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業界動向 2023.03.28

マサチューセッツ工科大学、RFIDタグを検知可能なARヘッドセットを開発、段ボールの中身を開けずに分かる

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、ホログラムを使ってユーザーを隠れた物体に誘導する拡張現実(AR)ヘッドセット「X-AR」の開発に取り組んでいます。


(出所:VRScout)

X-ARの仕組み

X-ARは、ユーザーが探している特定の物体を手に取ったかどうかを、無線信号とコンピュータビジョン技術(*1)を組み合わせて検証します。ヘッドセットに無線周波数(RF)の感知機能を備えたARアンテナが搭載され、カメラと連動して、段ボール箱やプラスチックの箱のような特定の素材を隔てても、RFタグの付いた物体を識別できます。


(出所:Signal Kinetics)

システムはヘッドセットのセンサーが捉えたデータをもとに、ユーザーがいる環境を3Dで表現します。その後、アンテナはユーザーが視認できない対象物の位置を(1フィート未満の精度で)特定し、球体のようなホログラムを表示します。生成された足跡をたどると、対象物に誘導される仕組みです。

X-ARはユーザーが持つ対象物が何かを95%以上の精度で検証できます。ヘッドセットを装着するとRFIDタグが付けられたオブジェクトが表示され、ユーザーはその中から対象物を選択できます。物体の位置が特定されると、ヘッドセットはタグが正しいRF信号を送信しているかを確認し、その物体が選択されたものであるかを判断します。


(出所:Signal Kinetics)

将来の研究見通しは

同大学電気工学・コンピューターサイエンス学科の准教授で、X-ARヘッドセットに関する論文の主執筆者であるFadel Adib氏は、「このプロジェクトの目標は、箱の中や死角にあるような、見えないものを見る拡張現実システムを構築することでした。このようなシステムは存在せず、一から新しく構築しなければなりませんでした。私たちが作り上げたのはシステムの枠組み段階です。ですが将来的に、透視機能を持つARヘッドセットをどのように設計していくかという構想に技術的貢献を果たすでしょう」と述べています。

今後チームは、WiFi・ミリ波技術・テラヘルツ波への対応や、3メートル以上の範囲を検知する改良型アンテナ等の機能拡張を実験する予定です。さらに、複数のヘッドセットを連携させて使用することも予告しています。

研究チームの論文全文はこちらからご覧ください。

*1:コンピューターとシステムがデジタル画像や動画等から情報を識別・理解する人工知能技術。

(編注:原文の「X-ray」を「X線透視」と誤訳していました。X線透視ではなくRFIDタグ検知の応用研究だと分かるよう、見出し・本文ともに訂正します。2023/3/29 19:00)

(参考)VRScout

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