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VRヘッドセット 2025.04.08

VRヘッドセット「MeganeX superlight 8K」レビュー 軽量かつ高画質なデバイスの真価は?

超軽量で高解像度の新たなVRヘッドセット「MeganeX superlight 8K」。VRヘッドセットやVRアクセサリー等の開発・販売を行う株式会社Shiftallと、パナソニックグループが共同で開発を行いました。価格は、249,900円(税込)。PC接続型のVRヘッドセットで、外部センサーを要するライトハウス方式でトラッキングを行います。「MeganeX」「MeganeX superlight」の後継機です。

「MeganeX superlight 8K」の大きな特徴は、その名称にもなっている両目で8Kという高解像度ディスプレイ。また、ヘッドセットをかけた状態から額の上方にずらして固定するフリップアップ構造を採用し、VR体験をしつつも物理的にPC作業に切り替えが可能です。VR作業をしたい方に優しい設計になっています。

今回は、「MeganeX superlight 8K」をVRChatなどのVRゲームで使用した性能レビューと、同じく軽量特化のVRヘッドセットである「BigScreen Beyond」との比較を行っていきます。

ハードウェアの性能

まずは本体性能から見ていきます。

見た目からもわかるその超軽量さは、本体部分のみで約179g。現在販売されているVRヘッドセットの中では「BigScreen Beyond」の127gに次ぐ軽さで、もうここまでくると頭の負荷への対策としては申し分のないものになっています。長時間のVR使用が多いVRChatユーザーには大変嬉しい仕様です。

次はディスプレイ周り。今回の「MeganeX superlight 8K」の名前にもなっているディスプレイの解像度は、片目4K(3552 × 3840px)、両目8Kという超高解像度です。スペックで言えば、発売されている既存のVRデバイスの中ではトップクラスの画素数です。例として「BigScreen Beyond」は片目2560 × 2560px、「Apple Vision Pro」は最大5K(5120 × 2880)となっています。

リフレッシュレートは90Hzで、前機種の「MeganeX superlight」の120Hzから下がっています。レンズには、Panadonic独自開発のパンケーキレンズを採用。非常にクリアな見え方になっています。

「MeganeX superlight 8K」の視野角については、未公表となっています。昨年10月に行われた体験会では、主観的な数値になりかねないとの理由で数値の記載はありませんでした。筆者が使ってみた体感としては、普段使用しているMeta Quest3の視野角(※水平110度/垂直96度)とあまり変わらないように感じます。

セットアップについて

デバイスの組み立て

「MeganeX superlight 8K」は、使用する際にパーツの組み立てが必要です。本体部分と額パッド、ヘッドストラップ、ライトシェードを組み合わせます。オンラインマニュアルに詳しい説明がありますが、額パッドの取り付けについては説明書をしっかりと読まないと、向きを間違える可能性があるので注意が必要です。

PC側のセッティング

PC側では、Steamなどの以下のソフトウェアをインストールします。「MeganeX superlight 8K Configurator」は、「MeganeX superlight 8K」の接続や本体の設定に必要なソフトウェアです。こちらはshiftallの公式ショップでダウンロードする必要があります。「カートに追加する」とあり、購入フォームに進みますが、無料のため決済はされません。

インストールが必要なソフトウェア

「MeganeX superlight 8K」は、VRヘッドセット単品の販売になっているためコントローラー等は付属しません。SteamVR対応のコントローラーと、トラッキング方式がアウトサイドインであるため外部センサーである「ベースステーション」が別途必須です。

ベースステーションは、1.0/2.0の両方に対応しています。過去にライトハウス方式のVRヘッドセットを使用していた方は、ベースステーションとコントローラーが揃っていることが多いので、比較的「MeganeX superlight 8K」を購入しやすいでしょう。

PCとデバイス本体を付属のUSBケーブルで繋げたら準備は完了です。デバイス本体を起動させ、先ほどインストールした「MeganeX superlight 8K Configurator」から、画面の指示に沿って設定を行うと使用できる状態になります。

綺麗に見えるようにするために必要な調整

8Kの解像度をフルに活かすためには、ピントやレンズ位置の調整が必要になります。
「MeganeX superlight 8K」は、本体の左右にあるダイヤルを使って、ピントを手動で調整することが可能です。片方ずつ調整することはやや手間なようですが、視力が左右で異なる方にとっては非常に嬉しい設計です。

綺麗な解像度を楽しむためにはレンズと目の距離調整も必要です。デバイス本体で画面が見えるようになったら、デバイス本体の上部にあるつまみを押して、頭部とデバイス本体の距離感を調節してください。

