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開発 2026.06.04

NHK開発のVRヘッドセットやホログラムなど、映像現場のXR最新技術を体験【NHK技研公開&TECH EXPO 2026】

2026年5月28日(木)から31日(日)までの4日間、NHK技術イベント週間「NHK TECH WEEK」として、技術部門の公開イベント「技研公開2026」と「TECH EXPO 2026」が初めて放送技術研究所で同時開催されました。

本記事では、イベント開催に先駆けて行われた、プレス向け見学会の模様を紹介します。

NHKが作るVRヘッドセットに採用された「ライトフィールド式」とは……!?

今回の技研公開でMoguraVR編集部が最も注目していたのは、こちらのNHK技研が開発しているVRヘッドセットです。目指しているのは従来型よりも薄型で疲れにくいVRヘッドセットとのことで、実際に体験してみました。

具体的な重さは現時点で非公開のようで、かつ、頭に装着するベルト等の実装がなく、接眼部を自分の両手で持ちながら体験するという形式ではありましたが、実際に持ってみた印象としてはかなり軽く、いわゆる「軽量型」と言われる従来のVRヘッドセットの中でもかなり軽量な部類に入る印象でした。

体験は、本VRヘッドセットで採用されている「ライトフィールド方式」についての解説&実体験としてVR映像を視聴するという内容でした。

視聴していて一番印象的だったのは、上記のような要素画像群としてVR映像が表示されるところです。

一般的なVRヘッドセットは、2枚のディスプレイで左右差を作り出すことで立体感を作っていますが、本VRヘッドセットでは、その「立体感」を上記の画像のように、全く違う仕組みで実現させています。

そもそもなぜNHKがこのライトフィールド方式を現時点で採用しているのか? 、それにはまず従来のVRの二眼方式では眼が疲れやすく、その「VRの視覚疲労」という課題解決の意識があるといいます。

従来のVRの二眼方式で視覚疲労が起きる理由としては、「視差によって知覚される奥行き位置」と「目のピントを合わせている位置」が一致しないことが要因と考えられています。その解決のためにこのライトフィールド方式を採用し、VR内でも、実世界で物を見る時と同じように、「見たい位置に目のピントを合わせて、見ていないところはピンボケする」ということを自然な形で可能にし、それによって長時間視聴しても疲れにくいVRを実現させるという狙いがあるようです。

わかりやすいエンタメ性と直結するような技術ではありませんが、VRユーザーであればあるほど「長時間視聴しても疲れにくいVR」に対する魅力の大きさは理解できるのではないでしょうか。

ただ、体験してみた率直な感想としては、従来型のVRヘッドセットよりも、ピントを合わせるのがかなりシビアでした。少しでもベストな視聴位置からズレると、要素画像群がそのままの形で見えてしまうことになり、映像に縦線や横線が入ってかなり見づらく、画質の面でも、現段階では既存のVRヘッドセットに比べてプライオリティを感じられるものにはなっておらず、そこは現時点では純粋に研究段階、試作段階と言った印象でした。

また、今回のNHK TECH WEEKで公開されている技術を俯瞰しても、NHKも放送局として高画質・広画角撮影映像の撮影や活用に期待しているところが大きい様子で、その撮影素材のチェック用というところでも「長時間利用しても疲れにくいVRヘッドセット」の現実的な必要性も社内で並行して大きくなってきているのではないか? ということも併せて伺えました。

今後の実用化に向けたさらなる取組み・研究にも注目していきたいです。

どこでも生身のタレントとバーチャルタレントの共演番組が作れる!? 可搬型リアルタイムアバター合成システム


こちらの写真のようなフォーマットの番組が、省機材で手軽に実現できるシステムの展示がありました。

右のVRヘッドセットを装着した女性の動きが、真ん中画面の3DCGアバターの動きとして反映されています。

このシステムのポイントは、現実側のカメラは、真ん中の8Kカメラ一台で済んでいるという点です。


(写真右側の黒い機材が8Kカメラです)

こちらの固定8Kカメラによって高画質実写映像を撮影してアバターを合成し、様々なアングルに切り出すことによって映像のバリエーションを作り出すことができます。

(スイッチャー操作画面。右側の多様な画角の映像は、撮影した映像を切り出すことによってカメラ1台で実現させています)

