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開発 2022.07.26

賞金総額100万のアプリ開発コンテスト「PLATEAU AWARD 2022」が開催。オープンデータの3D都市モデルを活用した作品を募集中

国土交通省は、2022年7月20日に「PLATEAU AWARD 2022説明会」をオンラインで開催しました。2020年度より、国土交通省が取り組んでいる3D都市モデルのプロジェクト「Project PLATEAU(プロジェクト・プラトー)」。本プロジェクトを活用したサービスやアプリ、コンテンツ作品を募集するコンテスト「PLATEAU AWARD 2022」の募集が2022年11月30日23時59分まで行われています。

今回のイベントは、「PLATEAU AWARD」の応募を検討している人やPLATEAU自体について知りたい人に向けて実施されたものです。

登壇者は、国土交通省 都市局 都市政策課 課長補佐で、「Project PLATEAU」全体のプロジェクトディレクションを担当している内山裕弥氏。それに加えて、技術解説でホロラボ ソフトウェアエンジニアの於保俊氏とアナザーブレイン 代表取締役/みんキャプ運営委員会 委員長の久田智之氏が登壇しています。本稿ではその模様をお届けします。

申請や許諾不要で自由に使えるオープンデータの3D都市モデルPLATEAU(プラトー)

まずは、「Project PLATEAU」を担当する国土交通省の内山裕弥氏より、プロジェクトと今回のコンテストについての紹介が行われました。

国土交通省では、2020年度より3D都市モデルの整備や活用、オープンデータ化を行うプロジェクト「Project PLATEAU」に取り組んでいます。ミッションはデジタルツインの実現(Society5.0)で、そのインフラとなるデータを世の中に提供していくことが本プロジェクトの目的です。

PLATEAUのデータは、航空測量を元に各市町村が独自に作成している2Dの地図(都市計画基本図)から3Dモデルが作成されています。この3D都市モデルの中には、公共機関が集めた属性情報を付与して内側と外側の両方を兼ね備えたデータとして作り上げられています。

現在利用可能なものは56都市で、こちらはオープンデータとしてダウンロードすることができます。Google Earthなどで採用されているジオメトリの3D都市モデルとの違いは、セマンティクスとジオメトリを統合したソリッドモデルが採用されているところです。これにより、ソリッドの固まりで駅や建物などを判断できるほか、壁や天井といったデータも持っています。

また、属性情報(セマンティクス)もパッケージされてコーディングされています。簡単にいうと、BIMの都市版といった感じです。非常に広範囲のビッグデータとして扱うことができ、なおかつ簡素なモデルからBIMと同じような情報を持つモデルまで、ひとつのファイルでパッケージングすることができます。

こちらは、幾何形状と意味情報がひとつのXMLにまとめられており、オブジェクトに紐付く形で記載されています。その分ハンドリングがしにくいというデメリットもありますが、現実の都市空間が持つ情報を、そっくりそのまま記述することができるのが特徴です。公式サイトでは、「3D都市モデル標準製品仕様書」と呼ばれる資料も公開されており、詳しい情報をチェックすることが可能です。


3D都市モデルの標準データを定めることが国の役割

なぜ国土交通省がこうしたプロジェクトに取り組んでいるのでしょうか? 「それは、3D都市モデルの標準データを定めることが国の役割であるから」と内山氏は語ります。

現在PLATEAUが提供しているのは、表の黒丸で記載されているLOD 1とLOD 2の一部です。赤丸の部分は、昨年度にデータモデルを作成し、今年の末からオープンデータ化されていく予定のものとなっています。このLODは、レベルが上がるごとにデータが詳細になっていきます。PLATEAUはオープンデータであるため、申請や許諾も不要で商用利用も含めて二次利用や二次加工が可能です。

3年目を迎えた2022年度では、実証フェーズを超えて本格的な社会実装のフェーズに突入してきました。日本では、まだまだハンドリングするための文献が少なく、そもそもGISという地図領域のデータでもあるためマニアックなものです。そこで、GISや地図とは異なる分野の人たちにも触ってもらい、いろいろな活用をしてもらいたいと考えていました。

それを実現するために、同プロジェクトでは、アプリコンテストをはじめ様々なイベントを実施しています。そこからエンジニアやクリエイター、プランナーのコミュニティを作っていき、PLATEAUの活用方法について活発な意見の交換が行い、実装を下支えしていきたいという狙いもあるのです。