IPD調整(瞳孔間距離)も設定することができます。「MeganeX superlight 8K Configurator」から「MeganeX」>「IPD調整」を選択すると調整する項目が表示されます。この設定は保存しておくことができるため、複数人で使う際に切り替えができて便利です。

また、「MeganeX superlight 8K」は眼鏡をかけた状態での使用ができないため、度入りレンズを別途作成する必要があります。提携しているショップから注文しましょう。

また「MeganeX superlight 8K」にはスピーカーが内蔵されていないため、別で用意する必要があります。本体下にUSB typeCの口が用意されているので自身のイヤホン等を接続して使いましょう。

本体下には、手持ち棒アダプターもあるため、複数人で使用する際にデバイスを回して使いたい方や三脚を取り付ける際にも便利です。

なお、検証中に何度かUSB接続が未検出になる事象が起こることがありました。筆者はアプリやデバイス、PC自体を何度か再起動させたり、ケーブルの差し直しを行うことで解消することができました。検証した環境ではそこそこの頻度で発生していたため、注意が必要でしょう。(長期的に解決しない場合は、公式に問い合わせることをおすすめします)

デバイスの装着感

「MeganeX superlight 8K」の特徴の1つであるその”軽さ”。コンセプトである「顔圧ほぼゼロ」設計の通り、頭や顔に負荷がかからないVR体験ができることは確かです。「MeganeX superlight 8K」の使用用途の一つであるVRを使いながらのPC作業についても、フリップ機能のおかげでかなり使いやすく感じました。Unity等のPC作業をしながらVRChatをプレイしたい人へもおすすめできます。筆者もこのデバイスをつけた状態で執筆していましたが、重みで頭や首が疲れることはほとんどありませんでした。

また、筆者はVR使用中に横目にスマホを見ることがあるのですが、顔認証でロックが解除される設定を行っているため、ヘッドバンドで顔に押さえるタイプのVRヘッドセットだと一度外す必要がありました。しかし「MeganeX superlight 8K」であれば、フリップを上げるだけで顔を認証させることができます。小さいことですが筆者としては嬉しいポイントでした。

快適な使用感を手に入れるには、ヘッドストラップの締め具合の調整が必要です。緩すぎると本体が揺れ、疲れや酔いのもとになります。逆に締めすぎると頭痛を引き起こす原因に。着用した状態でもバンドを引っ張ることで締め具合を調節することができます。

デバイス本体の重さを受け止める額パッドのクッション性も申し分ありません。ソフトな作りになっているため、デバイス本体の重さを優しく受けとめてくれます。額は汗をかきやすい部位ですが、クッションが取り外しできるようになっていて、お手入れしやすくなっています。

気になったのは、本体とライトシェードの接地面から漏れる光でした。本体とライトシェードは、5か所の磁石によって取り付けが可能になっています。そのため、その5か所以外の隙間から外の光が入り、ヘッドセットを付けているときに見えている回りにぐるっと半周ぐらいの光の環がうっすらと見えます。8Kの映像にとってはそこそこのノイズになりそうです。


今回USBケーブルは、「MeganeX superlight 8K」に同梱されている3mのものを使用しました。作業などあまり激しくない用途であれば長さは十分です。筆者としては座高が高かったり、デバイス本体とPCまでの距離が少し離れたり、PCとの接続でケーブルを裏に回す必要などあったため、もう少しゆとりを持てる方が良いと感じました。5mのUSBケーブルがShiftallの公式サイトで販売されているため、必要な方は購入をおすすめします。

また、デバイス本体はヘッドストラップに固定されているため、顔面から吊り下げられ、浮いている状態になります。そのため、大きな動きをするとデバイス本体が揺れて、外の光が入ったり、デバイス本体自体がずれるといったことが起こります。先述の3mUSBケーブルの長さを加味しても、VRでアクションゲームやダンス等をするといった大きな動きを伴う使い方をしたい人には、基本的にあまり向いていないと考えられます。

それでも「MeganeX superlight 8K」で動き回りたいという方に朗報です。今夏に株式会社ShiftallからVRヘッドセットのように顔面に固定できるヘッドストラップが発売予定とのことです。吊り下げ式でない分、大きく動いてもずれない安定したVR体験ができる可能性がありそうです。

https://x.com/shiftall_jp/status/1903276696759046516

VRで見る8Kの真価

今回は、連続VR使用時間の長いユーザーが多いと思われるVRChatと、STEAMアワード2024でVRゲームオブザイヤー賞を受賞した高画質なアクションゲーム「Metro Awakening」で「MeganeX superlight 8K」を使ってみました。

