約1万円では、およそ85%の人が買っても良いと答えています。

VRアーリーアダプタの人物像

図中の青い棒グラフは「非VRゲームに年間いくらのお金を使うか」を表し、オレンジの折れ線グラフは「一週間の平均ゲームプレイ時間」を表しています。

3つのグループは、左から「アクティブな非VRゲーマー」「VRデバイスを持っていないが買おうと考えているゲーマー」「PCで駆動するハイエンドVRデバイスを持っているゲーマー」です。

アンケートを取った母集団は、アメリカ在住のOculus RIftまたはHTC Viveの所持者200人。

VRデバイスを所持している人は、非VRゲームに関しても、他のゲーマーより多くのお金を費やしていることが分かります。VRデバイス所持者だけのデータを細かく解析すると、彼らは平均年収600万円、87%が大学卒以上で72%が男性、平均年齢は30歳という集団だったそうです。

VRデバイス所持者はVRコンテンツにも平均1.6万円使っており、どちらのデバイスを購入した人であれ、75%以上の人がVRHMDの購入に「満足している」と答えています。

メジャーなテクノロジー関連サイトにおける、各ハイエンドVRHMDの評価点の比較です。全てのサイトで全てのHMDが80点を超えており、全体として好評価と言えます。

ハイエンドVRのコンテンツ数と価格

この図は、Ocuus Rift(灰色)、HTC Vive(青白色)、PlayStation VR(オレンジ色)それぞれについて、いつ、いくらのコンテンツが、いくつ出たかということを表しています。2016年10月のPSVR発売と同時に、オレンジ点が出現しているのがわかります。

コンテンツ数はHTC Viveが群を抜いています。またHTC Vive向けのものは、主にSteamで配信されていますが、比較的低価格なコンテンツが多いのも特徴です。

なお、HTC Viveの点を除くと上の図のようになります。

ローンチ後3か月で登場したコンテンツ数

各プラットフォームにおいて、発売から120日間のうちにリリースされたコンテンツの数です。こちらもHTC Vive向けソフトが242タイトルと群を抜いています。(なお、Oculus RiftとHTC Vive両方で遊べるタイトルは、このSteam VRの項には含まれていません。)

VR向けのタイトルは、既存のゲームプラットフォームに比べて多いことが分かりますが、「これは買うべき」と最高評価を受けたソフトはPSVRで一本あるだけで、その数が非常に少ないのが現状です。

SteamにおけるVRコンテンツの売り上げ状況

この図はSteamで配信されているVRコンテンツの通常価格×購入人数で売上を算出し、コンテンツの価格ごとにプロットしたものになります。

15ドル(約1500円)以下のコンテンツのほとんどは、20万ドル(約2000万円)以下の売り上げにとどまっています。一方、20ドル(約2000円)および35~40ドル(3500~4000円)のコンテンツの中には、売り上げが140万ドル(1億4千万円)程度のものが存在します。

それぞれ20ドルで最も売り上げているコンテンツは『Audio Shield』、35ドルは『Hover Junkers』、40ドルは『Raw Data』となっています。

さらにこれを価格ごとではなく「ユーザーの評価ごとの売り上げ」として並び替えた図がこちら。『Hover Junkers』も80点と高評価ですが、売り上げトップクラスの『Raw Data』と『Audio Shield』は90点台をマーク。

この図から、評価が高ければそれだけで圧倒的な売り上げに繋がる、というわけでもないことがわかります。

コンテンツ購入の動機

Oculus RiftとHTC Viveを持っているアメリカ在住の200人に訊いた「VRコンテンツを購入した理由」の統計です。

最も高いのは「ユーザーの評価」と「トレーラー映像・公式サイト」という要因です。特筆すべきなのは「価格」という項目が第5位である点。ウォーカー氏いわく、「価格が上位に来ていないプラットフォームは他に類を見ない」とのこと。

ユーザー評価とプレイ時間の関係

Steamでのユーザー評価ごとに、コンテンツの総プレイ時間を見たものです。『Virtual Desktop』はVR空間でPCを使うというコンセプトから、常時使用する性質のコンテンツであり、例外的なプレイ時間を記録しています。

しかしそれ以外には、評価と総プレイ時間に意味のある相関は見られませんでした。ほとんどのコンテンツは、総プレイ時間が200分以下に収まっています。

しかし、ユーザーの評価と「もう一度プレイするか」という項目は、相関が見られます。この図は、ユーザーの評価ごとに、過去2週間にそのコンテンツで遊んだかどうかを聞いたものです。ユーザースコアが高いほど、ユーザーは「もう一度やりたい」と思う傾向にあります。

縦軸の%は、2週間以内にプレイした人数を、合計のプレイ人数で割った値です。

この図はSteamで人気な非VRタイトルとの比較。

図中の棒グラフは総プレイ時間(オレンジの棒グラフは『Virtual Desktop』)、オレンジの折れ線グラフは過去2週間にそのコンテンツで遊んだ人の割合です。

登場して日が浅いVRコンテンツは、総プレイ時間こそ人気タイトル(棒グラフの右2つ『Dark Soul lll』『The Division』)に及ばないながらも、過去に週間に遊んだ人の割合は概ね互角なのです。

VRの将来

ウォーカー氏はVRの未来について「NetflixやVirtual Desktopのように日常的に使うタイプのものと、『The Lab』や『Raw Data』のようにVR世界を堪能するゲームタイプのもの、2種類の道があるだろう」と語ります。

そしてこれら2つの道に対して、それぞれ向こう3年で起き得ることを述べました。2017年にはGoogleのハイエンドモバイルVRプラットフォーム「Daydream」が「身近なVR」として広まります。一方でOculusのハンドコントローラーTouchの発売は2016年12月。圧倒的な手の実在感を実現するコントローラーの普及で、2017年は「世界に没入する」タイプのVRも一歩先へ進むでしょう。

2018年にはOculusが開発していると公表したスタンドアロン型のハイエンドHMDや、日本発FOVEなどの視線追跡機能が搭載されたHMDが徐々に登場してくることが予想されています。ウォーカー氏は、この頃には「身近なVR」として、Facebook(2014年にOculusを買収)やAppleが何か新たなものを市場に送り出すのでは、ともコメントしました。

最後にウォーカー氏は、VRの市場が勢いを増して拡大することを予測しました。2018年にはモバイルVRの時代が訪れ、今よりもっとVRが身近な存在となり、市場規模は80億ドル(約8,000億円)にまで上り詰めるという予想です。

1980年ごろに端を発したVR技術。2016年は消費者向けVRデバイスの登場が相次いだことから「VR元年」とも呼ばれています。既にこれまでの間にも驚くような出来事がたくさんありましたが、VRはまだまだこれからという段階なのです。これからVRはどこへ向かってゆくのか、来年以降も非常に楽しみですね。


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