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テック 2018.11.13

「自分の頭の中へ、他者を連れ込む」空間を作るVRアートの可能性

フェイスブックのソーシャルVRチームでアートディレクターを務めるGoro Fujita氏は、現在VRヘッドセット「Oculus Rift」に対応するVRペイントツール「Quill」が、2019年春発売予定の最新一体型VRヘッドセット「Oculus Quest(オキュラス クエスト)」への導入の可能性について言及しました。Fujita氏は、VR内で絵やアニメが描けるアートツール「Quill」を使用し、自身が創作するVR世界「The Last Oasis」を制作しました。今回、作品を「Oculus Quest」で体験したときの感想を話す動画が公開されました。

手描きキャラクター達のVR世界

「The Last Oasis」は、室内を自由に歩き回ることができるVR体験で、ユーザーはFujita氏が描いたキャラクター達の住む世界へと入り込んでいきます。VR世界の中には、たくさんの魚が頭上を泳いでいるのを見上げたり、崩壊寸前のビルの上を恐る恐る進んでいったりと、いろいろな空間を探索することができます。

Fujita氏は「The Last Oasis」について次のように語っています。

2125年、人工災害によって地球のエコシステムは機能不全となり、北米西海岸は数多くのハリケーンに見舞われました。その中で数少ない生存者の一人、天才科学者のOgini Orogは、生き残った人々や絶滅寸前の自然を守るための安全な場所を作り上げました。それぞれの部屋を探索して謎を解き明かしていきます。

「The Last Oasis」のような、広範囲を歩き回ることを前提とするVR体験では、ワイヤレスのヘッドセットを使うことで自由度が増し、さらに没入感が高まります。Fujita氏いわく、ワイヤレスヘッドセットを使用することは、アーティスト作品を体験するためにとても重要であると主張しています。

昔からずっと、自分や他のひとの絵の中に飛び込むことが夢でした。Questがあれば、コードが無くなるため、自由に空間を動き回ることできます。(中略)いつも絵を描いたあと、空間をどうデザインするか、それぞれの空間にどうやって感情を作りこむかなど、組み立てを考え空間を設計しています。ユーザーが新しい空間に入り込むと、感じ方が変わることができるように、空間ごとに異なる色言語や光を使用しています。ただの絵という概念ではなく、自分の頭の中の世界へ、他のひとを連れ込むことができるのです。アーティストにとってとても影響のあることだと思いますし、私もこんなことができるとは夢にも思いませんでした。

誰でも作品が制作可能に

「Quill」は、アーティストがゲームエンジンの知識を習得しなくても、VRヘッドセットとコントローラーを使用して、一から「The Last Oasis」のような大規模なVR世界を作り上げることができる方法を提供しています。

Fujita氏は本作品を、フェイスブックの小規模のソフトウェアエンジニアチームの協力のもと、5日間で制作したと話しています。Fuita氏の発言からわかるように、今回の作品は「Oculus Quest」向けに制作していることは明らかですが、「Oculus Quest」用の正式タイトルは未だ発表されておらず、作品自体は「Oculus Rift」とコントローラーで制作された模様です。

「Quill」がいつ「Oculus Quest」に対応するかどうかは未だ公式に発表されていませんが、先日にも、フェイスブックのAndroid VRエンジニアであるPierre-Antoine LaFayette氏も導入検討について言及するなど、可能性は十分にあるのではないかとの期待が高まっています。

(参考)Road to VR
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