VRChat

検証のため「kurayoshi_night」と「サイハテ珈琲店 -The Farthest Café-」の2つのワールドを訪れました。

「kurayoshi_night」で景色を見た時に非常に驚きました。何度も見ている景色のはずなのに、そこには普段とは違う、見違えるほど美麗な景色が広がっていました。

「kurayosshi_night」の入口から見られる景色は、いくつもの和風なランタンが輝いています。ランタンの中にあるライトのあかりがとてもはっきりしていると感じました。「Big Screen Beyond」だと、やや光がぼやけている印象がありましたが、「MeganeX superlight 8K」では、くっきりとした本物の明かりのように感じます。また有機ELのディスプレイであるため全体的な発色も良く、3Dグラフィックの域は出ませんが、景色がよりリアルに感じます。


「サイハテ珈琲店 -The Farthest Café-」は、夜の闇の中で、少しの月明りに包まれた草原と路面電車の中に作られたカフェがあるワールドです。有機ELの発色の良さを活かすために、暗い場所が良いと考え訪れました。

結果としては、「MeganeX superlight 8K」で非常に綺麗な”夜”を見ることができました。発色が良いため月明りや街灯の明かり、夜や影の暗さなどがはっきりと見ることができます。逆に「BigScreen Beyond」では、同じくOLDEのディスプレイを使用していますが、「MeganeX superlight 8K」と比較すると少々ぼやけて見える印象です。

また、暗いながらもその色にやや明るさを感じる部分がありました。街灯や遠くにある道路の明かりなどを見るとその感覚を感じ取れるかと思います。

VRゲーム「Metro Awakening」で体感

続いては、アクション系VRゲームでの検証ということで「Metro Awakening」で試しました。

「Metro Awakening」は昨年11月に公開されたMetroシリーズの最新作で、美麗な3DCGを見ることができる作品でもあります。

はじめに感じたのはゲームを起動してからのメニュー画面。画面横には木材が燃え、電球が点滅しているのですが、その揺らめきや明るさがとても明瞭に描画されています。

ゲーム中、暗いところを進むことが多いのですが、そこでも明かりの美麗なコントラストに驚かされます。


先述のVRChatでの使用も然り、仄かな光源がある場合、例えば月明りや小さな火など、そういったもので8KやOLDEディスプレイの価値が見えてくるのではないかと思いました。

「MeganeX superlight 8K」の8K解像度が見せる景色は、普段感じにくい光景やそのディティールを見ることができるようです。

「8Kディスプレイ」を選ぶことの意味

ここまで8Kで見えるVRの世界はどんなものであったか、どのような違いがあったかを書いてきました。今度は、高解像度のディスプレイに約25万円支払って体験する意味や必要性について、改めて考えてみましょう。

普段VRでコンテンツを楽しむ側としては、今回の8Kを体験する前までは、ここまでハイスペックなものが必要なのかと正直やや疑問に感じていました。しかし、自身で様々なケースの体験を通して、8Kで見る景色の美しさやその体験には、今まで感じることができなかった感動とまだ見ぬ領域があることを知り、その価値に非常に満足することができました。

それでも25万円の機材購入というのは、一般ユーザー層にはとても大きな買い物です。法人向けとして、製品のデザイン設計や特殊訓練といった使用用途もありますが、コンシューマー向けデバイスとしてこの8Kを活かせるユーザーを考えてみました。

それは、VR上でのコンテンツ制作を生業としている”個人クリエイター”としても活動しているVRコアユーザーです。例えば、VRChatでは「パーティクルライブ」と呼ばれるVR空間上に光や物体を投影する演出で盛り上げるライブ形態があります。VRChat上で開催された最近の企業主催のイベントにも、必ずと言っていいほどその演目が用意されています。

先述の通り「MeganeX superlight 8K」では、光の質感や明暗の表現がとてもリアルに映し出されます。そのため、パーティクルの光度や彩度といった細かい調整を行うことができ、ライブ演出の美しさを最大限に引き出すことができるのではないでしょうか。パーティクルライブを制作するクリエイターとしては、最高画質で作品を見ながら作れることは大きなメリットになると思われます。

解像度が上がることは当然VRへの没入感を高めることにもなり、ライブの臨場感の向上にも繋がりますし、これ自体はクリエイターだけでなく、ライブを見る側にも恩恵があるところと言えます。”リッチな表現を体感するための8Kデバイス”と考えれば、クリエイターやそれを楽しむ層の心に響くスペックになってくるでしょう。

「BigScreen Beyond」とどちらを選ぶべきか?