PLATEAUでは、初年度からハッカソンやアイデアソンを実施していましたが、今年度は実装フェーズということもあり規模を拡大。全部で13本の企画を「PLATEAU NEXT」として開催します。今回説明会が行われた「PLATEAU AWARD 2022」は、その集大成ともいえるイベントです。

LTやハンズオン、ハッカソンなどのイベントを通じてアイデアや技術を高めていき、その発表の場として行われる「PLATEAU AWARD2022」。こちらはハッカソンというよりも、より作り込んだアプリコンテストなっており、プロダクトの出来映えを競い合っていきます。

作品のタイプや応募対象者などかなり自由度の高いアプリコンテスト「PLATEAU AWARD 2022」

「PLATEAU AWARD」は、PLATEAUのデータの可能性を引き出すために国土交通省が主催しているアプリ開発コンテストです。募集内容はある程度自由で、アプリやコンテンツ、映像などエンターテイメント分野を含んだものでも問題ありません。応募対象も自由で、個人や企業、団体などのチームで、メンバーの年齢の制限も設けられていません。

作品のタイプも自由です。ただし、あくまでもPLATEAUのアプリコンテストであるため、提供されているオープンデータの3D都市モデルを利用している必要があります。すでに募集は2022年6月24日から開始されており、2022年11月30日まで応募が可能となっています。

どれぐらいの作品が集まるかにもよるものの、審査は2回行われます。一次審査は2022年12月17日と18日にオンラインでプレゼンテーションを実施。年が明けて2023年2月18日に最終審査会が都内で開催されます。その場で大賞が決定し、グランプリ1作品が決定。総額100万円の賞金が授与される予定です。

すでに応募が開始されている「PLATEAU AWARD2022」ですが、11月30日の締め切りまではまだまだかなりの日数があります。その間、関連イベントとしてLTやハンズオン、ハッカソンなどが行われており、そこで自らの知見を高めて行くこともできます。

作品の評価基準は、5つのポイントで行われる予定となっています。PLATEAUの3D都市モデルを活用しているか、アイデアが独創的か、UI・UXデザインが優れているか、技術力、実用性といった項目で総合的に判断し、グランプリが選ばれます。

審査員は、AR三兄弟の長男として知られる川田十夢氏と、ちょまどの相性でおなじみの千代田まどか氏、Code for YOKOHAMA共同代表の小林厳生氏、Takram Japanデザインジニア/ディレクターの松田聖太氏、そして今回のイベントにも登壇している国土交通省の内山裕弥氏の5名で行われます。

応募はウェブサイトのフォームより、必要事項を記載して行えます。その時に、プレゼン用のスライド資料とYouTubeに限定公開でアップした作品動画のURLなども、合わせて提出すればOKです。

ここまでが「PLATEAU」と「PLATEAU AWARD」についての紹介です。ここから先は、その「PLATEAU」を活用した技術解説が行われました。

ホロラボ於保俊氏による技術解説「PLATEAUが提供する3D都市モデルデータ全般及びUnityでの扱い方について」

ホロラボの於保俊氏より、技術解説として紹介されたテーマが「PLATEAUが提供する3D都市モデルデータ全般及びUnityでの扱い方について」です。

PLATEAUで公開されているデータは、ポータルサイトからダウンロードすることができます。ただし、そこそこ大きなファイルサイズになっているため、ディスクの空き容量に気を付ける必要があります。PLATEAUでよく躓いてしまうポイントが、データが地域メッシュという単位で区切られているところです。地図界隈では同じではあるものの、一般的にはあまり馴染みがありません。

そこでOBJファイルのダウンロードができるため、Unityなどで読み込ませることができます。しかし、そのままでは1万Unityと3万Unityといった場所に置かれてしまいます。軸も異なる場所にあるため、回転で対応する必要があります。

しかし、データとしてはこの状態が正しい物となっています。OBJ自体の座標がPLATEAUのオリジナルの座標から、平面直角座標に変換されて3Dデータになっています。この平面直角座標は、建築系などで使われている座標系です。そのため利用するときは、中心座標を決めてオフセットを引いて位置調整する必要があります。

中心座標自体は任意で決められますが、国土地理院測量計算サイトの仕組みを使うことで、緯度経度から平面直角座標への換算ができます。それ以外にも、Blender等の3DCGソフトで事前に処理をしておくというのもひとつの手です。

続いて、OBJファイルのデータを任意の座標に合わせる方法が紹介されました。オリジナルのデータは東京駅になっていましたが、その近くに東京国際フォーラムという建物があります。やり方は、地理院地図から投稿国際フォーラムの中心の緯度経度を取得し、平面直角座標(9系)に直します。そこからOBJをオフセット値を座標から引くことで、Unity上の座標に合わせることができます。さらに、読み込んだOBJの子要素に赤いキューブを作成し、Positionに計算した値を入れるとピッタリ合わせることができます。

