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企業動向 2025.03.13

メガネとして見ても違和感なし Dynabookのビジネス向け透過型XRグラス「dynaEdge XR1」を先行体験

2025年3月10日、Dynabook株式会社は透過型XRグラスの「dynaEdge XR1」の受注開始を発表しました。同時に開催された「Dynabookソリューション事業戦略発表会」において、実機およびdynaEdge XR1を用いたBtoB向けソリューションを体験してきました。

Dynabook代表取締役社長兼CEOの覚道清文氏は「コンピューティングとサービスを通じて世界を変える。ハードウェアとサービスを融合し、人に寄り添う社会を支える真のコンピューティングと、ユーザーを基点にした新しいサービスを追求していく」とあいさつしたうえで、dynaEdge XR1とAIを使ったオフィスでの新たなワークスタイル、現場でのAI拡張現実のソリューションについて解説。dynaEdge XR1はビジネスユースが前提となるグラス型ディスプレイであることをアピールしました。

実は2018年から単眼式のARグラスを提供してきたDynabook。WindowsベースのポケットサイズPCと組み合わせて、工場や倉庫でのピッキングアシスト業務などで活用されてきました。dynaEdge XR1は念願の両目で見ることができるXRグラスゆえ、より幅広い現場やビジネスシーンにフィットするデバイスだと捉えているのでしょう。

印象的な光学モジュールを採用したdynaEdge XR1

dynaEdge XR1の細部にフォーカスを当てていきましょう。普遍的なグラスデザインのフレームに、カメラと光学モジュール、スピーカーなどが組み込まれています。本体部の質量は約89g。軽量です。

フレーム中央にオートフォーカス対応のRGBカメラ(13メガピクセル)と、左右にモノクロステレオカメラを備えます。内部のセンサーは加速度センサー、ジャイロセンサー、コンパス。基本3DoFとのことですが、モノクロステレオカメラを活用することで6DoFでの利用が可能になるとのこと。

印象的に見えるスリット状のミラーバーですが、これはLetinARのPinTILT方式薄型ミラーバー光学モジュールならではのビジュアル。片目1920×1080ピクセルの映像を1つのミラーで反射させるのではなく、分割して網膜まで届けます。

輝度は最大約1,000nits。白い壁を向いた状態でも見られる映像はシャープです。

明るすぎる場所で使うことを想定して、一般的なサングラスほどの透過力となるシェードも付属します。ご覧のようにシェード装着時はカメラレンズ部がカバーされるため、注意は必要です。

視野角は45度。広いとはいえませんが、作業用として使うのであれば十分な視野角であると感じます。またバードバス式XRグラスと異なり、下方面からの映り込みはありません。

テンプルは装着者の頭部形状や好みに応じて、角度がつけられるようになっています。スピーカーはステレオ対応。マイクもビームフォーミング対応です。

またモダン(テンプルの先端部)の内側には柔らかいパッドが貼り付けてあり、耳に優しくフィット。長時間かけつづけていても痛みを感じないかもしれない、と期待できます。

内蔵バッテリーはなく、接続した専用コントローラやPCから電力を供給します。専用端子ではなく、汎用性の高いUSB Type-Cを採用。ユーザビリティを重視している姿勢が伺えます。

テンプルの下部に見えるのは操作ボタン。マルチファンクションボタンG、Lボタン、Rボタン、OK/ESCボタンが備わります。

視度補正のためのインサートレンズ用フレームも付属します。フロント(前枠)の内側にスリットがあり、はめ込むようにして装着します。

複数人で1台のdynaEdge XR1を共有して使う場合も運用しやすいよう、脱着がしやすい設計となっています。

グローブをつけた状態でも操作しやすい専用XRコントローラ 「dynaEdge C1」

もっとも最小のシステムとなるでしょうか。専用コントローラーおよびバッテリー、そして制御デバイスとなる「dynaEdge C1」も提供されます。写真や動画を撮る、視界の一部を拡大表示するといったカメラの操作や、AIアシスタントなどの機能をもたらします。

AIアシスタントはクラウドサービスを介するために通信環境が必要となりますが、カメラで捉えた風景の解説や書類の内容の要約・翻訳、会話の通訳字幕表示、会話ログの表示、会話のヒントの表示といった機能が使えます。

質量は約222g。dynaEdge XR1とはUSBケーブルで接続します。単体の組み合わせでは約2~3時間ほど使えるとのことでしたが、ステレオカメラなどの機能を使う場合は消費電力が高まるとのこと。そのためでしょうか。通信用USBポートだけではなく、電源用のUSBポートも備わっています。モバイルバッテリーと合わせて使うことで、より長時間の運用が可能になります。

搭載されているSoCはオクタコアARMプロセッサとだけ発表されました。dynaEdge C1を介してスマートフォンとのペアリングが可能になりますが、解説員の方のお話ではdynaEdge C1にもアプリを組み込むことが可能とのこと。

個人的に好印象だと感じたのは操作性です。ポインティングデバイスであり、メニュー操作が行えるボタンも備わりますが、総じて扱いやすい。スマートフォンをポインティングデバイスとして使うXRグラスもありますが、ビジネスユースにおいてはタッチ操作のほうがわかりやすいですし、作業用手袋をつけた状態でも押しやすいボタンサイズでした。

PCと接続すると3画面の仮想ディスプレイとなる

dynaEdge C1ではなく、PCと直結して使うことも可能です。「dynaEdge XRワークスペース」というWindows用の専用アプリが必要となりますが、3画面分の仮想ディスプレイとして使えるほか、21:9、32:9といったワイド画面の表示にも対応します。

接続しているPCの画面を消せば、公共の場所でも今見ている画面を覗かれることなく作業ができます。

価格はオープンプライス。ソリューションとのセット運用が前提

気になる価格ですが、dynaEdge XR1、dynaEdge C1ともにオープンプライスであり、想定価格などは公開されませんでした。CEO覚道清文氏の挨拶にも「ハードウェアとサービスを融合」といった内容がありましたが、Dynabookが提供するソリューションのクオリティを高めるためのデバイスとして、提供されるのでしょう。

とはいえ、Windows PCの仮想マルチディスプレイ用途も提案していたことから、個人向け、ハードウェア単体としての販売も考慮しているかもしれません。

個人的には、Intel CPUを搭載したWindowsベースのポケットサイズPC「dynaEdge DE200」との運用に魅力を感じました。Core i3 1110G4(Tiger Lake) 搭載バージョンであれば1万9800円という価格で購入可能なPCで、dynaEdge XR1のスターターキット的に使いやすい組み合わせになるのでは、と感じています。


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