高解像度のディスプレイを持つ「MeganeX superlight 8K」。8Kの性能は伊達ではなく、色彩の豊かさや明暗の深さを感じることができるVRヘッドセットであることは間違いありません。同じく軽量なVRヘッドセットである「BigScreen Beyond」との差別化ポイントもこの点になります。

本体の重さは、「MeganeX superlight 8K」が約179g、「BigScreen Beyond」が約127gで、「BigScreen Beyond」に軍配が上がりますが、筆者としてはVR体験をする上で十分に軽量化を行えていると感じました。どちらも頭の疲れを気にせずに使えるVRヘッドセットです。

現時点では「MeganeX superlight 8k」が249,900円(税込)。「BigScreen Beyond」が164,800円(税込)と、その価格差は85,100円ですが、その差はディスプレイ解像度の差と言い切って良いでしょう。どこまで鮮明なVR映像を観たいのかによって、それぞれのデバイスの購入の検討をするのをおすすめします(記事末に比較表を記載)。

まとめ

約25万円という価格や、使用にはベースステーションやコントローラーが別途必要であるなどを踏まえれば、このデバイスは玄人向きの品です。

先ほども記述しましたが、購入するのはライトハウス方式のVRヘッドセットをある程度体験したことがある方になりそうです。使用するユーザーという意味でも、VR上でパーティクルライブのようなクリエイティブな活動を生業とするディープなユーザー向けになるでしょう。そのため、まだまだ普及していない機種であり、不具合などが起きた際に自身で調べる力が必要になります。今回使用した際にも、USBケーブルの未検出で使用できなかった時があり、解決させるため色々試行錯誤をすることがありました。VRについてある程度知識を持った方でないと、価格と見合った使い方ができない可能性も考えなくてはいけないです。

また「MeganeX superlight 8K」が持つもう一つの特徴である「フリップアップ機能」は、VRをしながらPC作業をしたい方にはとても有用な機能です。PC作業想定のVRヘッドセットであるため、基本構成では大きく動く用途には向いていません。デバイス本体をヘッドバンドから吊り下げられるような構造になっているため、激しい動きを取ると本体が揺れます。デバイス本体が揺れるとピントの調整にも影響が出るため、8Kの本領が発揮できない
可能性もあります。

大きく動きながら使いたい方は、USBケーブルを長くしたり、今夏に発売予定の顔に押さえつけるタイプのヘッドバンドの用意が必要になりそうです。

8Kディスプレイで得られる体験、軽量さとデバイスの構造からなる作業性能の高さは、現状他のデバイスに引けを取りません。上の世界のその景色を見たいという方には、ぜひ手に取ってほしいVRヘッドセットになるでしょう。

スペック比較表

MeganeX superlight 8k MeganeX superlight BigScreen Beyond
値段 249,900円(税込) 249,900円 164,800円
ディスプレイ 1.35inch マイクロOLED / 10 bit
片眼 3552 x 3840 (両眼 7104 x 3840 ピクセル)
1.3inch Micro OLED 5.2K(2,560×2,560 x2) マイクロOLED
片目2560x 2560×2
リフレッシュレート 90Hz 120Hz 75Hz / 90Hz
レンズ パンケーキレンズ パンケーキレンズ/樹脂素材 パンケーキレンズ
視野角 表示なし 表示なし 102度
瞳孔間距離 58-72 mm(電動) 56-72 mm 58~72mm
重さ 179g
※本体部のみ
約200g
※本体部のみ
127g
※本体
オーディオ入力 ビームフォーミング対応内蔵デュアルマイク ビームフォーミング対応内蔵デュアルマイクまたは3.5mm 4極ミニプラグ端子 (CTIA規格) なし

動作PC最低条件

プロセッサ Intel ® Core™ i3-8100T またはAMD Ryzen™ 3 2300X の同等品以上
GPU NVIDIA RTX Ampereアーキテクチャシリーズ
NVIDIA Turing GPU アーキテクチャ
NVIDIA Ada Generation GPUs
NVIDIA GeForce RTX 3070 同等品以上
※AMD Radeonシリーズ等、上記以外のGPUでは動作しません。
※MeganeX superlight 8Kと同時に接続できるモニター台数はGPUの性能に依存します。
メモリー 8 GB RAM以上
接続 DisplayPort 1.4
USB2.0
OS Windows® 10
対応VRプラットフォーム SteamVR™

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