例えば、こんなショッピングができたら便利ではないでしょうか? 店頭で気になる商品があったとき、そのアイテムをジッと眺めるだけで値段や在庫が確認。スマートフォンもクレジットカードも必要なく、見ているだけで支払いまで完了する――。先日公開された米電子決済大手PayPalの特許からは、このようなスマートな「未来のショッピング」の構想が見え隠れしています。
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PayPalの利益増大に直結
米国特許商標庁に承認された特許は「商品の情報公開に関するARビュー」というタイトルです。特許内容によれば、ARグラスをかけると“見て、買う”というショッピング体験が可能に。商品とポップアップで浮かぶARのメニューを見るだけで、PayPalアカウントでの決済までが完結してしまいます。PayPalは過去にも同様の特許を申請したことがあります。
仮にこれが実現すれば、PayPalには莫大な利益をもたらすでしょう。現在同社は、米国内での取引に対して2.9%+30セントの手数料を課しています。そして米国のWeb決済の6割以上がPayPalで行われているということです。2017年には、同社の利益は130億ドル(約1.4兆円)超となりました。
またPayPalの利用者数は全世界で2.3億人以上いると言われています。ARグラスを使ってショッピングが簡単に出来るというのは、買い物客だけでなく、売り手やPayPalにとっても“夢のようなこと”なのです。
PayPalの利用者の大半はWeb経由です。しかし実店舗での利用が拡大し、ARデバイスが注目されてきた現在、この2つを組み合わせることを考えるのは、自然な流れでしょう。
”見るだけで買える”という新しいショッピング
ショッピングへのAR/VR活用は、eBay、アリババ、IKEA、Amazonなど数多く見られます。AR/VRを使って商品を詳しく見たり、試しに部屋に置いたりすることができます。
しかしこのPayPalのアイディアは、“見るだけで買える”という今までと全く異なるアプローチです。しかも、買い物が嫌いな人にとっても、デジタルショッピングと実際に行って買う行動が一体となったこの新しい体験は、面白いものになるのではないかと期待されています。
例えばちょっと時間のある日に、映画のポスターを見てチケットの購入を決める。そして支払いまですぐに完了。或いは美術館で気に入った作品を見つけ、それがプリントされたTシャツをその場で購入……こういったことが即座に可能となります。
衝動買いの消費額は1人5,400ドル
そしてこのような衝動的な行動、「見て、買う」ことこそが、PayPalの利益急拡大に結び付くと考えられます。米国で2,000人の消費者を対象に行った調査では、一人当たり月に450ドル(約5万円)を、衝動的な消費に使う可能性を持っているとのこと。年間にすれば5,400ドル(約60万円)です。ARグラスとPayPalアカウントが連動したショッピングでは、このような消費行動がずっと簡単になります。
もちろん、まだセキュリティの懸念もある上に、特許の実用化については公表されていません。しかしARグラスを使った新しいショッピングとして、PayPalの特許内容は注目に値します。
(参考) VRScout
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