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テック 2016.09.21

ポケモンGOの制作者ジョン・ハンケ「ARはVRより可能性を秘めている」、その理由

世界中で話題を呼んでいる、位置情報を利用したスマホアプリ『Pokémon GO』。開発を担当しているのは、Googleの社内スタートアップから発足したNianticです。そのNianticのCEOであるジョン・ハンケ氏は、「ARはVRよりずっと面白く、可能性を秘めている」と発言しています。

ポケモンGOの制作者ジョン・ハンケ「ARはVRより可能性を秘めている」、その理由

ARがVRより”良い”とされる理由

この発言は、カラ・スウィッシャー氏が主催するポッドキャストのラジオ番組、「Recode Decode」内で出たものです。番組の一部始終はこちらから聞くことができます(英語)。

ゲストとして呼ばれたジョンは、番組内で以下のように発現しています。

「(ARは)ずっと面白く、可能性を秘めていると思います。技術にとってだけでなく、まさに人類にとっても。VR空間では、プレイヤーは周りの人から隔離され、完全な別世界に没入することになります。一方でARは、現実でのプレイヤーの行動に何かを加え、豊かにするものなのです。外に出ること、他人と社会的なつながりを持つこと、買い物、遊び……。ARはこれらの行為を、今よりもっと良くすることができます。」

Nianticは、「イスに座ってゲームをするのではなく、プレイヤーを外に出させる」というテーマを掲げています。ポケモンGOにしても、その前身となる位置情報ゲーム『Ingress』にしても、実際に現実空間を動き回らなければゲームを進むことはできません。「AR技術はNianticの目指す理想にぴったりだ」とジョンは考えているのです。

「だからこそ、複雑な気持ちもあります。我々は皆が銅像や自然のある公園などに出てきてくれるようにあれこれと取り組んでいるのですが、皆はスマホのスクリーンを見ているので。」とハンケ氏。

もしかしたら将来的にポケモンGOは何らかのARグラスに対応して、現実世界とシームレスに融合するかもしれない。ただし、今のところそのようなデバイスは無いので暫定的な案を探しているところだ、と彼は言います。

現在はスマホの画面を見続けなくてもポケモンGOで遊べるデバイス「Pokémon GO Plus」をリリースしたり、Apple Watchへの対応を進めたりするなどの取り組みをしています。

ARとは、VRとは

VR

VRはVirtual Realityの略で、「物理的には存在しないものを、感覚的には本物と同等の本質を感じさせる技術」のことです。よく言われる「仮想現実」というのは誤訳で、正確には「実質的な現実」となります。「バーチャル」は「仮想」ではなく、物理的存在の有無の違いこそあるものの、本質は等しいのです。

※VRの定義については日本バーチャルリアリティ学会のホームページにも載っています(こちら)。上で今回用いた今回用いた定義は、現在VR学会会長を務めている岩田先生がCEDEC2016の講演中に述べられたものです。(岩田先生のVRの歴史と未来についての講演記事はこちら

VR体験というと、近年のOculus Riftなどの登場を受けて、一般的にはヘッドマウントディスプレイを装着して、現実とは異なる世界を見る・体験することを指す場合が多いです。

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「サマーレッスン」。現実世界では何もいないのに、本当にそこに女の子が存在しているかのように感じる。

AR

ARはAugmented Realityの略で、日本語では拡張現実感、などと訳されます。デジタル技術を用いて現実世界に何らかの要素を追加したり、現実世界の行為をより豊かにする技術になります。
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ポケモンGOでは、ARモードをオンにすると、スマホのカメラ越しに、現実世界にポケモンが現れたように見える。

MR

MRとは、Mixed Realityの略で日本語では複合現実といいます。

ARが現実世界をコンピュータを用いて拡張することだったのに対してMRは、現実世界とバーチャルのCGグラフィックなどがシームレスに融合した世界、またはその世界を作る技術のことを指しています。マイクロソフトは同社が開発中の「HoloLens」をMRデバイスと呼んでいます。

https://www.youtube.com/watch?v=2MqGrF6JaOM
マイクロソフトの描く未来図。

「VRコンテンツは体験をして見ないと良さが全く伝わらない」という問題は、既に何年も言われていることです。VRヘッドマウントディスプレイは、技術の向上から体験の質は飛躍的に上がりました。もちろんオンラインマルチプレイなどもあり、VRならではのソーシャル・インタラクションも存在するので、VR空間へのダイブが、完全に人と隔絶された体験とも言いがたいと思います。しかしやはり、体験できる機会や人数が限られているという問題があるのも事実です。

今後AR・VR技術がどのような未来に向かっていくのか、とても楽しみです。

(参考)
‘Pokemon GO’ Creator John Hanke: AR is “far more interesting and promising” Than VR – UploadVR
http://uploadvr.com/pokemon-go-creator-john-hanke-ar-vr/


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