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VRヘッドセット 2024.12.25

新トラッキングデバイス「ContactTrack Series」とは? その強みは、位置情報を見失っても自然に機能するシステム【Diver-X新製品発表会レポート】

2024年12月21日、秋葉原UDXで開催されたVRC大交流会の併催イベントとして、Diver-X株式会社による新製品発表会が行われました。

Diver-Xといえば、グローブ型のVRコントローラーをはじめとするユニークなXR系デバイスを開発してきた企業。直近ではハンドトラッキング・触覚フィードバック・コントローラーの3つの機能を兼ね備えた「ContactGlove2」の発表も記憶に新しいところです。

そんなDiver-Xがこの日新たに発表したのが、アウトサイドイン式のモーショントラッキングデバイス「ContactTrack」。前日夜に投稿された告知ポストが1,800回以上もリポストされるなど、VRChatユーザーを中心に注目を集めていたトラッキングシステムです。本記事では、その発表会の模様をリポートします。

ついにお披露目!「ContactTrack Series」とは?

発表会の製品紹介ムービーでは、「ContactTrack Series」の文字が表示され、白いトラッカーを手首や足首に装着した女性が小型カメラの前でVRを楽しんでいる様子が映し出されます。


それ以外にも、メガネやリングの形状をしたトラッカーが登場。ヘッドマウントディスプレイなしでもアバターを動かせるだけでなく、布を体の前に広げて隠した状態でも動きをトラッキングできることをアピール。

さらには、ノートにクリップ型のトラッカーを挟んで動かしたり、リング型のトラッカーが付いたペンを持ってVR空間で絵を描いたりする様子も紹介されていました。

位置情報を見失ってもそのまま自然なトラッキングができる!光学・IMUのハイブリッド型トラッキングシステム

上映終了後、口火を切った同社代表取締役の迫田大翔氏によれば、ContactTrackは「光学とIMUのハイブリッド型位置トラッキングシステム」であるとのこと。

カメラを使った光学式のトラッキングだけではなく、IMU(慣性計測装置)との複合型のシステムを実装しており、2つのモードをシームレスに切り替えることが可能。それにより、高精度なトラッキングを実現しています。

さらに、布を広げてトラッカーを遮った状態でも踊れていた先ほどの映像のように、カメラがトラッカーの位置を見失ってしまった場合でも、IMUによって継続してトラッキングを行えるのも特徴。光学式トラッキングの欠点をカバーしていることがContactTrackの強みであると説明しました。

カメラにはドングルが内蔵されており、USB2.0ケーブル1本で給電しつつ使えるのもポイント。トラッキングシステムを構築するために、電源やケーブルをいくつも用意して接続する必要はありません。

カメラは最大4台まで増設でき、1台につき2つのトラッカーを接続可能。つまり、カメラ4台と8つのトラッカーを用意すれば、任意のVRヘッドマウントディスプレイと両手のコントローラー、そしてContactTrackによって、11点トラッキングが実現できます。


そんなContactTrackのコンセプトは、とにかくカジュアルであること。

ContactTrackのシステムでは、体にトラッカーを装着して専用のソフトを起動すれば、自動で空間情報をキャリブレーションしてくれます。それもトラッカー同士だけでなく、Meta QuestをはじめとするVRヘッドマウントディスプレイとの位置関係も自動で認識。精度の高いフルボディトラッキング環境を手軽に導入することができます。

ContactTrackのトラッカーにはIMUセンサーとコードセンサーが組み込まれているため、トラッカー間の距離と地面からの距離も認識可能。カメラがトラッカーの位置情報をロストしてしまったとしても、トラッカー同士の距離の情報を参照することで、短時間であれば体の姿勢を自然な状態で維持できます。

目指すは、ContactTrackを使ったエコシステムの構築と育成

ContactTrackのもうひとつのコンセプトとして語られたのが、フルボディトラッキング用途にとどまらない拡張性です。

ContactTrack Seriesという言葉でも示唆されているように、Diver-XとしてはContactTrackのシステムを用いたデバイスを「シリーズ」として打ち出し、エコシステムを育てていくことを最も重要視しているとの話。ムービーに登場していたメガネやリング型のデバイスをリファレンスモデルとして販売するだけでなく、開発キットをオープンソースで提供することで、多様なデバイスが登場することを期待しているそうです。


たとえば、ムービーに登場したクリップ型のデバイス。これは、クリップの外径に沿うようにして赤外線LEDが内部に配置されていて、物でも体でも、挟むだけで対象物の動きを3次元上でトラッキングできるトラッカーです。