GPSで集取した座標系は、基本的にWGS84になっています。こちらはJGD2011と実用上重ねても問題ないといわれているため、そのまま重ねて計算することが可能です。

実際に座標変換したものが、本当に正しいのか確認してみたくなることでしょう。そのときに一番手っ取り早い方法は、座標が分かり建物を変換してみて、正しい場所に置かれているか確認することだと於保氏はいいます。どのデータを対象にしているのか、あるいは目立つランドマークなどを意識して進めていくのがおすすめです。

PLATEAUのLOD2のデータには、テクスチャが貼られています。こちらはかなりの量があるのと、ゲームのグラフィックと比較すると無駄の多いデータになっています。そのため、画像サイズの縮小や再アトラス化が必要です。建物ごとにメッシュが作られている場合は、ある程度の範囲でメッシュ合成することで、ゲームエンジンで利用しやすくなります。

国際標準のフォーマットCtiyGML

CityGMLは、OGCが国際標準として策定したフォーマットです。PLATEAUの本丸ともいえるCityGMLですが、こちらはXMLで定義されています。たとえば3Dデータは、緯度、軽度、標高の3つの値が順番に格納されています。

その値を繋いでいき、ポリゴンになるといったイメージです。属性情報は、XMLの中に建物IDや住所系情報、浸水想定区域といった形で格納されています。セマンティクスは、LOD2以上の詳細なデータについては、テクスチャ画像が設定されています。それ以外にも、都市計画やとちるよう、道路などの情報も同様に格納されています。

構造解析して適切な3Dデータに変換するのは大変ではあるものの、このCityGMLを直接使う利点としては、任意の座標変換や任意のグルーピングで3Dモデルを最適化できたり、あるいは属性データやセマンティックの処理を行ったりといったことができるところです。

Unity等のゲームエンジンでCityGMLを使う場合、メッシュをC#から生成する仕組みがあるので、そちらを利用して読み込みつつジオメトリに変換するコードを自分で書く必要があります。

ゲームエンジンでは、クォリティの高いビジュアライズはできるものの地理情報のデータを扱うのはあまり得意ではありません。逆にGIS系のソフトでは、高度なビジュアライズはできないもののデータ処理や分析がしっかりとでき、属性データもしっかりと扱うことができます。

位置に基づいた情報の「地理情報」

地理情報とは、駅の場所など位置に紐付いた情報のことを指します。PLATEAUは、この地理情報に分類することができます。そのため、GISで扱えるほか、現実のあらゆる情報が地理情報になりうる可能性を秘めています。

地理情報を正しく扱うコツは、1にも2にも座標系を把握することです。それをしっかり扱えるようにすることで、PLATEAU自体も扱いやすくなります。

地理情報システム(GIS)は、地理情報を扱うためのソフトやシステムのことを指します。正しく座標系が扱えるほか、正しいジオメトリや属性情報も扱うことができます。GISには高価な商用のものから比較的自由に使えるオープンソースのものまで、いろいろな種類が用意されています。

GISとゲームエンジンは、それぞれが得意なところを組み合わせてうまく使うのがいいのではないかと於保は解説。データ処理はGISで行い、そこからゲームエンジンに登場したり、あるいはサーバーでGISや地理情報対応DBを使い、ゲームエンジンでクライアントとして扱い様々なサービスを提供するといったことができるのです。

アナザーブレイン久田智之氏による技術解説「Web GISについて」

続いてアナザーブレイの久田智之氏より、「Web GISについて」というテーマで技術解説が行われました。PLATEAUはプロジェクト全体のことを指していますが、こちらではその中から「PLATEAU VIEW」と呼ばれるビューアについて、ハンズオンを交えながら紹介が行われました。

GISは、地理的な位置情報を持ったデータをどうやって視覚化していくかといった分野の仕組みです。当初は2D系で始まりましたが、その後3Dにも対応されるようになってきました。そのGISの中で、ウェブに対応した「Web GIS」が登場し、こちらの2D系と3D系に分かれています。3D対応のものには、GIS Viewerと呼ばれるものがあり、こちらが「PLATEAU VIEW」のようなものに該当します。

