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開発 2018.12.12

LIXILが語る「VRを体験したことがない人に向けたVR」の作り方 – VIVE JAPAN デベロッパーミートアップ2018講演レポ

HTC NIPPON株式会社は、2018年12月3日に開発者向けカンファレンスイベントVIVE JAPAN デベロッパー ミートアップ 2018を開催しました。本記事では、株式会社LIXILのIT部門システムインフラ部コーポレートデバイスグループ主査 藤山雅剛氏が行った、「現場での平易な運用を目指す、ユーザインターフェースと運用とは」のレポートをお送りします。また、本講演の全編を収録した動画はこちらから。

目次

LIXIL Digital Studio GINZA
体験者が迷わないユーザーインターフェイスとは
運用を平易にする狙い
今後について

LIXIL Digital Studio GINZA

まず講演はLIXILが2018年10月にオープンした「LIXIL Digital Studio GINZA」の紹介からスタート。同施設はVR・AR技術などを活用して、理想の住まい探しをサポートする施設です。VRデバイス・HTC VIVEを用いた展示も行っており、VR空間上でLIXILの製品を体験することができます。


(「LIXIL Digital Studio GINZA」内観)

VRシステム

今回、VRシステム開発はLIXILが100%出資の株式会社K-engineが制作しています。Unityベースのレンダリングエンジンを採用し、リアルタイムレンダリングで部屋を見せているとのこと。

VRヘッドセットを用いた展示では、バーチャルショールーム内でLIXILの最新商品を空間展示。VR空間内でも現実空間と同じ身長で体験でき、実際の部屋の中に入り込んだような体験ができます。

例えば、キッチンの向こう側という写真などでは死角になってしまう場所も、VR空間では体験者が目視することが可能です。また2人で体験に来た際、1人が体験しているときに、待っている人はミラーリングで映るディスプレイを見ることで、一緒に確認することができます。配置している商材は3Dモデルなので、仕様(色や形)違いを多数展示することや、変更に素早く対応できるなどのメリットが大きいとのこと。

体験者が迷わないユーザーインターフェイスとは

今回発表されたコンテンツを作る際に想定した、体験者像と体験場所のイメージは以下の通り。エンタメ系のVRゲームやVRコンテンツはある程度ゲーム等に慣れている人が操作することを想定しているケースもありますが、今回はほぼ「デジタルにおける身体・キャラクター操作の未体験者」をターゲットにしているとのこと。

・20代~70代の男女(ファミリー層~シニア層)
・VR未体験者9割(TVゲームもあまりしない) → 完全な初心者向けを想定
・約1.5m四方の空間での体験場所

室内移動方法の絞り込み

バーチャルショールーム内の移動方法について、まずゲームコントローラーでの移動を考えたそうです。しかしこの手法は画面酔いしやすいことと、操作が難しいことから採用されませんでした。次に考えられたのが、部屋の中を実際に歩いてもらうという方法です。しかしこちらはシステム上展示スペースの広さを確保することが要求され断念。採用されたのはVIVEコントローラーでの移動です。

室内移動方法

最初に作った際は移動方法が1種類だけで、部屋の外に誤って出てしまった際に「180度反対側を向いて部屋の中に移動する」ことにハードルがあり、スムーズな運用ができませんでした。結果として、通常の移動と併用で特定の場所にワープする機能を実装。ワープ機能を併用したことにより、体験者の移動がスムーズになったそうです。大まかな移動をワープが担い、細かい移動を通常の移動で行うという二段構成することで快適な移動方法にすることで、VRを経験したことがない人でも快適にプレイできるようになったとのことでした。

運用の平易にする狙い

その後「体験者の9割である、VR経験のない人」に合わせたユーザーインタフェースを考えていったとのこと。「運用においてもLIXILの商品については説明できるが、PCの利用はメールくらいという説明員を想定しています」とのこと。運用・体験ともに低コンテキストで行えることを目指しているそうです。また、無人運用も考えたそうですが、ハイエンドデバイスでの無人化の実績を見つけられなかったので、今回は見送りとなったそう。

説明内容

まず、体験者にはVRヘッドセット装着前にコントローラーの使い方の説明と操作練習を行うそうです。VRヘッドセットに映っている画面をディスプレイにミラーリングし、それを見ながら一緒に操作します。コントローラーの説明などに関しては、「(VR)ゲームなどではチュートリアルとしてパッケージ化されて用意されているので、LIXILもそういったものを開発していきたい」とのこと。

また、VRヘッドセットをヘルメットのように装着する人もいるので、「両手でつかんで中を覗き込むように」と説明を加えて運用しているそうです。またVR上で高さが実際より低く感じることがあり、その場合は「高さは実際のショールームで現物をご確認ください」と案内するとのこと。コントローラーに関しても、VR空間上で手ではなくコントローラーが表示されるため、「手の代わりにコントローラーをお使いください」と声掛けを行うなど、初めてVRを体験する人でも「分かりやすく」体験できることを大事にしているそうです。

機器設置

スタッフによるPCとVIVEのセットは、電源のオン・オフのみを行います。機器の出し入れなどは行いません。PCやVR機器に詳しいスタッフを常に配置するのは難しいため、各配線の抜けや接触不良など、対応しづらい・特定しづらい想定外のトラブルが起こるのを防ぐためです。機器の接続部部には、配線ごとにテープを貼り、接続の漏れが無いように運用しているとのこと。

また、ヘッドストラップについて藤山氏は「ダイアル式の締め方が必須」と語ります。テープのタイプなどでは、異性の顧客の耳元を締める場合があるので、やや抵抗があるという声があったとのこと。衛生マスクに関しても「イヤリングをされているお客様などもいるので、VRヘッドセットに付けるタイプのものを採用している」そう。


(VIVE Pro等はダイアル式のストラップを採用している)

今後について

藤山氏は最後に「バーチャルなショールームならではの攻め方がある」と語りました。確かに、VR空間に表示している各商材を3Dモデルにしてしまえば入れ替えは容易になります。また、VR空間内の家で商材の配置の移動は楽に行えますし、高さが異なるものや、色違いを吟味するのに優れていると言えるでしょう。LIXIL以外でも、こうした試みは複数行われています。

藤山氏いわく、「LIXIL Digital Studio GINZAがオープンしてまだ1カ月なので、今は攻めの展示ではなく平均的なところを狙う展示」を行っているそう。「今後は攻めたショールームを作り上げていきたい」と藤山氏。ゆくゆくはHTC VIVEを用いた展示で無人運用を目指したい、と藤山氏は語り、本講演を締めくくりました。


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