Home » XRデバイス向けのディスプレイは今後どうなる?パネルメーカーの語る未来


業界動向 2024.10.16

XRデバイス向けのディスプレイは今後どうなる?パネルメーカーの語る未来

10月10日、Shiftallは、VR用軽量HMD「MeganeX superlight 8K」を発表した。

仕様について、詳しくは以下の記事をご参照いただきたい。

この製品はShiftallとPanasonicによる共同開発で、片目4K弱、RGB・10bitでHDRにも対応した「高画質デバイス」であるのが特徴だ。


(MeganeX superlight 8Kのプレゼン資料より。軽さと高解像度・高画質を高い水準で両立しているのが特徴)

レンズはPanasonic開発のパンケーキレンズ。そしてディスプレイデバイスであるマイクロOLEDについては、中国・BOE製の1.35インチマイクロOLEDパネルが使われている。


(MeganeX superlight 8KはBOE製のマイクロOLEDを採用)

現在のBOEにおけるXR向けパネル事業がどうなっているのか? MeganeX superlight 8Kの発表会で来日した、BOE Technology Group・ゼネラルマネージャーでAR/VR コーディネーション プラットフォーム プリンシパルのジェイソン・シャン氏に話を聞くことができた。


(BOE Technology Group・General ManagerでAR/VR coordination platform PrincipleのJason Shan氏)

BOEの強みはコストパフォーマンス

――BOEのXR向けパネルビジネスの現状はどうなっていますか?

Shan氏:はい、日本をはじめとしてアメリカ・中国のお客様に、マイクロOLED製品を供給しています。

業界全体を見渡しても、AR/VR向けについては、実際にはマイクロOLEDを使っている製品はそんなに多くありません。現状ではVision Pro以外に、中国とシンガポールの1社が使っている、というところです。(筆者注:ここでは小型なサングラス型ディスプレイ向けは含まれていない)

Vision Pro以外は、弊社・BOEのマイクロOLEDを採用しています。


(MeganeX superlight 8Kに使われているBOEのマイクロOLEDパネルの実物)

――現状のBOEの優位性はどこにありますか?

Shan氏:BOEの技術的優位性は、他社と比較してコストパフォーマンスが高いことです。そこには自信を持っています。BOE内部でも研究開発は進めており、戦略的にAR/VR向けマイクロOLED製品を広げていく戦略を持っています。

BOEとしては長期にわたってXR市場を育てていく中で、間違いなく、自信を持って進めていきます。この領域においてBOEがナンバーワンになれるよう努力します。

――生産ラインの準備はどうなっていますか?

Shan氏:生産工場のキャパシティについては、中国雲南省に弊社のマイクロOLEDの生産ラインを持っていて、追加投資も予定しています。

さらに北京に、液晶(LPTO)のラインも作っているところで、AR/VR向けに製品をそろえていく予定をしています。液晶とマイクロOLED、両方で、業界内でももっともリッチなラインナップとなっていると自負しています。

さらに高解像度化を推進、ここから5年は液晶+マイクロOLED

――技術的な開発の方向性をどうみていますか? どこを進化させるべきですか?

Shan氏:マイクロOLEDと液晶2つの方向性を目指します。

液晶は700PPIから2000PPIを目指して開発します。そしてマイクロOLEDについて、2つ社内では話をしています。

1つは解像度・サイズ。今は4000PPIくらいのものですが、さらに8K・16Kを目指します。ディスプレイサイズが小さくても高解像度、というものをトレンドにしようと考えています。

もう1つは輝度です。いまは1000から1200nitsですが、4000nitsもいけるのではないかと想定しています。さらに1万nitsも目指します。

――解像度の高いXR用ディスプレイ、特にマイクロOLEDについては、歩留まりの低さから高コストになっている、という指摘があります。この点はどう解決しますか?

Shan氏:おっしゃる通りで、高PPIの製品は歩留まりの影響を大きく受けています。

ただBOEとしては、内部のプロセスについても外部のベンダーとの関係について提携を検討し、ノウハウをつかんできました。

その結果として、マイクロOLEDの歩留まりについても業界をリードする立場にあると考えています。

今回のように、BOEのデバイスをShiftall・Panasonicに使っていただいていますし、他にも2社、BOEのものを採用する企業が出てきています。


(MeganeX superlight 8K本体。薄く軽くできた理由の1つは、薄型で消費電力の低いマイクロOLEDを採用できたことにある)

それらのパートナーとの間では、価格も納入のタイミングにしても課題はクリアーさせていただいたので、歩留まりはご安心いただける状況と考えています。

(筆者注:BOE製マイクロOLED採用を公言している製品としては、Shiftall/PanasonicのMeganeX superlight 8Kの他、Immersedの「Visor」がある。MeganeX superlight 8Kは2025年1月から2月にかけて最初の出荷を予定しており、Visorも、現在は一部顧客向けに2025年早期の出荷を予定している)

――将来の技術について伺います。マイクロOLEDではなく「マイクロLED」の可能性はいかがですか? すでに研究開発は進めていますか?

Shan氏:マイクロLEDは間違いなく次世代のディスプレイです。BOEもそう考えています。

しかしまずAR/VRでは、マイクロLEDよりもマイクロOLEDの方が今のところはマーケットの可能性が高いでしょう。マイクロLEDは3年から5年先に出てくるものと想定しています。その間OLEDを生かしてビジネス展開していこうと考えているところです。


VR/AR/VTuber専門メディア「Mogura」が今注目するキーワード