このような製品をリファレンスモデルとして提供する一方で、Diver-Xとしては、カメラやソフトウェアの開発・供給にも注力。個人ユーザーやパートナー企業がトラッカーの設計をする後押しをして、XR周辺機器の市場を育てていきたいと考えているそうです。

プレゼンの最後には、ContactTrackの価格とラインナップを発表。

カメラ、トラッカー、スペースキャリブレーションユニット、USBケーブルをまとめたスターターセットを、セール価格54,980円で販売。あわせて、トラッカーを体に装着するためのストラップとカメラの固定台が付いたセットもセール価格59,800円で販売します。詳しくは公式ストアをご覧ください。

また、発表会の翌日には、「ContactTrack Camera」「ContactTrack Tracker」の単品での取扱も決定。カメラは18,500円から、トラッカーは14,700円からの販売となっています。

ContactTrackは1月に行われているCES2025で展示を行うほか、秋HUBメタ飲み会(メタのみ)と、Diver-X社で毎月開催されているオープンオフィスでも体験が可能です。

質疑応答(一部抜粋)

Q. カメラとトラッカー単体の価格について、現時点で公表できる情報はあるか。

A. 現時点ではトラッカーの単体販売は予定していない。Diver-Xとしても初めて販売する光学式トラッキングデバイスであり、カメラとトラッカー、それぞれの販売台数をアンバランスにすることを避けるため、初期はキットのみの販売とする。価格は10,000円台を予定(※上述のとおり、発表会翌日に単品販売が決定しました)。

Q. コンシューマー向けの製品として販売するのか、それとも、企業向けにビジネス用途での活用をメインに考えて販売するのか。

A. まずはtoC向けのVR/XRデバイスとしての販売を想定している。ただ、フルトラッキング用途だけに使うのはもったいないと考えており、Diver-Xのシステムを使ったヘッドマウントディスプレイやARグラスが登場する未来のために、このエコシステムを積極的に普及させていきたい。

Q. 2台のカメラを使う場合、処理負荷はどの程度になるのか。また、カメラやトラッカーを増やせば負荷も増えると思われるが、どのくらいのスペックならスムーズにContactTrackを使えるのか。

A. 現状、カメラ4台に対して最大8台のトラッカーを想定した場合、一般的なVR用のゲーミング環境であるRyzen 9の5000番台とRTXの2000番台で、CPU使用率15%程度で十分に処理ができている。とはいえ、このアルゴリズムの高速化は我々の課題感としても大きく、今後も改善を進めていきたい。

Q. ほかのデバイスを近くで使った場合、どのくらい干渉する可能性があるのか。

A. ノイズになり得る環境光などをマスク処理することで、干渉を未然に防ぐようにしている。一般的な住居や施設であればノイズも少ないため、ほかの機器との干渉も少ない。

Q. トラッカーを使用する際に、身長や体型の制限はあるのか。

A. 制約はない。人間の関節の長さや身長をもとに姿勢を制御するのではなく、トラッカー同士の距離の実測値を光学式カメラでトラッキングして姿勢を復元している。

Q. ハンドトラッキングには対応しているのか。

A. ContactTrackシステムではハンドトラッキングのサポートをしていない。映像に登場していたようなグローブ型のハンドトラッキングデバイスにトラッカーを取り付けることで、グローブで指先のハンドトラッキングを、トラッカーで絶対位置のトラッキングを実現している。

Q. カメラはどのように固定しているのか。

A. 下部の金色の部品で固定している。 これは一般的なカメラに使われている1/4インチのネジの規格に対応しており、既存の雲台やクランプなどの周辺機器をそのまま使える。

VRユーザーからも熱視線を集めていたトラッキングシステム

報道関係者だけでなく、VRC大交流会に参加していたVRユーザーも大勢集まった今回のイベント。会場内に用意された席が埋まるほどの盛況ぶりだったのに加えて、質疑応答ではユーザーからの質問も積極的に飛び交う、期待と熱気に満ちた発表会となりました。

時間帯としてはVRC大交流会の夜の部がまもなく始まろうというタイミングでしたが、会場内で行われたデモンストレーションにも、報道陣を含むたくさんのユーザーが集結。スタッフが手にしたContactTrackの動きに合わせて画面上で正確にトラッキングが行われている様子を、興味津々な様子で眺めていました。



(ContactTrackトラッカーの実物。重量は50gとのこと)

ContactTrackを含むDiver-Xのデバイスは、各地でたびたび体験会が開催されています。体験会の情報は同社の公式Xで発信しているので、気になる方はフォローをお忘れなく。ContactTrack Seriesは、Diver-X公式ストアで予約販売中です。


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