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業界動向 2018.11.08

「無料でもまだ高い」Oculus創業者パルマー・ラッキーが語るVR普及の鍵

Oculus創業者のパルマー・ラッキー氏は、自身のブログの中でVR普及の阻害要因に関する考えを述べています。同氏は、すでにOculus社を退社。「VRの継続的な利用に価格はほぼ関係ない」「体験の質が全てだ」と持論を展開します。

無料でもまだ高い

ブログのタイトルは「Free isn’t Cheap Enough(無料でもまだ高い)」。ヘッドセットがいくら売れようとも、ユーザーがデバイスを利用し続けなければ意味がないと論じています。ラッキー氏によれば、「Engagement(継続的な利用)が全てだ」ということです。

ラッキー氏は、「たとえば全ての人に無料でOculus Riftと対応PCを配ったとします。しかし大半は数週間や数ヶ月で使うのを止めてしまうでしょう」と記します。そして「私はこのことを、現実に行った大規模なマーケティング調査から知っています、ただの想像ではありません」と強調した上で、コアなゲーマー層以外のVR利用は低下していると説明します。「大半の人には、無料でもまだ高いのです。価格は、積極的なVRを呼び起こすものではありません」というのが同氏の考えです。

価格は主要因ではない

同氏が言及する“stickiness(熱中度)”は、人々が製品をどの程度の時間使っているか、どの程度定期的に利用しているか、を示すものです。そしてユーザーの利用頻度は、製品価格が下がったからといって増えるものでもない、というのがラッキー氏の考えです。コスト削減は、長期的な視点で最優先の事項ではないということになります。

そしてユーザーのVR利用が続かない原因は「Quality of experience(体験の質)だ」と強く述べています。さらにラッキー氏は、「既存の、あるいは近日発売予定のVRデバイスはどれも、本当にメインストリームになるには充分なものでありません。例え0ドルで購入できたとしても」とまで言い切ります。

ラッキー氏は製品価格を下げることの意義はある程度認めますが、それでもユーザー層拡大への影響は「人々が期待するほどではない」としています。「価格は確かにVR利用者数に影響する要因の1つかもしれませんが、主要因ではありません」

ハードウェアとコンテンツの進歩が鍵

米メディアRoad to VRはラッキー氏にインタビューを行い、VR普及の阻害要因についてさらに詳しい話を聴いています。

「ハードウェアの多くが改善されて直近で発売されますが、いずれも大企業によるものとなりそうです。良いニュースだと思えるのは、これら大企業は大半がVRヘッドセットとコンテンツプラットフォームの両方を持っていることです。ユーザーを引きつけるハードウェアを作ろう、というインセンティブが働きます」とラッキー氏は説明しました。

「開発者サイドでは、現状のVRの限界にもかかわらずユーザーを魅了するコンテンツ作りを行える人が、長期的には最も得をするでしょう。時間がたち、ハードウェアの質が向上すれば、ユーザーを引きつけるのは簡単になります。100万人のユーザー中5%、という数字は少なく見えますが、市場が拡大すればネットワーク効果は大きくなります。私が『Rec Room』や『VRChat』(といったソーシャルVR)に期待する理由の1つです」

ラッキー氏は、ハードウェアとコンテンツの進歩が鍵である、と強調しています。体験の内容は同じで価格を下げるアプローチよりも重要だということです。

「幅広いユーザーの要求に応える高解像度、エルゴノミクスの改善。そして同じように多くのユーザーを引きつける質の高いコンテンツ。これらがキーファクターです」同氏はインタビューをこのように総括しています。

(参考)Road to VR
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