MetaはMeta Quest 3/3S向けの最新の開発者キット(SDK)から、UnityやUnreal Engineなどの主要ゲームエンジンを使った開発で、OpenXRを組み込んだパスを使うことを推奨する声明を発表しました。OpenXRを組み込むことにより、クロスプラットフォーム開発が容易になります。また、MetaのOSであるHorizon OS固有の機能も取り込みやすくなりました。海外メディアでは「これらの対応は開発者からの不満を解消するため」と指摘されています。
「OpenXR」は、2017年に発表されたXRハードウェアとソフトウェアの共通規格です。標準規格策定を行う非営利団体クロノス・グループが策定しています。この規格により、開発者は異なるXRデバイスに対応したアプリケーションを、大幅な修正なしで開発することが可能となります。
現在、Metaも含む150以上の主要企業や団体が参画しており、XR業界における重要な基盤技術となっています。Googleの新XRデバイス向けOS「Android XR」やByteDanceの「PICO 4 Ultra」などもOpenXRに準拠している一方で、AppleはVision Proにおいて独自規格を採用し続けています。
海外メディアUploadVRの報道では、今回のMetaの対応は「開発者からの不満の声に応えた」との見解が示されています。
これまで、MetaのUnityおよびUnrealエンジン向けOpenXRは、PCではMeta Quest LinkとRiftヘッドセットでのみ動作し、他のPCVRヘッドセットでは動作しませんでした。そのため、開発者は他のPCVRヘッドセットをサポートするために別のサブシステムを実装する必要がありました。これはOpenXRのコンセプトに逆行する状況でした。
元Microsoft社員でXboxプロジェクトに携わり個人開発者としても活動しているMatthieu Bucchianeri氏は「この問題はクロノス・グループを通じて2024年初めにMetaに報告され、Metaはその時点で意図的に他のプラットフォームでOpenXRコンテンツを実行できないようブロックしていることを認めた」とコメントしています。
同氏はクロノス・グループがMeta社に対して行動を起こさないことに不満を表明し、OpenXR仕様と公式文書から自分の名前を削除するように要請。この要請を受けて、クロノス・グループは「レガシーAPIとプラットフォーム固有の動作がXRアプリケーションの移植性を制限することで、開発者が直面している課題は認識している」と公式声明を発表する事態となっていました。
今回のOpenXRパス推奨の方針展開に際し、Metaはブログでコメントを発表。これまで受けてきた批判的な指摘に対して、自らのOpenXRの積極的な採用姿勢を強調しています。
2019年以来、OpenXRをクロスデバイスソリューションとして継続的に推進してきました。(中略)実際、Metaは33のKhronosおよびクロスベンダー拡張機能と61のベンダー固有の拡張機能に貢献しています。これらのベンダー固有の拡張機能のうち、多く(SpaceWarp、foveation、passthroughなど)は、もともとMetaデバイス用に開発されたアプリとの相互運用性を向上させるために、他のOpenXRベンダーによって採用されています。これらの貢献は、業界の発展と標準への貢献に対するMetaの献身を認める他のベンダーによって採用されています。
なお、Unityに関して同社は「Unity OpenXR Plugin 1.14がOculus XRプラグインと同等の機能とパフォーマンスを達成した」としています。Horizon OS固有の機能については、拡張機能とMeta XR Core SDKを通じて利用可能です。
Unreal Engineについては、状況がやや複雑です。Unreal Engine 5にはOpenXRが組み込まれていますが、Metaは現在、Questシリーズに焦点を当てた機能を独自統合しています。また、Metaは独自のGithubフォーク(別のユーザーが所有するリポジトリを自分のアカウントにコピーすること)を推奨しており、そのソースコードを開発者に公開しています。Metaは、Unreal Engine向けの推奨事項について、今後近いうちに「トレードオフテーブル」を含む詳細情報を提供するとしています。
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