スタンフォード大学の研究者チームが、過去30年間にわたるVRに関する心理学的研究を総括し、VR体験の効果を最大化するための5つのポイントを発表しました。研究はスタンフォード大学コミュニケーション学部のジェレミー・ベイレンソン氏が主導し、シアン・デボー氏らとの共著で、学術誌『Nature Human Behaviour』に掲載されました。
論文では、長年の研究から再現性の高い知見を「カノニカル・ファインディングス(標準的な知見)」と定義し、以下の5点が示されています。
1つ目は、VRの効果は利用目的によって異なるというものです。トレーニングや心理療法のように高い没入感が重要な分野では効果が大きい一方、エンターテインメントやコミュニケーションでは必ずしも成果と直結しないとされています。
2つ目は、VR内の自己アバターがユーザーの行動に影響を及ぼすという知見です。アバターの見た目や動きが、ユーザーの心理状態や実際の振る舞いに影響を与えるとしています。
3つ目は、VRは抽象的な学習よりも具体的な操作を学ぶ手続き的トレーニングに効果的であるという点です。一般的な学校教育で扱う抽象的な内容では、認知的な負担が大きくなるため、効果が限定的と指摘されています。
4つ目は、VRにおけるボディトラッキングの重要性です。ユーザーの身体動作をリアルタイムで追跡する機能が、認知と行動の関係性を分析する手がかりになる一方、プライバシーリスクへの注意も必要としています。
5つ目は、バーチャル空間内では距離を実際よりも短く認識する傾向があるという点です。この誤認識は、空間認識が求められる活動に影響を与える可能性があるとしています。
ベイレンソン氏は、スタンフォード大学のVR研究機関「Virtual Human Interaction Lab(VHIL)」の創設者でもあり、VRが人間の心理や行動に与える影響を研究しています。今回の論文では、同氏が提唱する「DICEアプローチ」も紹介されており、VRの活用に適した場面を整理するための枠組みとなっています。
DICEとは、「危険(Dangerous)」「不可能(Impossible)」「逆効果(Counterproductive)」「高価(Expensive)」の頭文字を取ったもので、VRをこれらの条件下で活用する意義を強調しています。具体的には、消防士の訓練や脳卒中のリハビリ、気候変動の体験などが推奨例として挙げられています。一方で、ベイレンソン氏はメールチェックやテレビ視聴、一般的な事務作業にはVRを使う必要性は低く、従来の2D画面が適していると指摘しています。
(参考)UploadVR、Nature Human Behaviour
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