カメラを複数台用いる場合や固定でないカメラを用いる場合は、特殊なセンサーを用いたり、同期について考えたりする必要が出てきますが、固定の8Kカメラ1台で済ませることでそれらについて考慮する必要がなくなります。「カメラのスペックが向上したからこそ環境をシンプルにできる」という形での技術革新を感じる撮影とスイッチャーのシステムでした。

VR機器なしでも立体視ができる未来! フルカラー透明ホログラム

フルカラー透明ホログラムには未来を感じられました。こちらの画像は真ん中の女の子がガラス基板を通じて表示された3次元像で、左上の鳥と木は実物のフィギュアです。このように、実物と3次元像を同時に観察することが可能です。

こちらは長期的なプロジェクトであり現時点では、

  • 真正面からでないとカラーに見えない
  • 静止画しか表示できない(3次元映像は表示できない)

という制約がありますが、実物とフルカラー3D映像が同時に肉眼で見られるようになれば、豊かな表現が可能になりそうな開発で見ていてわくわくしました。

写真ではわかりづらいですが、こちらのホログラムはガラスから飛び出てくるような立体的なフルカラー3次現像が表示されていました。

「触覚の変化」を体験できる未来のデバイス!


こちらは光の照射によって、触感が変わるデバイスの展示です。

人との触れあいや食べ物の触感の表現などを目指しており、テレビ番組、ゲーム、VRなど、多様なメディアやコンテンツとの相性が良さそうで気になりました。

実際に、光を照射した状態とそうでない状態の触感の差を体験してみましたが、今の段階ではまだかなりほんのりとした「そう言われてみれば何か違うかも……?」という感じでした。今後の研究の発展に期待です。

撮影・編集分野でのAI活用の進歩が目覚ましい/VRコンテンツと2D映像コンテンツの制作プロセスがよりシームレスに

今回のNHK TECH WEEKで特に印象的だったのは、AIを活用した、撮影時用・編集時用の多くの技術が実用段階に至っていることでした。

例えば音声ファイルの文字起こしAIを使用した検索システム。それからスポーツ中継映像をAIをもちいてシーンごとに「誰が・いつ・何をした」のタグ付けを行い、さらに多様な言語で話す選手インタビューも自動翻訳・文字起こしし、ハイライト動画をスムーズに制作できるシステムもありました。


上記の写真で見られる通り、制作現場の実務的な需要にかなり則していると思しき開発が実現しているところが印象的でした。

様々なAI活用ツールの展示がありましたが、ほとんどが人間のクリエイティブを高速化するための補助的なAIツールというところに重点が置かれているもので、NHKの「AI技術に対してどのように注目しているか・どのように活用したいか」の意欲や視点がとても具体的な形で伺えました。

一方、VRとリアルというところに置いては、前述の「可搬型リアルタイムアバター合成システム」を始めとして、高画質化した360度カメラや8K×8Kカメラ等の存在を前提とした「まず可能な限り広角かつ高画質で撮影しておいて、必要なところを必要な分切り出して活用する」というような思想に基づいて開発しているシステムが多く見受けられました。


15K360度カメラ実物


小型8K×8Kカメラ実物

これらは具体的に「これらのカメラを使ってどのようなコンテンツを制作するか」の検討や実用段階にまで至っており、制作側としては360度VRコンテンツから2D映像コンテンツまでがかなりシームレスに制作可能になってきていることが十二分に示唆されています。

昨年の展示と比較しても上記二分野は着実に進化していて、すでにNHK制作コンテンツの完成形として発信されているものもあり、目覚ましいものを感じました。

そのように最先端の技術を、現場で実用可能な物として仕上げて行っているところは見事でしたが、一方で今年は見たことのないような新技術であったり、いい意味で「なぜNHKがこんな開発を…!?」と言いたくなるようなプロジェクトの出展が若干昨年よりも後退気味であるような印象もありました。

新技術を手堅く制作現場で使用可能な形で落とし込んで行くことも、「あまりにもマニアック……!」という着眼点の新技術の開発も、あるいはメディア史を大きく塗り替えるような、10年後、50年後、100年後を見据えた未来の新技術開発も、どれもNHKやNHK技研には期待してしまいます。

今後の開発にも注目です。

開催期間: 5月28日(木)~31日(日)
午前10時00分~午後5時00分(入場は終了30分前まで)
会場: NHK放送技術研究所 (東京都世田谷区砧1丁目10-11)
入場: 無料 (事前予約不要)
https://www.nhk.or.jp/strl/news/2025/5.html


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