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開発 2025.03.11

“電源不要”のARグラス 東大・阪大の共同チームが外部プロジェクターからARグラスに”投影”する技術を開発

東京大学と大阪大学の研究グループは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の支援を受け、「Beaming Display(BD)」方式と呼ばれる、次世代AR表示技術向けの薄型受光システムを開発しました。このシステムでは、ARグラス自体に表示素子やバッテリーを内蔵せず、環境側に設置したプロジェクターから映像を投影することで軽量化を実現します。

現在、普及が進むメガネ型ARデバイスには、表示素子や計算ユニット、バッテリーをすべて本体に内蔵しているものもあります。これにより重量が増し、装着感が悪くなるだけでなく、バッテリー容量や計算能力にも制約が生じます。一方、Beaming Display方式では、映像の生成と投影を環境側のプロジェクターが担当し、ユーザーが装着するARグラスは受光と表示のみを行います。

Beaming Display方式の大きな特徴は、ARグラス側に電源が不要である点です。環境側のプロジェクターからARグラスに映像を直接投影するため、グラス自体は薄く軽量に設計できます。これにより、長時間の装着でも快適性を保ち、バッテリー切れの心配もありません。

従来のBeaming Display方式には、受光できる頭部角度が約5度程度と限られており、ユーザーが頭の位置や向きを正確に合わせる必要があるという課題がありました。今回の研究では、回折光学系を用いたウェーブガイド設計を採用することで、この問題を解決しています。

開発された新しい受光系では、様々な角度から光を受光できる回折光学系ウェーブガイドを組み込むことにより、約20〜30度の広い角度許容性を実現しました。これにより、ユーザーは頭を自由に動かしながらも、安定した高品質なAR映像を体験できます。

特に注目すべき点は、ARグラス側に電源や計算ユニットが不要なため、従来のARデバイスよりも格段に軽量化できることです。これにより、長時間の使用が求められる産業用途において、作業者の負担を大幅に軽減できます。また、複数のユーザーが同じ環境下で同じコンテンツを視聴するようなシナリオでは、環境側のプロジェクターを共有することでコスト効率も向上も見込めるということです。

この研究成果は2025年3月8日から開催される国際学会「IEEE VR 2025」で発表されました。今後、研究チームは、さらなる装着性の向上や頭部位置追跡機能の統合を目指して研究を継続する予定です。

(参考)プレスリリース


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