また、GIS Platformと呼ばれるものがあり、さらにその中にウェブでGISの3Dのエンジンとなる「GIS Engine」と呼ばれるものが提供されています。

UnityやUnreal EngineといったゲームエンジンでPLATEAUデータを取り扱う場合と、Web 3D GISで取り扱うときの一番の大きな違いは地面の扱い方です。Web 3D GISの場合は、地球が丸い感じで取り扱われます。一方、ゲームエンジンでは平らな地面で取り扱われます。そのため、ゲームエンジンはどちらかというとエリアを切り分けて使用するのに向いているといえます。

Cesiumは、地球儀のような形でWeb 3D GISを取り扱うオープンソースのライブラリーです。Cesiumでは、3Dデータの変換の仕組みやストレージ、3Dビューワーなどをクラウドで提供しています。そのプログラムの一部がオープンソースとして、公開されています。こちらはJavaScriptで作られていることから、CesiumJSと呼んでいます。

PLATEAU VIEWは、CesiumJSが根っこで動いており、東京都デジタイルツイン3Dビューア(β)や産総研 3DDB Model Viewer、広島県 DoboXなどでも使われています。

CesiumGSをwrapした「Terriajs」と呼ばれるものがあります。こちらは、画面で動かせるビューワーです。CesiumJSをGIS Engineとして用いた3D GIS Viewerで、3Dモデルや様々な情報を3D地図上に重ねて表示する仕組みが用意されています。

ビューワーとして利用できるほか、オープンソースとしても公開されているため「PLATEAU VIEW」のようなものを作るなど独自の機能を追加したり拡張したりといったことも可能です。

ただし「Terriajs」はCesiumGSにwrapされているため、直感的にわかりにくいところもあります。そのため、最初はCesiumJSから入ることをおすすめします。

Web GISをお手軽に体験できる「Sandcastle(砂の城)」

Web GISのCesiumJSで用意されているものとして、「Sandcastle(砂の城)」と呼ばれるプログラムを試す環境があります。こちらを使うことで、プログラムを組んだことが無い人でも簡単にWeb GISに触れることができます。

Sandcastleにアクセスすると、地球儀のような画面が表示され、360度自由に動かせるようになっています。画面下にはギャラリーが並んでおり、サンプルプログラムが呼び出せるようになっています。主に画面の右側はプログラムの実行結果を表示するビューワーで、左側がJavaScriptのコードが表示されています。このコードの値を少しいじって、その上にあるタブから「Run」を選ぶと実行することができます。


▲「Sandcastle(砂の城)」にアクセスしたところ。

下のギャラリーから「3D Models」を選ぶと飛行機が表示されます。こちらはデフォとの設定では、上空5000メートルを飛行している状態です。それを地上すれすれの5メートルを飛んでるように変更したいときは、画面左側のソースから「5000」と書かれた数値を見つけ出し「5」に変更してRunを選ぶことで、簡単に変更することができます。

この飛行機のデータはアメリカの地図上に位置していますが、該当する数値を変更することで日本の明石に持って行くこともできます。また、地図の大きさにかかわらず飛行機は同じサイズで表示され続けますが、そのスケールを固定に変更することも可能です。

この「Sandcastle」に、PLATEAUの3Dデータモデルを表示することもできます。「Project PLATEAU」のGitHubにアクセスして、そこからサンプルプログラムをコピーします。その後、「Sandcastle」の画面に戻りNewを選択。スクリプトがクリアになった状態で、先ほどコピーしたソースを貼り付けてRunをするとPLATEAUの3Dデータモデルが簡単に表示することができます。

3部構成となっていた今回のイベントですが、最後に登壇者の3名からメッセージが語られました。

内山氏:
PLATEAUやWeb 3D GIS自体が、世界的にもこれからの領域です。みんな分かっていない中で、いろいろと試行錯誤しながらこんな物が生まれたといった面白さがある世界です。なので、ぜひプロタイピングにチャレンジしていただけると嬉しいです。

於保氏:
もっとCityGMLをガリガリ頑張れるよう、ハードコアな使い方ができる人が増えるといいなと思っています。みなさん、よろしくお願いします。

久田氏:
Unityばかりをされている方も、今回を機にちょっとだけWeb GISを触ってみたら、あ、違いはこんなものなのかとわかっていただけます。本当に何も触ったことがない方も、なんとなく座標を少し変えることで飛行機が動いたり港が表示できたりします。このあたりから馴染んでいただければ、とてもいいなと思います。

PLATEAU AWARD 2022」の応募締め切り前にも、様々なイベントが開催される予定となっているので、興味を持った方はぜひそちらにも参加してみてはいかがでしょうか。


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